著者 : 由良三郎
坂巻内科医院の院長、倫三が急死した。死因はウイルス性の脳炎によるものだった。同じ頃、彼が研究に通っていた明京医大の細菌学教室で、ウイルスの盗難事件が発覚しており、倫三は致死率100%の恐るべきウイルスに感染した可能性もあった。しかし、専門医による感染ルートの解明も不可能だった。果たしてウイルス利用の完全犯罪殺人は可能なのか。
単身赴任で独り暮しが始まった風見淳太郎にとって、最大の悩みは“退屈”だった。なにせ酒は飲めない、スポーツは嫌い、ギャンブルも体質的に駄目とあっては時間の潰し様が無いではないか。ふとした事で他人の手紙を盗み読みした瞬間、無上の悦楽を感じますますその悪癖にのめり込んで行く。しかしそれが連続殺人につながり警察の目が光り出す…。
三伸建設設計課一級建築士・田中浩一は、ある夜、中学高校が同窓で、今は東聖大学法医学教室の古屋一郎の訪問を受けた。「緊急に信用できる人間に会いたいのだ」と古屋は、緑色の百円ライターを机の上に置いた。その目の前のライターこそが、法医学者・古屋の研究成果であった。それは「原爆、水爆よりも恐しい科学兵器なのだ」という。その兵器とは。
三信建設設計課一級建築士・田中浩一は、ある夜、中学・高校が同窓で、今は東南大学法医学教室の古谷一郎の訪問を受けた。「緊急に信用できる人に会いたいのだ」といって古谷は、緑色の百円ライターを取り出して机の上に置いた。そして田中が、煙草を吸うためにそのライターに触れようとすると「それに触っちゃいけない」と声を荒らげ「僕はあるグループに追われている。ある研究の成果が素晴らしく軍事目的に使用できる」と付け足した。法医学者の夢を満たすどころか、原爆・水爆よりも恐しい科学兵器なのだ、という。最後に古谷は「目の前の、そのライターだよ」といって口をつぐんだ。人類が初めて出会った、その兵器とは。
製薬会社社員の田原と禅道は数学者、相良五郎の命を偶然救い、親しくなった。教授昇進を目前にした14年前、彼は女性スキャンダルの罠に嵌まり、大学を追われたらしい。当時の恋人が今になって不審な動きをするのを怪しんだ二人は調査を始めた。象牙の塔の権力闘争、新薬認可を巡る製薬会社の策謀の中から浮び上ってきたのは実験薬の盗難事件だったー。元東大医学部教授が描く医学推理。
見知らぬ男から完全犯罪殺人の方法を囁かれた坂田陽三。彼は酔った勢いで上司の藤田を殺したいと洩らす。その数日後、藤田が突然心臓麻痺で死亡し、陽三宛てに殺しの請求書が送られてきた。殺人の報酬に対し支払いを拒否する陽三だったが、恋人の殺害が警告され、その彼もまた…。窮地に追い込まれた陽三は、男の正体を探り、殺し屋組織の存在と驚くべき手口を掴むがー。奇抜なトリックを駆使した本格推理。
学生バンド『三角関数』が出演した学園祭の舞台で、信じ難し惨劇が発生!演奏中に行なわれた“寸劇”の最中、突然首吊り用の鎖が切れ、西条が死亡。さらにその直後、小佐井も毒殺されてしまった。しかも、切断した鎖の輪が忽然と消失、小佐井には服毒した形跡がみられない。音楽部部長の霧村助教授は、残りのバンドメンバー丹治亮一、黒田ユリらと真相を追及。はたして二人を殺害したのは、同一犯人なのか、それとも?巧妙に仕掛けられた犯行に霧村の推理は?息を呑むドンデン返しと、最先端の医療科学を駆使した強烈なトリツク!著者会心の本格推理堂々の登場。
桜井家に名目上養子で迎えられた晃二は、年上の妻玉乃に采配を振るわれ、苛立ちがつのるばかりだった。いっそ妻を殺してしまえばー化学者である彼は、秘かに実験を続け、功妙な手口を見出した。実行に移すのは玉乃の誕生日を祝う夕食会で、しかも客人の目の前で堂々とやってのける!!周到に準備された計画には、一分の隙もないように見えたが…。日常の中にひそかに息づく殺意を鋭く描いた、傑作本格推理。
「胃と腸が、体の中で切断されている!!」高松病院の昼食会の席上、病院長・高松良一が突然、腹部に激痛を訴え急死。手術に立ち会った医師たちは、その奇怪な症状に戦慄する。医学界の常識を覆す奇病か、それとも殺人か?しかも、同夜の宿直医・望月までが同じ症状で死亡。病院内を恐怖が疾る!解剖された2人の体内から米粒大の鉄球が発見された。不気味に光る鉄球の意味するものは何か?不可能犯罪の謎に挑む新米医師・吉松直樹。医学者としても一流の著者が、最先端の医学知識と奇抜なトリックとを縦横に駆使した、書下ろし本格推理の白眉。
先端技術企業の金庫から機密資料が漏洩した。容疑者の守衛は無罪。その判決直後のある日、都内の火葬場の炉から出された遺骨にもう一つの髑髏が。一見無関係な場所で発生した二つの事件の背後に、競合会社の思惑と、謎の金庫破りの名人の存在が見えかくれする。守衛の上司の総務部長は独自の調査を開始するが…。元東大医学部教授の著者が専門知識を生かして描く本格推理長篇。