著者 : 笹沢左保
最愛の妻を自死に追い込んだ理由を探る軽輩・友助の闘いを描く「木綿触れ」。家族に売られ島送りにされた渡世人・忠七が切なる願いを叶えるべく帰郷する「生国は地獄にござんす」。盗賊団頭首・角右衛門が活躍し、鬼平シリーズの先駆をなした「看板」。彼らが命を懸けてでも守りたかったもの、成し遂げたかったことは何だったのか。“男の死”をテーマに編まれた飲泣呑声の時代小説アンソロジー。
井戸警部の夢の中に、六年前に自殺した身元不明の女性が現れた。 その直後に起きた殺人事件の被害者は、夢に出てきた女性にそっくりだった(「死者は瓜二つ」)。 直美は、何度も自殺を繰り返していたが、偶然に救われていた。 そんなとき、彼女の娘がひき逃げに遭い、死亡する。 捜査に乗り出した久我山署の刑事たちは……(「死にたがる女」)。 忍耐と根気、そして巧まざるペーソス、刑事たちの知られざる生態を生き生きと描く傑作警察小説、五篇を収録。 (「真犯人(ホンボシ)」改題) 死者は瓜二つ 花の咲く遺言 尻を叩く女 アリバイ成立 死にたがる女
妻の隠された 真実を 知る勇気が あなたには ありますか? 最悪の妻をめぐる物語のラストは、 あなたの心をきっと 救ってくれる。 休日は必ず息子の友彦を連れ、調布飛行場へ行き、 ぼんやりと過ごす三井田久志。 実は彼はジェット旅客機のパイロットだったのだが、 ある事情から乗れなくなり、今は長距離トラックの 運転手をしている。 ある日、関西で起きた女子大生誘拐事件の 犯人の声をラジオで聞いて、愕然とする。 それは、息子を置いたまま、蒸発した妻の声だった。 彼は、息子を隣人に預け、妻の行方を捜すそうとする。 第一章 誘拐の声 第二章 追跡の眼 第三章 暗黒の血 第四章 着陸の顔
すべては雨宿りから始まった。一人旅で岩手県遠野市を訪れた奈良井律子は、豪雨を避けて駆け込んだ小屋で、三人の女性と知り合った。雨がやんだ後も行動を共にした四人は、胸を刺された男に遭遇するが、巻き込まれるのを恐れて見殺しにしてしまう。共通の罪を背負った四人は、次々に自らの秘密ー殺したい人間がいることを告白する。やがて一人が“交換殺人”を提案し…。
亡き妻の命日に妹まで喪うとはー弁護士、波多野丈二の妹は世間を震撼させる連続猟奇殺人の五番目の犠牲者となった。被害者の遺体には一様に、局部に異物が挿入され、顔や胸に赤い塗料が吹きつけられていた。妻と妹、そして被害女性にある共通点を見つけた波多野は、事件を調べ始める。しかし、そんな彼を嘲笑うように第六、第七の殺人が…。歪な愛を描く長編ミステリー。
着流しに三つ紋つきの黒羽織を重ねた八丁堀の定廻り同心、暁蘭之介は、今日も韋駄天走りで江戸の町を守り抜くー。ひと房の松葉で頬を撫でながら冴える推理を閃かせ、時に心形刀流の剣で悪を裁く。人情家でありながら、目こぼしは一切許さない蘭之介は、北町奉行の信任が厚い同心であった。ある夜、奇妙な死骸が見つかった。何ひとつまとっていない若い女で、首がないのだ。謎めいた死体を検分し、身分ある武家の女と推察。探りを入れて、ある旗本の名を浮かび上がらせるが、蘭之介の太刀はすでに真の黒幕を捉えていた!成敗の一閃が、事件の驚きの全貌を見事に解き明かす。
伊豆西海岸を走行中のバスに、銃弾が撃ち込まれた。バスは海に転落し、乗員乗客二十七人全員が死亡。本件で妻子を喪った静岡県警警部補浦上達郎は、犠牲者の誰かに恨みをもつ者による犯行と睨み、亡くなった一人ひとりを虱潰しに当たるが…。犯人の狙いは二十七人のうち誰なのか。浦上が突き止めた、驚愕の真相とはー?大量殺人の謎に挑む、本格長編ミステリー。
陸進不動産の金庫から七百万円が忽然と消えた。責任を問われ、経理課の酒巻伸次と御木本平吉が解雇される。金を盗むことができたのは、酒巻含め経理課の六人のみ。納得いかない酒巻は真犯人を突き止めるべく、巧妙な罠を仕掛けるがー(「白い悲鳴」)。事件の陰に潜む哀しい人間模様を描いた四篇を収録。殺人、愛憎、裏切り、復讐…意表を突くどんでん返しのミステリー集。
熾烈な労働争議が続く「本多銃砲火薬店」の工場に勤務する、花城佐紀子の姉・由記子が、遺書を残して失踪した。社長の一人息子の本多昭一と心中するという。失踪から二日後、昭一の遺体は発見されたが、由記子の行方はわからない。殺人犯として指名手配を受けた姉を追い、由記子の同僚でもある恋人の豊島とともに佐紀子は必死の捜索を続けるが、工場でさらなる事件が起こる。第14回日本推理作家協会賞を受賞した傑作長編ミステリー。
三度笠を被り長い楊枝をくわえた姿で、無宿渡世の旅を続ける木枯し紋次郎。己の腕だけを頼りに、人との関わりを避けて孤独に生きる紋次郎だが、否応なしに旅先で事件に巻き込まれてゆく。幼なじみの身代わりとして殺人罪を被って島送りになった紋次郎が、島抜けに参加して事件の真相を追う第1話「赦免花は散った」。瀕死の老商人の依頼により、家出した息子を探す「流れ舟は帰らず」。宿場を脱走した女郎たちとの逃避行の意外な?末を綴る「笛が流れた雁坂峠」。ミステリの巨匠が描く、凄腕の旅人にして名探偵が活躍する珠玉の10編を収録。
勤務先の社長令息と心中するはずだった姉が忽然と現場から姿を消した。相手の男が死んだことで「偽装殺人」の容疑までかかる。遺書を残された妹は、姉の行方を追って東奔西走するが、そこには思わぬ結末が。卓抜したトリックに、人間の底知れぬ業を描いた笹沢左保、会心のミステリー。第14回日本推理作家協会賞受賞作品。
毎年、時代小説の年間ランキングを発表してきた『この時代小説がすごい!』。時代小説読みのプロであるその選者たちが、今回短編時代小説のオールタイムベストテンを選出。日本のすべての短編時代小説から最も面白く、かつ現代の読者に読んでほしいと願うランキング第1位の「国を蹴った男」(伊東潤)をはじめ第5位までの作品を収録。時代小説を代表する名作短編が揃うアンソロジー!
「思いきって、やったらどうなの」「何をだ」「わたしを殺すのよ」-社の常務の姪と不倫した挙げ句、妊娠させ、結婚を迫られてしまった夫。“玉の輿”を目論む夫に、妻は離婚を絶対拒否することで対抗する。はたして、夫婦の運命は…(「霧」)、ほか、全編会話だけで構成された異色の短編を6篇収録。
美濃・菩提山城の若き城主、竹中半兵衛重治は、謀略を見抜き近江・浅井氏の奇襲を撃退するが、周囲を欺くため、自らを腑甲斐ないうつけ者であるとする噂を流させる。が、一時は主君である斎藤氏の稲葉山城を占拠するほど、軍略家としての才を発揮し、美濃一国に浪きたらず乱世へと飛び込んでゆく。運命的に出会った織田信長の妹・お市への想いを胸に、黒田官兵衛に先駆けて豊臣秀吉の懐刀となった名軍師の生涯を描く長編!
織田家の寄人として藤吉郎秀吉の軍師に迎えられた竹中半兵衛は信長の意図を正確に理解し、秀吉を導いてゆく。「縁の下の力持ち」として軍師に徹する半兵衛の喜びは、自らの采配で秀吉が出世を遂げることにこそあった。が、秀吉にその思いは届かない。同じく軍師の才に恵まれた黒田官兵衛だけが、半兵衛唯一の友となる…。官兵衛とともに「両兵衛」と並び称せられ、秀吉の天下取りに貢献した男の天才と孤独を描いた傑作長編!