著者 : 石原慎太郎
限りなくピュアな初恋の記憶(「遠い夢」)、生き残った特攻隊員の愛しき者との再会(「空中の恋人」)、震災の被災地をした走る男のみたもの(「北へ」)、ボクサーとファッションデザイナーの危険な関係(「愛の迷路」)、事故で半身不随になった夫に妻は(「ある結婚」)、死後公開され「文藝春秋」を完売・増刷させた手記(「死への道程」)。単行本未収録のまま残された作品を収録。
俺たちは大事な約束を忘れていたよな。刑罰では拭いきれない加害者への憎しみ。二人きりの兄弟が選んだのは“仇討ち”だったー。鮮烈、圧巻、陶酔のハードボイルド。円熟の筆致で描き出す「男の美学」。表題作含む二編収録!!
最大の武器は知力と色気、そして暴力!特攻隊、愚連隊、安藤組組長、映画俳優…ハジキか女を抱いて寝るような、その破天荒な生き様をモノローグで描ききる圧巻のノンフィクションノベル!
インパール作戦で多数の戦友を失った男が戦後にとった行動とは?(『暴力計画』)。死に直面する作家が自在なリズムで自己と対話する(『-ある奇妙な小説ー老惨』)。末期患者と看護人の間に芽生えた奇妙な友情(『死者との対話』)。ある少女を襲った残酷な運命(『いつ死なせますか』)。切れ味の鋭い掌編の連打(『噂の八話』)。「これは私の一生を通じて唯一の私小説だ」(『死線を超えて』)。ヨットレースを引退した男の胸に去来するものは(『ハーバーの桟橋での会話』)。齢87を迎え、死と直面する自らをも捉える作家の冷徹な眼ー珠玉の七編。
首都圏随一の規模を誇る「中央救急病院」に今日も瀕死の重傷患者が運び込まれた。地下鉄の事故に遭ったという妙齢の女性は、切断寸前の左脚が皮肉でわずかにつながる無惨な容体。駆けつけた父親の涙ながらの訴えを受け、救急部長を中心とするチームが高度な縫合手術に挑んだー。救急救命の最前線で繰り広げられる熱き人間ドラマを描く感動作!
試合相手を殺めたキックボクサーの純真…「ワイルドライフ」。度重なる海難から生還した兄弟のその後の生…「海の家族」。老女のおぼろげな記憶に刻印された海の洞窟…「ある失踪」。父帝に疎まれる運命を負った英雄の旅…「ヤマトタケル伝説」。彼等は決して無駄に死んだのではない…「特攻隊巡礼」。タフな状況を生き延びた者たちを描く、石原文学の新境地。
『太陽の季節』で既成文壇に敢然と挑戦した著者の、同時期の傑作を集めた短編集。不良少年たちが、精神を病む女を弄び、海に突き落とすまでの無軌道ぶりを描く表題作。賭場の若い女の豪胆な賭け方に魅せられた男が語る「乾いた花」。鱶の化身のような女と少年の交流を幻想的に描いた「鱶女」など5編。他に弟・裕次郎の出世作となった映画「狂った果実」の原作を特別収録する。
ヨットレースの最中、髪の毛一筋ほどのきわどさで目撃した落雷の恐怖と眩さ。海面下23メートルに広がる豪奢な水中天井桟敷。杭打ち機の何千トンという圧力を跳ね返すぼろぼろのされこうべ。ひとだまを捕獲する男。冷たい雨の夜に出会ったずぶ濡れの奇妙な男。かけ替えのない弟裕次郎の臨終の瞬間。作家の人生の中で鮮烈に輝いた恐ろしくも美しい一瞬をあざやかに切り取った珠玉の掌編40編。
人口わずか十七人、南西諸島の絶海の孤島をリゾート化すべく、観光会社の青年が島に赴任してきた。前任者が死を遂げたこの島で、彼はいつしか島の女タカ子の魅力に引き込まれて行く。彼が忌ましい島の秘密に気づいた時、年に一度の祭が幕を開けた…。古代からの因習と共同体の掟に縛られた亜熱帯の離島を舞台に、人間存在の秘められた深淵を浮かび上がらせる恐怖と衝撃の長編。