著者 : 田山花袋
文学を志しながらも、家庭貧しく代用教員として人生を歩み始めた青年清三。同級生の学生生活や恋の話は遠い世界となり、田舎教師として埋没しゆく煩悶を日記に記す。世間が日露戦争の勝利に沸くなか病没した実在の青年の日記を元に、北関東の風物を織り交ぜ描く、自然主義文学の代表的作品。改版。
死、貧窮、病苦、差別ー明治期、日清戦争後の社会不安を背景に、人生の暗黒面を見据え描き出した「悲惨小説」「深刻小説」と称された一連の作品群があった。虐げられた者、弱き者への共感と社会批判に満ちたそれらの小説は、当時二十代だった文学者たちの若き志の発露であった。「自然主義への過渡期文学」という既成概念では計れない、熱気あふれる作品群を集成。
家庭があり、知識も分別もある中年作家の竹中時雄は、平凡な日々の生活に鬱屈とした心情をつのらせていたが、ある日横山芳子という女学生を弟子にとることにする。はじめのほうこそは仲睦まじい師弟であったふたりだが…。作者の実体験をもとに現実を赤裸々に描いた自然主義文学の代表作『蒲団』他、『一兵卒』『ネギ一束』『少女病』を漫画化。
家庭があり知識も分別もある、世間に名を知られた中年の作家の女弟子への恋情ー花袋は、主人公の内面を赤裸々に暴き立て、作者自身の懺悔録として文壇に大きな衝撃を与えた、日本自然主義文学の代表作。日露戦争の最中ひっそりと死んでゆく哀れな一兵卒を描いて読む者の胸をうつ小品「一兵卒」を併収。
蒲団に残るあのひとの匂いが恋しいー赤裸々な内面生活を大胆に告白して、自然主義文学のさきがけとなった記念碑的作品『蒲団』と、歪曲した人間性をもった藤田重右衛門を公然と殺害し、不起訴のうちに葬り去ってしまった信州の閉鎖性の強い村落を描いた『重右衛門の最後』とを収録。その新しい作風と旺盛な好奇心とナイーヴな感受性で若い明治日本の真率な精神の香気を伝える。