著者 : 笹沢左保
旧軽井沢の別荘で、資産家・西城豊士教授夫妻が死体となって発見された。場所は自宅敷地内の地下貯蔵庫。鉄扉を内側から南京錠で固定した六畳ほどの室内、夫妻は折り重なるように倒れていた。嘔吐物が散らばり一目で毒死と分かる。完全なる密室。遺書はなく、床には「WS」の文字が。心中か、あるいは殺人か。別荘で一夜を明かしたパーティ招待客は十三人。だが殺害動機も決め手がない…。本格推理の傑作。
佐賀県多久市の山中で横浜在住の画家・井坂俊介が絞殺体で発見された。死亡時刻の二日前までともに写生旅行を楽しんでいたはずの妻・レイは死んだ井坂に対し、なぜか冷ややかな憎悪をみせる。二日前、夫婦に何が?だが、容疑者としてマークされたレイには、死亡時刻、完璧なアリバイが…。佐賀県警の“落としの達人”水木警部補はレイと対決、彼女の心に潜む闇を感じるが、アリバイの壁をくずせない。さらに井坂がレイと別れた後に生じた「空白の二日間」に不審な人物が浮かぶ!完全無欠のアリバイに挑む、水木の苦悶!時代が生んだ新たなる恐怖を描く、警察推理傑作、好評第4弾。
長い五寸のくわえ楊枝に三度笠も懐かしい、上州無宿の渡世人・木枯し紋次郎が帰って来た。時は嘉永三年、股旅生活にさらに十年の歳月を加え三十九歳になった紋次郎が、十年前の浮世の義理に身を阻まれて、珍しく上州中仙道は板鼻宿最大の旅籠花菱屋に逗留し、遭遇した事件の数々。一世を風靡した孤高の渡世人・木枯し紋次郎の長脇差が翻る傑作連作小説集。
芸能誌の副編集長である小早川に、伊豆の観光ホテルへの招待状が届いた。差出し人は「海」とだけ書かれていたが、交通費が同封してあるので、ジャーナリストとしての好奇心もあり、出向くことにした。指定された部屋に入ってみると、見知らぬ4人の先客がいた。いずれもお互いの名も顔も知らないという…。不気味な招待状に隠された殺人事件解明の手がかり。
組合闘争にゆれる本多銃砲火薬店。その工場に勤める花城由記子が、遺書をのこして失踪した。社長の1人息子・本多昭一と心中するというのだ。しかし、昭一の遺体が発見されてからも、その行方は杳として知れなかった-。ついに殺人犯人として指名手配をうける由記子。姿を消した姉を追って、花城佐紀子は必死の捜索をつづけるが…。本格、社会派、サスペンスの見事な融合。ロマンにあふれた作風で、笹沢ミステリの原点をなし、第14回日本推理作家協会賞を受けた傑作長編。
夫以外の男に、初めて女の歓びを教えられた大信田倫子。彼女は、秘密の情事のめくるめく予感に震えながら、今日も男のもとへ急ぐー。だが、思いもよらぬ事件がふりかかった。渋谷のホテルで人妻が殺され、現場から夫の万年筆が見つかったのだ。夫はアリバイを主張するが、証人が出現。倫子は夫の潔白を証明すべく奔走し始めたのだが…。驚愕の真相。
一流商社マン松平京一郎は、人気歌手マヤと結婚し幸せの絶頂にあった。引退し、家庭に入るマヤは、芸能界の匂いのない慎ましい女性。新婚生活は順調にすべり出したかに見えた。だが、マンションの真下の部屋の主婦が殺されたその日から、マヤはタバコや酒の臭いを身に染み込ませ、人が変ったような言動をとり始める。やがて、京一郎に小さな疑惑が芽生えたー。
湯島・妻恋坂の親分は、勘もはたらきゃ、渋川流柔術の達人で腕力も滅方強い。下手人を取り逃がしたことがないという凄腕の十手持ちだ。ところが冷酷で非情なお調べが嫌われて、いつしかついた名前が「疫病神」。疫病神呑太大江戸補物控。
8月25日、静岡県由比町で発見された小松原功・美子夫妻の死体に駆けつけた捜査陣は当惑した。状況としては心中なのだが、28日から新婚旅行の予定だったことや美子がハンカチに口紅で“昌二郎あなたにも…”という謎の言葉を遺していたからである。美子の言葉から事件に巻き込まれた美子の従兄でフリージャーナリストの天知昌二郎は夫婦の不可解な結びつきに疑問を持ち、2人の過去を追った。
千谷エーガ精機社長の千谷大伍は、高校生の愛娘奈美子を誘拐され、1億円を要求された。大伍は、娘が普段から慎重なこと、脅迫電話での機転を利かした応答から、犯人が自分の異母弟東吾と看破した。東吾は素行の悪さと浪費癖で、千谷家を追放されていた。大伍は、この骨肉の醜聞を避けるべく、極秘裡に事態収拾へと動いた。だが、家族の苦悩をよそに、同家の嫌われ者である長女志津江のみが冷酷な反応を見せていた。やがて救出された奈美子は、暴行を受けてはいたが婚約者も決まり、千谷家は平和を取り戻したかに見えたのだが…。推理文壇の重鎮が、著作3百冊突破を記念して読者に贈る渾身の推理傑作。
運命・宿命が、想像もできない結末を描き出す「真知子の決心」、男女が官能の姿態を晒す「情事の絵本」、怪奇色濃い「蚊帳の中」、推理小説の手法が存分に駆使された「殺人計画」…。巧妙なドンデン返しと、機知や工夫が随所にほどこされた結晶の数々。待望された、著者唯一のショートショート集。
一人娘の香織(3歳)が誘拐され、父親の夏八木鉄人に「お前が自殺すれば娘を解放する」という脅迫状が届いた。誘拐犯は自分の妻が夏八木に殺されたと誤解し、彼の生命と引替えに娘を返すという。香織を救うには、48時間以内に真犯人を突きとめるしかない。刻一刻迫る娘の危機。息づまる長編推理小説。
首から下げた天宝通宝を守り銭とした二本桐の武吉は、右肩に負った刀傷を癒すため、信玄の隠し湯として知られる下部温泉に逗留していた。そこへ勘助と名乗る男が現われ、武吉の恩人・野州越堀の仁五郎親分が危ないと告げた。しかも一人娘お絹は心細さのあまり〓@4AC3れ果てているという。傷が癒えぬまま、武吉は一路、奥州街道越堀宿をめざしたが、そこには思いもよらない裏切りが待っていた…。(「雪に花散る奥州路」より)陰謀渦巻く街道に、女のために命を賭ける男たちを描く傑作時代小説。
福井県大野市。旧家の令嬢・野路真利子は、今、死が間近にあると信じていた。この10年間に、両親、兄、姉と8人もの身内が変死を遂げたからだ。昔、祖母に聞かされた“柴田勝家の怨霊にたたられた家”というのは本当だった、と。だが、真利子を愛する御園生光也は、“祟り”の陰に隠された真相を究明すべく…。長篇サスペンスミステリー。
主君織田信長からその政治的・軍事的手腕を高く評価されていた明智光秀は、天下人を自認する信長の増長をひそかに憂えていた。意に添わぬ者たちに対してはおびただしい殺戮をくりかえし、古参の重臣さえも些細な理由で追放する信長。しかし諌言は受け入れられず、いつか光秀の心は信長から遠ざかっていく…。逆臣の汚名を覚悟で主君を弑逆した悲運の智将の内面に迫る長編小説。
「死罪」「遠島」に次いで重い刑罰「重追放」の裁きをうけ、あてもなく彷徨う九鬼真十郎。唯一の友は物いわぬ白犬。伊勢街道から伊賀街道へ入った真十郎はその晩、庄屋の家に草鞋を脱いだが、笠取峠に三本足の狐が出て何人もの旅人が命を落したという。翌朝、笠取峠への道をとった真十郎だが、峠にはなんと旅人の死体が。すれ違ったのは左手の無い白装束の女。女は果たして狐なのか…(表題作)。好評時代連作。
真田幸村など大坂方の凄まじい戦いぶりに、一時は東軍の本陣も総くずれとみえた。しかし老獪な家康は、淀君をまどわして城内の約束をみだす。落城に臨んだ猿飛佐助は、ある秘密を抱いて脱出を試みた。完結編!長編時代小説。
つにい十番目の勇士望月六郎もそろい、十勇士の大活躍が始まった。密命を帯びて薩摩へ向かう猿飛佐助の行く手をさえぎる甲賀流忍者群。一方、家康は方広寺の鐘銘を種に、豊臣方に圧力をかける。物語白熱。