著者 : 生田直親
江戸の街で寺社奉行の配下が次々と奇態な辻斬りに襲われた。町奉行から探索の命を受けた与力・大平孫三郎と同心・田上玄之介は下手人を追って関八州へ向かい、玄之介の手先・刃研の七こと通称・犬七と合流した。この犬七は女犯に脅しときわめつけの無頼者だが裏世界での嗅覚は鋭く情容赦ない。そして犬七が掴んだ意外な真相と下手人たちの凄絶な反撃の刃…。
同心・田上玄之介は、廓の放火の犯人捜しの最中、遊女殺しの罪を着せられた。事件に裏を感じた玄之介の手先・刃研の七こと通称・犬七。彼は女犯に脅しときわめつけの無頼者だが、世上に疎い玄之介の手先を買ってでては、身内の悪にも牙が剥けられる一匹同心への自覚を促す。そんな犬七が嗅ぎつけた材木商・菱喜と先任同心・加茂精三郎への疑惑。
いわれなき人殺しの罪を背負わされた京極斑鳩之介は、岐蘇福島の道場の師範代にと請われ、妻の志津を連れて江戸を背にした。しかし鬼同心鬼頭一角らの執拗な追跡は続き、志津は捕えられ、女郎屋へ売りとばされたあげく、自ら命を絶ってしまう…。鬼頭一味の斬殺を心に誓う斑鳩之介の活人剣が怒りの閃光を放つ。書下ろし長篇時代小説。
宇部慎吾42歳。帯広の陸上自衛隊第5師団対戦車ヘリコプタ隊の二佐である。勤続20年のベテラン・パイロットの宇部にその日、「日々新報」という全国紙の女記者・安達聡美が取材にきた。濡れた眸をもつ美しい女の誘いに宇部の心は熱く震えた。翌日、札幌丘珠の北部方面航空隊長から呼び出しがかかり、彼の中隊と鹿追の戦車大隊第1中隊に香港視察の命が下った。しかしヘリコプタ隊75名、戦車隊100名を乗せたLST『おじか』が釧路港を出港すると2隻の護衛艦の他に『はるな』『あきづき』等5艦も加わった。この物々しさは何故か。書下し長篇戦争シミュレーション。
長野県松代観測所が、南米チリ沖の微動地震をキャッチした。津波研究の第一人者である気象庁地震課の紺野久光は、過去の大惨事、三陸津波を彷彿して戦慄を覚えた。紺野は、美しく聡明なTVキャスター瀬田美里の助力を得て、深夜番組で警告のテロップを流したが、その頃、ハワイ、グァム、東京ディズニーランド、芝浦、横浜などで何も知らずに過ごす人々の許に、危機は着々と迫っていた。書下しパニック小説。
鬼同心・鬼頭一角が率いる捕方組に目潰しを喰らい視力を失った剣豪・京極斑鳩之介は、一枚絵にもなる女の許に匿われる。そこで起臥する人々の情と欲望に触れながら、捕方の動静を窺う斑鳩之介は、追手が次第に迫りくる気配を感じ取る。密かに居を変える斑鳩之介だが、執拗に首を狙う鬼頭は斑鳩之介昵懇の女を拉致し、陰惨な罠を張りめぐらせる。
雪を求めてゲレンデからゲレンデへと1年中放浪の旅を続けるタヌ公こと田沼義晴と白人のジムは、伊能御子と由香利という女子大生と知り合う。由香利はジムに熱を上げ、放浪の旅に同行、御子は由香利の親から頼まれて彼女を東京へ連れ戻すが、自分が2人と旅に出てしまう。自由を求めて生きる青春群像。
秋田県・男鹿で、大晦日に初嫁が殺された。動機不明の殺人に、調査依頼を受けた郷土史家・実相寺禅堂とアシスタントの佐緒里を待っていたのは、ナマハゲによる威嚇と警告だった。ところが、殺された初嫁は中国人で、しかも、太平洋戦争中の日本で起きた中国人暴動事件の生き残りの娘だったとわかり…。戦時下の日本の暗部をえぐる書下ろし長篇ミステリー。
新都庁舎の超高層階で火災が発生し、200名をこえる職員が炎に包まれた。風雨荒れ狂うなか、地上100mの空中をロープ1本で脱出する人々。そして、240mの屋上に残された避難者を救出する、消防隊員の決死の行動。不安と焦り、勇気と愛。手に汗握るパニック・ノベル。
冬は閉ざされている立山-扇沢ルートが開通した日、登山姿の男女が室堂に降り立った。男は山村秋行、精神科医であり、女は患者の沢村淑美だった。未だ白銀の剣岳を目指す2人は、別山平で1泊、源治郎I峰下部岩壁でザイルを結び合った。まっ黒な岩壁が眼前に立ちはだかり、ハングと垂直の連続する壮絶な佗立は圧倒的である。数カ月前まで、淑美は夫殺しの容疑者だった。保険金目当ての殺人放火という嫌疑は精神鑑定の結果、過度の飲酒による病的酩酊とされ、無罪を勝ちえたのだが…真相はザイルに賭けられた。
ルポライターの実相寺貴之は、国労本部組織部長・木田島の書いた、元総理・角田力衛の上越新幹線私物化を告発する文章のリライトを手がけた。記事が週刊誌に発表されて1カ月後、木田島の娘・はるみが新潟で乗用車ごと転落死する。当の木田島は、娘は殺されたとの言葉を残し失踪。実相寺は、木田島の部下でありはるみの婚約者でもあった岩木とともに、木田島捜索と事件の真相究明に乗り出す。長篇サスペンス。
新陰流の達人京極斑鳩之介は、いわれなき辻斬りの罪をきせられ、遠島となった。辛くも江戸に舞い戻った斑鳩之介は、何者かに娘を狙われているという商家紅屋の用心棒となる一方で、真の辻斬りを追う。杳として手懸かりが掴めないまま、ある晩、斑鳩之介の不在を衝いて紅屋に火が放たれ、娘の秋が連れ去られた。卑劣な奸計の裏を手繰り、自分を陥れた狡猾な同心鬼頭一角に行き当たった斑鳩之介は、怒りの秘剣を揮う。
12月21日、大手スキーメーカー、エトワール社の社長・大河原剛司が、雪の志賀高原でガラン沢に跳び込み、そのまま行方不明になった。スキー歴50年のベテランとは信じ難い事故だった。翌年2月16日、剛司の妻・萌子が、谷川岳でスキーのエッジで頚動脈を切り、出血多量で死亡。3月末、今度は剛司の養子・恒介までもが…。事故か、殺人か。社長一族を襲った不幸の陰に潜むものは?長篇スキー推理。
東京で女子大生が誘拐された。父親のもとへ届いた犯人から手紙には、芭蕉の俳句が書かれているだけだった。仙台在住の郷土史家・実相寺禅堂と助手の貝原佐緒里が、謎の解明にのり出す。「奥の細道」ゆかりの地を訪ね歩いているうちに、事件の意外な真相が明らかになって…。須賀川-登米-鳴子…「奥の細道」ゆかりの地を舞台に展開する、長編トラベル・ミステリー。
春スキーで賑う月山で、凍死した中年男の死体が発見された。だが、地元の警官隊が現場に到着したときには、あったはずの死体は忽然と消えていた。状況から判断して、消えた死体の身元は、鶴岡市役所農務課長の紺野秀一と推定されたものの、死体の行方は杳として知れなかった。紺野の妻・由岐は、死体発見者の一人である貝原佐緒里を介して盲目の郷土史家・実相寺禅堂に助力を求めた。だが禅堂と佐緒里が調査をはじめたとたん、ふたりは異形の山伏の集団に襲いかかられた…。出羽三山に根強く残る民間信仰に題を取った、書下ろし長篇ミステリー。
御岳で消息を絶った友人を捜しに、わたしは木曾谷にやってきた。その夜、知り合った中国娘美蘭に同行を迫られ、一緒に登山することになる。ところが先々で殺人が起こり…。下山登中、御岳教の老行者が、神託として「あなたのさがしものは、つれの娘が知っている」と告げる。だが美蘭は姿を消した。美蘭の行方を追ううちに、御岳に隠された忌しい過去が明らかになる。綿密な取材で描く長篇推理。
茨城県東海村にある東海第2原発に異常震動が発生!日本原子力研究所の湯原博士は原子炉を停止させるが、東菱研究所の井沢は、形ばかりの点検を済ませると、独断で運転再開に踏みきった。だが、再び異常震動が起こり、原子炉は破滅への暴走を始めた!膨大な資料を駆使し、原発倒壊の悲劇を赤裸々に描いて世界に問う、著者渾身の書下ろし長編小説衝撃作!
「ただちに停船しないと爆破する!」1300人を乗せ、津軽海峡中央部に達した青函連絡船〈津軽丸〉に脅迫電話が入った。時あたかも、予想を遥かに上回るスピードで北上中の台風の影響で海峡は風速30メートル、波高6、うねり6という大時化に見舞われつつあった。停船は即、転覆を意味するー。船長は犯人の要求を無視したが、やがて後部甲板で爆発が起こった…。荒れ狂う海峡に青函連絡船へのレクイエムとして贈る著者渾身の力作サスペンス。