著者 : 田口俊樹
スカダー・シリーズ終幕 父と母、幼い弟の死。警官時代の相棒との逸話。 はじめて犯罪者を射殺した日。復讐者との因縁。 そして少女を死なせてしまったあの日ーー。 記憶を探りながら諦念を交え静かに語る 最後のマット・スカダー。 死は、生きている者たちにどんな影響を及ぼすのか。弟の死は、スカダーの父と母を変えてしまったという。エストレリータの死はスカダーを破壊した。スカダー・シリーズの中核には「死」がつねにあった。スカダー・シリーズの題名のほとんどは「死者」や「墓場」といった「死」と直結する言葉を含んでいる。死という喪失は、このシリーズの最大のテーマだった。本書もまた例外ではない。 ーーーーーーーーー霜月 蒼(ミステリー評論家)
1969年、ハリウッドー俳優リック・ダルトンは人生の岐路に立っていた。キャリアが下り坂の彼に大物エージェントがイタリア製作のウェスタン映画に出ないかという話を持ちかけてきたのだ。悩みを抱えながらTVドラマの撮影に出かけたリックが現場で出会ったのは…リックの長年の相棒、クリフは謎の多い男だった。妻を殺したが罪を逃れ、戦争中には大勢殺したと豪語する男。今日もリックの車でハリウッドを流していたクリフはヒッピー娘を拾い、彼女らがチャーリー・マンソンなる男と暮らす牧場へと向かう…女優シャロン・テートは気鋭の映画監督ポランスキーと結婚し、リックの隣に住みはじめたところだった。折しも自分の出演作『サイレンサー/破壊部隊』が劇場でかかっているのを目にした彼女は、うきうきとチケット売り場の女の子に声をかけ…アカデミー賞2部門受賞、ゴールデングローブ賞3部門受賞の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』をタランティーノ自ら小説化。映画にはない場面、映画にはない物語、映画とは異なる結末ーこれは単なるノベライズではない。同じ種子から生み出された堂々たる長編小説なのである。オフビートな小説を愛し、自身の映像言語としてきた巨匠がみせるグルーヴィな語りの才能に瞠目せよ!
未知のウイルスのパンデミックによって世界は荒廃した。人々の貧富の差は広がり、治安は著しく悪化し、物資も乏しい。そんなアメリカのある町に、感染症で最愛の妻を亡くした老人がいた。残された娘や孫を失うものかと、ときに商店から食料品をくすねながらも、懸命に日々を送る彼。そして、犯罪者や警官たちの横暴で町の状況がますます悪化していくなかで、老人はある決断をするーデビュー以来、「家族」をテーマに数々の傑作を紡いできた名匠リューインが、ウイルス禍のいま改めて描く最新長篇。
ジャンル
作家ローレンス・ブロックは頭を悩ませていたーエドワード・ホッパーの絵から紡いだアンソロジー『短編画廊』の第2弾を計画しているのだが、いったい今度は誰の絵をモチーフにすべきか。思い悩んだ末、ブロックはある考えにたどり着く。何もひとりの画家でなくていい。今度は作家たちに、好きに名画を選んでもらおう。かくして、ジェフリー・ディーヴァーはラスコー洞窟壁画を。S.J.ローザンは葛飾北斎を。リー・チャイルドはルノワール、ジョイス・キャロル・オーツはバルテュス…といった具合に、今回も個性豊かなアートから物語が生まれ、新たなる“芸術×文学”の短編集が完成する。名だたる作家17人による文豪ギャラリー第2弾。
探偵マット・スカダー・シリーズ 待望の新作 + 傑作短篇集 エレインの知り合いが名前も知らぬ男から脅迫を受けていた。 老スカダーは単独で調査を始める…… …………………………………………………………………………………… 【 堂場瞬一・解説 】 凝った構成も、あっと驚くどんでん返しもない。 しかし本作品は、何とも言えない味わいを残す。 …………………………………………………………………………………… □ 本書収録作品 夜と音楽と 窓から外へ バッグ・レディの死 夜明けの光の中に バットマンを救え 慈悲深い死の天使 夜と音楽と ダヴィデを探して レッツ・ゲット・ロスト おかしな考えを抱くとき ミック・バルー、何も映っていない画面を見る グローガンの店、最後の夜 石を放つとき 原題: A Time to Scatter StonesA Matthew Scudder Novella ◆ 著者について ローレンス・ブロック Lawrence Block 1938年、ニューヨーク州生まれ。20代初めの頃から小説を発表し、100冊を超える書籍を出版している。 『過去からの弔鐘』より始まったマット・スカダー・シリーズでは、第9作『倒錯の舞踏』がMWA(アメリカ探偵作家クラブ)最優秀長篇賞、 第11作『死者との誓い』がPWA(アメリカ私立探偵作家クラブ)最優秀長篇賞を受賞した(邦訳はいずれも二見文庫)。 1994年には、MWAグランド・マスター賞を授与され、名実ともにミステリ界の巨匠としていまも精力的に活動している。 ◆ マット・スカダー・シリーズ ◇ 過去からの弔鐘 ◇ 冬を怖れた女 ◇ 一ドル銀貨の遺言 ◇ 暗闇にひと突き(早川文庫) ◇ 八百万の死にざま(早川文庫) ◇ 聖なる酒場の挽歌 ◇ 慈悲深い死 ◇ 墓場への切符 ◇ 倒錯の舞踏 (MWA賞最優秀長編賞) ◇ 獣たちの墓 ◇ 死者との誓い (PWA賞最優秀長編賞) ◇ 死者の長い列 ◇ 処刑宣告 ◇ 皆殺し ◇ 死への祈り ◇ すべては死にゆく(単行本) ◇ 償いの報酬 ◇ 石を放つとき(単行本)本書 【 目次 】 ◆ 夜と音楽と …… 5 マシュウ・スカダーとともに育って ブライアン・コッペルマン …… 7 窓から外へ …… 13 バッグ・レディの死 …… 67 夜明けの光の中に …… 121 バットマンを救え …… 155 慈悲深い死の天使 …… 183 夜と音楽と …… 209 ダヴィデを探して …… 217 レッツ・ゲット・ロスト …… 245 おかしな考えを抱くとき …… 271 ミック・バルー、何も映っていない画面を見る …… 301 グローガンの店、最後の夜 …… 307 著者あとがき …… 331 ◆ 石を放つとき …… 337 訳者あとがき …… 486 解説 …… 495
フィリップ・マーロウ、72歳。私立探偵は十年前に引退して、今はメキシコで隠居の身。ホテルのテラスでマルガリータを啜り、カード遊びで時間を潰す毎日だ。しかしそんなマーロウに久しぶりの依頼が。溺死したとされる不動産業者が実際に事故で死んだのか確かめてほしいという。保険会社は偽装を疑っていた。マーロウは男の足跡を追い、カリフォルニアとメキシコを行き来する。やがて男の妻、美しいドロレスと出会いー。異色の作家がチャンドラーに捧げて描く、杖を突きながら異国の地を行く、老境のマーロウ!
古都サンドミエシュのシナゴーグで見つかった女性の遺体。咽喉元を幾重にも切り裂かれ、体中の血を抜かれて不自然なほど真っ白になった議員の妻の無残な姿に、町の人々は「儀式殺人」だと騒然とする。独り身となり首都から赴任してきた傷心の検察官シャツキは、久しぶりの大きな事件に腕を鳴らすが、やがて第二の遺体が…。“欧州一ボヤく男”こと中年検察官シャツキが、凄惨で不気味な殺人事件の謎を追う!第三作『怒り』、第一作『もつれ』で日本のミステリーファンを驚かせた「ポーランドのルメートル」による怪作シリーズ、衝撃の第二作。
父が殺された。父は詐欺師だった。奴隷解放運動の資金の名目で大金を巻き上げ、それを狙う悪党に殺された。12歳の少年チャーリーは金を約束どおり届けようと決意する。時は19世紀。父の贖罪のため、少年は遙か南へと旅立つ。だがそのあとを父を殺した男たちが追う…。『音もなく少女は』『その犬の歩むところ』の名匠の新たなる感動作。
グアテマラの殺戮から1年。メキシコの麻薬王アダン・バレーラの死は、麻薬戦争に終結をもたらすどころか、新たな混沌と破壊を解き放っただけだった。後継者を指名する遺言が火種となり、カルテルの玉座をかけた血で血を洗う抗争が勃発したのだ。一方、ヘロイン流入が止まらぬアメリカでは、DEA局長に就任したアート・ケラーがニューヨーク市警麻薬捜査課とある極秘作戦に着手していたー。21世紀のクライムノベルの金字塔『犬の力』『ザ・カルテル』のシリーズ第3弾、完結!
メキシコでは再び恐怖が街を支配していた。熾烈を極める抗争、凄惨さを競ってSNSで拡散する虐殺映像。終わりなき血と暴力の連鎖に、ケラーは米国国内からカルテルへの金の流れを断つべく、囮捜査官を潜入させる。やがて見えてきたのは、アメリカ政財界とメキシコの巨額ドラッグマネーが絡む腐敗の構造だった。大統領をも敵にまわしたケラーが最後に下す決断とはー。40年に及ぶ血と暴力の連鎖は、国境を越えてアメリカ合衆国へ。全米ベストセラーの問題作。
ジャンル
米国を代表する名画家、エドワード・ホッパー(1882-1967)。作家ローレンス・ブロックは、ホッパーの作品は「絵の中に物語があること、その物語は語られるのを待っていること」を強く示唆していると語り、ホッパーの絵から物語を紡ぐこの短編集を考えついた。彼の呼びかけに集まったのは、スティーヴン・キング、ジェフリー・ディーヴァー、マイクル・コナリー、リー・チャイルド…といった錚々たる顔ぶれ。各々の個性を遺憾なく発揮した華麗なる文豪ギャラリーが、ここに幕を開けたー。2017年アンソニー賞Anthology部門最終候補。2017年MWA賞受賞(L・ブロック作『オートマットの秋』)。
ポイズンヴィルは鉱山会社社長の大物が労働争議対策として集めたギャングたちによって、支配され汚濁に満ちた市(まち)になっていた。その浄化を望む男に呼ばれたコンティネンタル探偵社の私が市に着いた途端に、その男は殺されてしまう。その男の父親である鉱山会社社長がそのまま、市の浄化を私に依頼した! 銃弾飛び交う、血で血を洗う抗争を巧みに利用しながら私は市の毒に挑んだ。ハードボイルドの巨匠ハメットの長編デビュー作を名手の翻訳で。
全米の犯罪組織を束ねる“評議会”に親友の命を奪われた殺し屋専門の殺し屋ヘンドリクス。復讐を誓った彼は、秘密のヴェールに包まれた“評議会”の悪党どもを追うが…。一方、サンフランシスコではゴールデンゲートブリッジを狙った大規模爆破テロが発生。阿鼻叫喚の現場では、死んだと思われていた“評議会”の元幹部「悪魔の赤い右手」の姿が目撃されるー黒幕たちが跋扈する、波乱のシリーズ第二弾。
ワルシャワ市内の教会で、右眼に焼き串を突かれ男が死んだ。容疑者は、彼と共にグループセラピーに参加していた男女四人。検察官シャツキは早速捜査を進めるが、調べれば調べるほど事件は混迷し、一方で夫婦関係に閉塞感を抱いていた彼は若い女性記者に惹かれ、罪悪感と欲望との挟間で悶々とする。やがて、被害者の遺品から過去のある事件に気づくシャツキ。真実に手が届こうとしたその時、衝撃の事態が起こる…。日本のミステリーファンを唸らせたポーランドの怪作『怒り』、本作はその「シャツキ三部作」の第一作。
「ALLB」と記されたマニラフォルダーに包まれていたのは、フィッツジェラルドの最初の手書き原稿。匿名と思しきミスター・スミスに依頼され、難なく盗み出した泥棒探偵バーニイ・ローデンバー。第二の依頼もまたフィッツジェラルド絡みだった。そんな中、東92丁目で老婦人殺害事件が発生し、刑事のレイに呼び出されたバーニイが真相を追及する羽目にー。小粋な会話が心地いい円熟のシリーズ最終巻。
ヒロインの生き様に痺れる傑作スリラー! 殺人事件で夫を失った元特殊部隊パイロットのマヤ。2歳の娘を案じ自宅に設置した隠しカメラに写っていたのは、2週間前に殺されたはずの夫ジョーだった。ジョーの死に潜む謎を追ううちに、マヤは4か月前に惨殺された姉クレアの死、そして17年前のある事件の真相へとたどり着く……。 ハードボイルドなヒロインの生き様、予想を大きく超える予想外の結末。ジュリア・ロバーツが惚れ込み映画化権を獲得した、「マイロン・ボライター」シリーズで人気の著者による最新傑作スリラー!
麻薬や銃による犯罪を取り締まるマンハッタン・ノース特捜部、通称“ダ・フォース”。ニューヨーク市警3万8千人の中でも最もタフで最も優秀で最も悪辣な警官たちを率いるデニー・マローンは市民のヒーローであり、この街を統べる刑事の王だった。だが、ドミニカ人麻薬組織の手入れの際におこなったある行動をきっかけに、栄光を約束されたマローンの人生は、転落の道をたどりはじめる…。