小説むすび | 著者 : 秋庭葉瑠

著者 : 秋庭葉瑠

パリがくれた最後の恋パリがくれた最後の恋

眼鏡の奥に本当の自分を隠しても、 いまだ残る彼への愛は、隠せない。 ひっつめ髪に眼鏡をかけ、女看守と揶揄されながらも地道に働くキャシー。 かつて彼女はトップモデルとして華々しく活躍していた十代の頃、 金持ちの男たちには見向きもせず、マルセルという青年と恋におちた。 だが嫉妬した金持ちが彼に瀕死の重傷を負わせたことで、悲恋に終わった。 10年が過ぎた今も彼女の心はマルセルを求め、夢に見ることもある。 そんなある日、経営に行きづまった雇主から次の仕事の面接を勧められ、 キャシーはしぶしぶ面接の会場に指定されたホテルへ向かった。 そして、バーで待つホテル王の顔を見て、彼女は卒倒しかけたーー 嘘よ、マルセル! 私のマルセル! いえ、もう私の彼ではない……。 激しく動揺するキャシーをよそに、マルセルは彼女が誰か気づかぬまま、 淡々と面接を進めて告げた。「結構。君は僕のアシスタントに適任だ」 “結婚しよう、ダーリン。そして全世界に知らせるんだ、僕が君のもので、君が僕のものであることを”悲劇的な別れの前に、そう口にしてくれたマルセルが、自分に気づいてさえくれないことを内心嘆くキャシーでしたが、彼は本当に気づいていないのでしょうか?

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