小説むすび | 著者 : 秋元由紀子

著者 : 秋元由紀子

愛を語らぬローマ富豪愛を語らぬローマ富豪

その男は、約束の12時を過ぎてから、ジュリアの前に悠然と現れた。 彼女の疎遠の父が遺言を託した相手ーーイタリア大富豪のランド。 父は愛人の存在を公言して母を苦しめ、ジュリアが赤ん坊のとき離婚した。 どれだけ貧しかろうと、父の遺産など受け取りたくはなかったけれど、 乳がんを患った母のために、なんとしても治療費を工面したい……。 最愛の母を助けたい一心で、ランドに連絡をとり、こうして会いに来たが、 彼の圧倒的な男らしさと人目を引く顔立ちに、彼女は思わず息をのんだ。 しかし、一方のランドは瞳に軽蔑の色を浮かべ、ジュリアに言い放った。 「きみは亡くなった父親のことさえ気にしない女だ」 彼は私を、見舞いにも来ずに遺産は受け取る悪女と思っているんだわ! 〈波瀾のラブストーリー〉をテーマに、愛憎物語で人気のJ・バードの秀作をお贈りします。遠い国に住む父を見舞うことも、葬儀に参列することもできなかったジュリア。それには、病を宣告された母を置いておけなかったというやむなき事情があったのですが……。

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