著者 : 皆川博子
人は生得あさましいものであるが、南無阿弥陀仏と称えれば、必ず救われるー平易な言葉で教えを説き、近畿一帯に大勢力を振った英邁なる高僧は、私的にはどのような男であったか。争乱と災厄の世に、真宗王国を築き上げた、常人を超えた精気の人蓮如の真実を、宿命の娘たちの恐るべき眼で描く、話題の長編。
室町時代に真宗王国を築き、権勢を振るった本願寺の法主、蓮如は5人の妻に、27人の子を産ませた。本書は後に足利義政の側室となる娘、万寿の目を通して、産み疲れて死んだ母への憐憫、教線をひろげるためにわが子を利用する父への不信・憎悪を凄絶に描く。書き下ろし長編歴史小説。
非行少女の更生を願い、絶海の孤島に施設が建造された。だが、幼くして性の歓びを知り、放恣で率直な日常にいた少女たちの前には、悪魔の罠ともいうべき悲劇が待ちうけていた。3人の死亡者を出し、28人となったはずの少女たちが、何度数え直してみても、31人いるのなぜ?恐るべき魂の告白を聞け!
東京・渋谷で画廊を経営する村上康雄は、同じビルの喫茶店のレジ係・斎原茜が絵を描くことを知り、急速に恋に陥ち、結婚することになった。ステーション・ホテルでの挙式の当日、康雄は、この結婚になぜか反対する茜の両親とはじめて会った。気まずい雰囲気のうちに、結婚式が始まる直前、茜は、ウェディングドレスのまま、忽然と消えた。いったい何事が…。失意の康雄は、茜の過去を何一つ知らないことに思い当たり、茜の故郷・山形県温海温泉に向かった。そこで知った衝撃の事実!さらに戦慄の殺人事件が。直木賞受賞の女流が、北国の旅情と、花嫁失踪の謎とを見事に融合させたミステリー秀作。
軽井沢の山荘で吹雪のために、9名の男女が閉じ込められていた。自動車は故障し、電話線は切られている。外部との連絡が取れぬ密室と化した山荘で、次々に起きる奇怪な事件。そしてついに殺人事件が発生した。有力容疑者として、ある女流作家が浮かぶが、さらに第2の殺人が起こり、事件は複雑な様相を呈し始めた。直木賞作家が精緻な構成で贈る、会心のサスペンス・ミステリー!