著者 : 笠原淳
十五歳夏十五歳夏
甘酸っぱい感傷を伴った懐かしさもある-還暦を間近に控えたある日、定時制高校の同窓会が開かれることになった。働いていた町工場の先輩のこと、放送劇のコンクールに出場したこと、女生徒の一人に寄せる淡い想い…。主人公の脳裡にには四年間の記憶の片々が明滅しはじめる。芥川賞作家、円熟の最新小説集。
茶色い戦争茶色い戦争
個性尊重の全人教育を唱え、昭和の初めに創立された玉川学園。園内に住む少年の眼がとらえた開戦前夜から終戦までの日々。都市部から離れているため、どこかのどかなところのある学園にも-戦闘機の空中戦、陸軍の装甲車の駐屯、農家への買出しや疎開-戦争は次第に、そして確実に忍びよってくる。幼き戦争体験を軽やかに描く傑作長篇。
祀りのあと祀りのあと
長年住みなれた家と土地を離れてしまった漂泊感。父が死してのち、以前にもまして強く迫ってくる親子の絆。漠然とした不安と焦燥を感じる日々…。しかしふと気づけば、時がさまざまなものを穏やかにおし流してゆく。子のない中年夫婦の間にひそむ危うい生活感情をにじませ、円熟の境地に達した4つの連作短篇。
芥川賞全集 第十三巻芥川賞全集 第十三巻
終戦前後、日本人少女と中国人親子の交流を清冽に描き上げた加藤幸子氏の「夢の壁」。現実の事件を引金に自由な劇的空間を遊泳する唐十郎氏の「佐川君からの手紙」。無気力な弟を追憶しつつ生の儚さを追究した笠原淳氏の「杢二の世界」。非行に染まる女子高生に近づく優良女生徒の友情を通して揺るぎない人間観を明示した高樹のぶ子氏の「光抱く友よ」。診療を一切拒否して癌にたおれる叔母への心の揺れを丹念に追った木崎さと子氏の「青桐」。第88回ー第93回受賞作。
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