著者 : 秋月達郎
江戸から京都西町奉行所に赴任した長谷川平蔵。京の町では、麝香を焚いて家人を眠らせて盗みを働き、その場に花札を残していく謎の盗賊「八坂天狗」が跳梁していた…。表題作のほか、平蔵の息子で、若き日の“鬼平”、銕三郎が活躍する「伏見の白狐」、親子の情愛を描いた「十三参り」の二編を収録。初午、清水詣など四季折々の京の風物を背景に、初代長谷川平蔵の活躍を描く好評シリーズ。
「鬼」と呼ばれた火付盗賊改方長官の長谷川平蔵。その父親の初代平蔵が京都西町奉行に赴任した。その前に立ちはだかって京の町を騒がす悪党たち。贋坊主が暗躍する「六勝阿闍梨」、錦市場を巡る陰謀に絵師若冲が巻き込まれる書き下ろし「錦の若冲」、人情の機微を描く「這っても黒豆」を収録。京の風物詩も鮮やかに、新シリーズ堂々の開幕。
昭和28年、西暦1953年の夏。三方を海に包まれた美しい港町で、船乗りを夢見る若者が老いた提督に出会った。かつて神と呼ばれた、戦艦「大和」の艦長、森下信衞だった。ある日、元GHQの大学教授が、面談を求めてきた。人道に対する罪について、証言を取りたいという。誇りを胸に、森下の最後の戦いが始まる。巨艦とともに戦い続けた提督の生涯を描く海軍闘将伝。
慶長五年、徳川家康と石田三成が最も味方にしたい男がいた。京極高次ー妻と妹の「尻の力」によって出世したことから“ほたる大名”と揶揄される武将である。この優柔不断な男が流されるまま、戦国一勇猛とされる立花宗茂を迎え撃つ羽目に。十倍以上の敵を相手に高次は「敗けない」戦をどう挑んだのか…。関ヶ原の戦いの趨勢を左右した大津城の攻防を、迫力に満ちた筆致で描く歴史長編。
「エルトゥールル号の恩返しですよ」-イラン・イラク戦争の最中の昭和六十年、フセイン大統領が、四十八時間以後のイラン領空の航空機無差別攻撃を宣告。日本政府が救援機を出せない中、イランに取り残された二百人以上の日本人救出に動いた国があった…。そのトルコ政府の英断の裏に秘められた、明治二十三年の「エルトゥールル号遭難事件」とは。百年の時空を超えた日本とトルコの友情を描く感動の歴史長編。
上賀茂神社の禊ぎの川で発見された、素肌に絢爛豪華な振袖をまとい、二つに折れた破魔矢を持った若い女性の死体。さらに、下賀茂神社の糺の森や蚕ノ社の三柱鳥居の足元にも、素肌に振袖を着せられ、破魔矢を持たされた女性の遺体が…。京都文化大学民俗学部教授・竹之内春彦が、人神交婚伝説に仮託された猟奇的連続殺人の謎に挑む、民俗学ミステリー。
京都西町奉行所与力、大江権十郎。いかつい名前に無骨な面相。惚れた腫れたがこれほど似合わぬ男もいないが、十年来の恋をしていた。暴漢に襲われた娘を助けた権十郎は、感謝のしるしに簪を差し出された。一目ぼれした権十郎は、己の小柄をお返しとばかりに渡し、十年ののちにふたたび見えようと約した。初心な同心のせつない恋心を描いた一篇ほか全二話を収めた、“鬼平”の父の推理と刃が迫る、シリーズ第4弾。
岩鉄こと南町奉行所同心、岩本鉄次郎はこのところ調子がでない。追っている盗賊「女郎蜘蛛」にはいつも逃げられてしまう。何せお江戸は広く、賊がどこに現われるのやら、まるで見当もつかない。思わず長ったらしい息を吐けば、十文字屋のおてんば娘に「恋わずらい」といわれる始末。岩鉄はもう一度、溜め息をついた。中年同心のせつない恋ごころをかなえるべく、深川で一番のじゃじゃ馬小町が一肌脱いだ。好評の第2弾。
天下を騒がす贋の二分金。両替商の十文字屋善右衛門にとっても頭の痛いタネだった。「父様、わっちが贋金作りの下手人を見つけてくる」。娘のお駒はその名のとおり、深川でもつとに知られた跳ね駒である。さっそく幼馴染みで下っ引の捨吉をむりやり引っ張りだし、目明しまがいに飛びだしていったが、はてさて…。お江戸一のじゃじゃ馬小町が、八百八町にはびこる贋金を追って駈けまわる、痛快時代活劇。
荒木村重の謀反に乗じて摂津を脱走し、北条氏に庇護を求めて以来、岡崎三郎信康は伊豆韮山に厄介になっていた。ここは北条と武田の城が入り乱れる最前線。信康は小田原にとって体のいい盾である。そのころ、大久保忠世たちは信康の正室徳姫を武田方より奪還すべく、わずか二〇〇ほどの数も顧みず、二股城に寄せていた。-若殿、姫を取り返しましょうぞ。されば、次は…。三河の強情者たちが奮迅するは、信康のためだけではない。-失われし故郷を欲すればこそ。牡丹雪の舞い散る中、忠世は巨大な法螺貝を吹いた。それに続いて、異様な鬨の声が起こった。城が炎に包まれていく。人の一生は重荷を背負った遠き道。徳川の兵どもの終劇、とくとご覧あれ。
あたしは、晩夏の閑散とした水族館にいた。そこで、ゲジゲジ眉のおじさんと、すっごい美形の紳士を見かけた。なにやら怪しげな2人の会話に耳を向けると…なんと三枝絵夢のこと、話してるじゃないの。絵夢!今や人気絶頂のアイドル…そして、あたしのただ1人の親友。なんかイヤな予感、なぁんて思ってたら、胤堂とかいう変な探偵と一緒に国際的テロ事件に巻きこまれていって…。
高校に入学した僕(北斗光)と悪友の脇田誠とは、皇緑子の強引な勧めで天文部員になった。さらにもう一人、茶之水博士というとぼけた名のガリ勉も入部した。顧問は緑子のおじでもある夏川先生。その先生が、5月の連休の合宿後に、信州で運転をあやまって死んだ。僕たちはその死に不審を抱いた。夏川先生のマンションを訪れてみると、すでに部屋があらされている。次は…学校の天文台だ!