著者 : 田口俊樹
199×年。世界があのキューバ危機以来の第三次世界大戦勃発の恐怖に直面した。ロシアの国粋主義者と旧ソ連軍の不満分子が手を組み、シベリアの核ミサイル基地を占拠し、アメリカと日本を攻撃するという脅しをかけてきたのだ。米海軍精鋭の原子力潜水艦『アラバマ』に出動の命令が下った。艦長はF・ラムジー大佐(ジーン・ハックマン)、そして新任の副艦長がR・ハンター少佐(デンゼル・ワシントン)。潜行12日目、敵潜水艦と遭遇した『アラバマ』にペンタゴンから命令が送信されてくる。だが、敵の魚雷が船体をかすめて爆発、『アラバマ』の通信設備が作動しなくなってしまった。敵ミサイル基地への攻撃をすべきか、否か。〔即時攻撃〕を主張するラムジー艦長、〔命令の再確認〕を強く求める副艦長のハンター。『アラバマ』の艦内は二派に分裂し、男たちの息づまる戦いが始まった。
こいつは時価五十万ドル、いやそれ以上かー私たちは忍び込んだコルキャノン邸で、世界に五枚しかないという超希少コインを手に入れた。たった一時間の仕事としては上出来だ。と喜んだのも一晩限り、翌朝コルキャノンの妻が撲殺死体で発見され、なんと私に殺人容疑が。その上、第二の殺人が起こり、問題のコインが消えるにおよんで、私は犯人捜しに乗り出すことに。
しまった、ついに正体を見抜かれたー。古本屋の主人におさまった私のもとにやってきた古書蒐集家は、私が泥棒だということを知っている様子だった。なにしろ世界に1冊しかないキプリングの詩集をなにがなんでも手に入れろというのだから。高額の報酬に釣られて安請け合いはしたものの、盗んだばかりの本を何者かに奪われ、おまけに殺人事件にまで巻き込まれるはめに。ネロ・ウルフ賞受賞の泥棒バーニイ・シリーズ第3作。
もう何年もまえのことだ。警察を辞め、妻子も捨てて、酒場に入りびたっていた私は、飲み友だちの依頼を引き受けることになった。妻殺しの嫌疑をかけられているので、真犯人を探し出してくれというのだが…。アル中探偵マット・スカダーの回想を通して、大都会の感傷を謳い上げたアメリカ探偵作家クラブ賞受賞の表題作をはじめ、当代随一のストーリーテラーが絶妙な筆さばきでつづる逸品20篇を収録した待望の傑作集第三弾。
この絶望的な胸の痛みをどうしたらわかってもらえるのだろう。何不自由ない生活を送っていながらも、どこか満たされないのだ。そんなある日、宅配業を営む友人が殺され、運んでいた書類が盗まれるという事件が起きた。書類にはいったいどんな秘密が隠されているのか?好奇心に駆られ調査を始めたわたしの前にやがて歴史上有名な冤罪裁判の存在が浮かび上がった。冒険への郷愁やまぬ中年男ドク・アダムズの新たな活躍。
アメリカ探偵作家クラブがミステリの発展に寄与した各分野の優れた作品に対して栄誉を与えるエドガー賞。本書はそのうち1981年から88年までに最優秀短篇賞を受賞した作品を年代順に網羅したアンソロジーである。フレデリック・フォーサイス、ルース・レンデル、ローレンス・ブロックをはじめとする、現代ミステリ界最高の作家たちによる多種多彩な短篇を結集したファン必携の書。『エドガー賞全集』待望の続篇。
うまそうな料理の匂いが漂う浜辺の別荘で愛する家族と至福の時を過ごす。わたしはこの週末を心待ちにしていた。ところが長男ジャックの友人が殺され、息子に容疑がかけられたのだ。幼い頃、浜に打ち上げられた瀕死の鯨のために涙を流した我が子が殺人犯だなどとは。冤罪を晴らすため、わたしはひとり事件の真相を探りはじめた…。冒険に憧れる中年男ドク・アダムズの活躍を描いた注目の冒険小説、文庫オリジナルで登場。
うますぎる話には罠がある。アパートに忍び込み、小箱を盗み出すだけで5千ドルの報酬をくれるという。だが、家捜しを始めたとたん、パトロール警官の二人組に踏み込まれた。その上、寝室からは死体が見つかり、私は当然殺人犯として追われるはめに。容疑を晴らし、再びプロの泥棒としての仕事をするためにも、自分の手で事件を解決しなくてはならない。マンハッタンの泥棒探偵バーニイ・ローデンバー、小粋に文庫初登場。
挫折したピアニスと声楽家の恋を描き、人間と芸術のかかわりに迫る表題作、ぼけかかった妻がぼけてしまった夫の心を再発見する「ホラスとマーガレットの52回目の結婚記念日」、老人に教わった魔法で少年が空を飛ぶファンタジックな「崖」など-。ストーリーの面白さ、テーマの切実さと奥深さ、登場人物の魅力が渾然一体となって、人生の歓びと不思議と恐怖を映しだす。