著者 : 神西清
森鷗外の系譜、テーベ百門の大都とその精神を継承する作家たち。 地下墳墓のミイラに前世の無限連鎖を見出す「木乃伊」。応仁の乱の乱世に材をとった歴史小説「雪の宿り」。妖術により不老不死となった芸妓の綺譚「喜寿童女」。巧緻な文体で純なる魂の美をえがくキリシタン物「きりしとほろ上人伝」。怪談会を舞台にした「百物語」。他全63編。 全巻完結! 中島敦 矢川澄子編 狐 憑 木乃伊 山月記 文字禍 名人伝 悟浄出世 悟浄歎異 盈 虚 牛 人 弟 子 李 陵 幸 福 遍 歴 解 説 中島敦における歌のわかれ 神西清 池内紀編 夜の鳥 ハビアン説法 わが心の女 雪の宿り 化 粧 三つの挿話 水に沈むロメオとユリヤ 死児変相 ジェイン・グレイ遺文 青いポアン 解 説 もう一つの原作 石川淳 池内紀編 瓜喰ひの僧正 山 桜 ころび仙人 鉄 枴 しぐれ歌人 無尽燈 焼跡のイエス 曽呂利咄 かくしごと 怪異石仏供養 喜寿童女 二人権兵衛 無 明 解 説 ガラス玉演戯 芥川龍之介 橋本治編 葬儀記 田端日記 きりしとほろ上人伝 じゆりあの・吉助 藪の中 トロツコ 毛利先生 舞踏会 庭 彼 あの頃の自分の事 蜘蛛の糸 地獄変 裏 畠 葱 わが散文詩 東京田端 解 説 殺された作家の肖像 森鷗外 須永朝彦編 蛇 流 行 百物語 不思議な鏡 鼠 坂 寒山拾得 椙原品 寿阿弥の手紙 うたかたの記 空 車 秋夕夢 解 説 小説といふものは何をどんな風に書いても好いものだ
日本におけるチェーホフを考えるとき、神西清(1903-1957)を抜きにしては語れない。短篇の名手の逸品を翻訳の名手がてがけた9篇、これに訳者のチェーホフ論2篇を加えた“神西清のチェーホフ”とも言うべきアンソロジー。表題作の他に、「嫁入り支度」「かき」「少年たち」「アリアドナ」等を収録。
「ボヴァリー夫人」の後日譚ともいうべき興味あるテーマが、この作品では裏側から眺められて、ひとつの喜劇として辛辣にパロディー化されたが、それとともに人間の愛憎の二重性は、それ自体が1篇の正主題となって、ほとんどモノグラフィー的な探求の対象をなすばかりか、さらにその内部において二重にも三重にも分裂して複雑な様相を示す。
プーシキン晩年の散文小説の最高峰。実直な大尉、その娘で、表面は控え目ながら内に烈々たる献身愛と揺るがぬ聡明さを秘めた少女マリヤ、素朴で愛すべき老忠僕ー。おおらかな古典的風格をそなえたこの作品は、プガチョーフの叛乱に取材した歴史小説的側面と二つの家族の生活記録的な側面の渾然たる融合体を形づくっている。