著者 : 眉村卓
EXPO70の前に書かれた“予言の書” --たしかに万国博は政府や大企業のいうとおり景気を刺激し、新技術を生みだすことだろう。 しかし、それが何だというのだ?それが本当の人間のためなのか?-- 1970年の大阪万博に引き続き、1987年3月15日、愛知県で東海道万国博が開かれようとしていた。科学技術の粋を集めたエキスポは、莫大な資金が動くだけに企業間の争いも激しい。財閥系大企業はもちろん、非財閥系やプランニング会社などをが、しのぎを削っていた。 そんななか、財閥系の企業が密かに養成した産業将校たちが暗躍を始める。彼らの真の目的は何か。果たして東海道万国博は成功するのか……。 70年の大阪万博開催前に書かれた“予言の書”ともいえる長編SF経済小説。
現代社会に警鐘を鳴らす著者初の長編SF 「当社は現代科学の及ぶ範囲の事なら何でも致します。契約が成立しさえすれば、その日からあなたはやり直しの権利を持つのです。今すぐドリーム保険に入りましょう!」 合理主義一辺倒の会社に嫌気がさし、恋人も失ったシロタは、その胡散臭い広告の文句に全財産を賭けることにした。だが、それはエリダヌ人が仕掛けた罠で、彼は人体実験の対象にされてしまう。高度な科学力に圧倒されるシロタだが、やがてエリダヌ星も地球も滅亡の瀬戸際にいることを知り……。 豊かな精神性よりも、合理性や効率、利益を求める現代社会に疑問符を突き付ける、著者初の長編SF。
生涯、猫を愛した「日本のクリスティー」仁木悦子による本邦初の猫文学アンソロジー(1980年・立風書房刊)を待望の復刊! ミステリー、SF、童話、純文学、落語、漫画の各界の豪華執筆陣による、ミステリアスな12匹の猫の物語。和田誠による装丁・イラストも魅力的な一冊。 【収録作】 「猫の年齢」 西東登 「ピーや」 眉村卓 「お富の貞操」 芥川龍之介 「猫文法」 川又千秋 「猫の皿」 古今亭志ん生 「猫の殺人」 吉行理恵 「ねこ忍」 水木しげる 「復讐は彼女に」 小泉喜美子 「ネコ」 星新一 「ねこんしょうがつ騒動記」 あまんきみこ 「誘拐者たち」 仁木悦子 「猫の泉」 日影丈吉 編者解説 仁木悦子 「猫の年齢」 西東登 「ピーや」 眉村卓 「お富の貞操」 芥川龍之介 「猫文法」 川又千秋 「猫の皿」 古今亭志ん生 「猫の殺人」 吉行理恵 「ねこ忍」 水木しげる 「復讐は彼女に」 小泉喜美子 「ネコ」 星新一 「ねこんしょうがつ騒動記」 あまんきみこ 「誘拐者たち」 仁木悦子 「猫の泉」 日影丈吉 編者解説 仁木悦子
幻想の世界と現実の世界を自由に行き来できる、世界でも希有な作家だった。 ーー南山 宏(作家・元SFマガジン編集長) この人が歩んできた道の果てに、今の日本SFの輝きがある。 ーー池澤春菜(声優・SF愛好家) 日本SF第一世代として活躍した眉村卓が晩年の病床で書き継いでいた遺作。SF黎明期に起こったこと、そして未来はどうなるのかーー 今から60年以上前、大学を卒業して会社員となった浦上映生は文芸の道を志し、SF同人誌「原始惑星」や創刊されたばかりの「月刊SF」に作品を投稿し始めた。サラリーマン生活を続け、大阪と東京を行き来しての執筆生活はどのように続いていったのか。 晩年の彼が闘病しつつ創作に向き合う日常や、病床で見る幻想や作中作を縦横無尽に交えながら、最期に至った“この世界の真実”とは。 これぞ最後の「眉村ワールド」!
外との接触を拒むかのように、町の入り口に位置する「峠」。就職し赴任したひなびた町で、閉塞感に包まれながら、若き日々を過ごした男は、久方ぶりに町を訪れた際に、「峠」で不思議な感覚にとらわれるー。長年活躍し齢八十を超えた現在も健筆をふるう著者の自伝的要素を含む「峠」ほか、人生の夕焼けを生きる者たちの存念や悲哀を物語に綴った、渾身の書き下ろし短編集。
現代日本SF誕生から60周年を記念して、第一世代作家6人の傑作選を日下三蔵の編集により刊行するシリーズ。第3弾は眉村卓。収録作は「下級アイデアマン」「悪夢と移民」「正接曲線」「使節」ほか。
六七歳の柴田一郎は、独り暮らしの無聊を慰めるべく、自分史を書きはじめる(「自分史」)。病院帰りに立ち寄ったビルの名店街で渡された腕時計のようなものは、自分がどのくらい嫌われているかわかるというアイテムだった(「嫌われ度メーター」)など、人生の黄昏時を迎えた者たちに訪れる奇妙であやしい出来事。全編書き下ろしで贈る、珠玉の二十の物語。
五二歳の杉田は、意識だけが中学時代に戻るという体験を繰り返すようになった。その真相とは?(「杉田圭一」)一九歳の坂本明の前に現れた、奇妙な顔。代償を払えば死ぬときの状況を選ぶ権利を与えてくれるというのだが(「臨終の状況」)。アルファベットのAからはじまりZまで、思いつくままに綴られた26編の全編書き下ろしショートショート。
よかれと思ってとった行動が裏目に出たり想定外のトラブルに直面し右往左往したり。周囲との摩擦を避けるため、ぐっと気持ちを押し殺したり、会社員として、職場という名の舞台で、日々戦いつづける者たち。そんな彼らの物語を通して、会社というものの本質や、人生の真実をえぐりだす。宮仕えの悲哀を知る、世のすべてのサラリーマンに捧ぐ、オフィス傑作短編集。
岩田広一が通う中学に山沢典夫という転校生が入ってきた。典夫はギリシャ彫刻を思わせる美男子であるのに加え、成績優秀でスポーツも万能だったが、なぞめいた雰囲気を持っていた。ある日とんでもない事件を起こした典夫の秘密とは? 1970年代のNHK少年ドラマシリーズシリーズとして映像化され人気を博した眉村卓がおくるSFジュブナイルの傑作。 岩田広一が通う中学に山沢典夫という転校生が入ってきた。典夫はギリシャ彫刻を思わせる美男子なのに加え、成績優秀でスポーツも万能だが、なぞめいた雰囲気を持っていた。ある日とんでもない事件を起こした典夫の秘密とは? 1970年代にドラマ化され人気を博したSFジュブナイルの傑作。 解説・岩井俊二 異様な少年 転校生 みどり完敗 もうじき雨になる 軽蔑の視線 六四〇号室の客 典夫のデザイン 妙な仲間たち 乱闘! ここだけではない にくしみに燃える目 ぼく行ってくる 不適応者かね たいへんなの だから撃ったんだ この世界には住めない 全員が消えた からっぽの室内 もうお別れだ さようなら みどりの悲しみ なんということだ 帰ってきたのね どうして典夫を守るか 屋上から降りてくる 帰ってきた人々 あしたを創る 最後の授業時間 講談社文庫版あとがき
描かれている舞台は、たしかに日常の職場だ。新人類もお局さまもいて、仕事の進め方や上司との付き合い、昼休みの食事、職場恋愛などなどーだが、何となく奇妙なのだ。皆さん、お仕事ご苦労さまです。日常からほんの少し逸脱した、不可思議な「職場」でひと休みしてください。オフィスSFショートショート集。
年金生活者で独り暮らしの主人公の自宅に、「われわれの贈り物で、死んで下さい」と書かれた異様な手紙が届けられた。世界中で、差出人不明の卵型の自殺器と手紙がばらまかれる。キャップを外すと中に針があり、それを自分の体に刺すと、一瞬にして死ぬことが出来る。徐々に人口が減り始め、“死”が日常になる…終末SFの傑作「自殺卵」ほか書き下ろし「退院前」、「とりこ」の2作を収録した全8編!
星々に進出した地球人類。だが連邦軍による植民惑星の統治が軋轢を生じさせるに及び、連邦経営機構が新たに発足させたのが司政官制度である。官僚ロボットSQ1を従えて、人類の理解を超えた原住者種族を相手に単身挑む若き司政官たちの群像。著者を代表する、遠大な本格SF未来史の短編全7作を年代順に配し、初の一巻本として贈る。巻末には詳細な作品世界ガイドを収録した。著者あとがき=眉村卓/解説=中村融
どうしたというのだ?-良平は愕然とした。授業中眠ってしまったというのにきちんとノートがとってあるのだ。その上、周囲の人々も、まるで何者かに乗っ取られたかのような行動を見せるではないか!人間の身体と意識を占領し、思いのままに操る借体生物の恐怖を描く表題作。他に、亜空間に住む無機生命による驚くべき侵略をテーマとした『まぼろしのペンフレンド』を収録。
行政エリート職の司政官を描き惑星世界そのものを描くライフワーク最終巻。急速に進行する深刻なインフレ、原住種族プバオヌの自主権の承認、惑星上のあちこちで起こる争乱タトラデンの植民者たちは司政官キタの施策を時代錯誤と非難しはじめる。無能の司政官呼ばわり、結構だ、とキタは思う。愚直なまでに司政原則を遵守する司政官を演じつつタトラデンを相剋の世界に持ってきているのだから、そんなことははじめから覚悟の上だった。目的を達成するため、司政官は私情を殺して職務を遂行する。
資材課長の岡本努は、宮本と名乗る青年の訪問をうけた。「どうしても会ってほしい男がいる」というのだ。つれだって出かけたスナックで待っていたのは、自分とそっくりの男であった。しかも同姓同名、聞けば出身地も生年月日も、そして親の名前まで同じである。一卵双生児か、だが、秘密を知っているらしい宮本青年の口から意外な話が…。この「思いがけない出会い」をはじめ、「夜風の記憶」「血ィ、お呉れ」「乾いた旅」など、眉村SFの秀作6篇を収録。
学校の行き帰りに通りかかるお店でみつけたアンチック・ドール。里沙は、なぜか心ひかれるその人形に「リサ」と名をつけた。リサを自分のものにしたいーそう人形に語りかける里沙の心の中に、ある日リサの答えがきこえてきた。リサと、声にならない会話をかわす里沙だが、不思議な予言の言葉が、心に響くようになり。-『里沙の日記』から。表題作ほか傑作SF短編5編を収録。
人類が宇宙に進出し、居住可能な惑星に植民するとして、どんな状況が現出するのであろうか。植民世界がしだいに建設されるとき、教育と訓練を受けた司政官と呼ばれる人間が、理屈の上では公平無私のロボット官僚たちを駆使して、その植民世界を統治するかもしれない。-司政官シリーズは、この一見統一されたかたちの中での司政官を描こうとするうちに生まれた。が…少し考えれば自明のように、それは連邦と植民世界、植民者と現住種族との間に立つ、矛盾した存在である。『引き潮のとき』は、その矛盾のうちに連邦から自己の世界を混乱に導く使命を与えられて赴任し、しかも司政官制度退潮の中でおのが何をし、どうあるべきかを追られなければならなかった男の物語というわけなのだ。社会と個人の関係に、透徹した視線を向け続ける著者のライフワーク。待望の第1巻。