小説むすび | 著者 : 稲葉真弓

著者 : 稲葉真弓

砂漠の雪砂漠の雪

「敷物ひとつない簡素な床に、夜の光が射しこんでいた。」(「砂漠の雪」より) 高層マンションの一室に夜の気配がしんしんと迫る。自由を希求して生きた女性たちの、艶めかしく物狂おしき世界。  本を開けば、短篇の名手・稲葉真弓が描く歪んだイメージの奔流に驚かされるだろう。なんと官能的で、物狂おしい世界が繰り広げられていることか。肉体を樹木と化して踊る女、無言電話に向けて語り続ける「私」、不気味な妊婦ばかり描く女性画家。老母と老猫は深夜ひっそりと交歓し、作者自身を思わせる女性は夜更けの森で黒いシェパードと化して咆哮する。水につかる武蔵野の林の一軒家でも、都会の高層マンションの一室でも、夜の孤独が妄想をはぐくみ、不気味でなまなましい夢の世界が奇妙なやすらぎを与えてくれる。  エロティックな植物幻想を溶け込ませた作品群を中心に、単行本未収録の「砂漠の雪」「犬」2作を含む稲葉文学の精粋、全8篇を収録。 ※七北数人氏を監修者に迎えた「シリーズ 日本語の醍醐味」は、“ハードカバーでゆったり、じっくり味わって読みたい日本文学”をコンセプトに、手に汗握るストーリーではなく、密度の濃い文章、描写力で読ませる作品、言葉自体の力を感じさせる作品を集成してゆきます。 だれもいないのに鳴っている 草宮 犬 竹が走る バラの彷徨 かかしの旅 樹霊 砂漠の雪

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