著者 : 篠綾子
黒船来航の翌年、この国を次々と災厄が襲った。異人憎しの声が高まる中、伊豆国戸田村の船大工・平蔵は、難破したおろしあ人の船の造船世話係補佐役を命じられる。平蔵もまた彼らを忌避していたが、おろしあの人々の温かい心に触れ、次第にその考えを改めていく。だがその一方で、異人を斬って攘夷を成そうとする志士たちが、暗躍し始めていた。そこには、二十年前に生き別れになった平蔵の幼なじみ・士郎の姿があった。交わらぬ道を歩む二人が再会するとき、彼らの運命はー。己の信念を貫き、恐れず生きるとはどういうことか。今の世を生きる我々の明日をも照らし出す、傑作時代小説!
「美濃の蝮」の異名で恐れられた斎藤道三の娘・帰蝶は、密かに従兄・明智光秀に好意を寄せていた。しかし、隣国である尾張との衝突を避けるため、織田信長との縁談が進められることに。故郷に心を残しつつ嫁いだ帰蝶、信長、そして光秀…それぞれの運命は複雑に絡みあい、「本能寺の変」へと繋がっていくー。史実を大胆に換骨奪胎し、強く、そして美しく生き抜いた女性を鮮やかに描く時代小説。
さつきたちの前から突然姿を消した駒三が一年ぶりに万葉堂に帰ってきた。駒三は自分がかつて「蛇の目」の一味であったこと、また、蛇の目が平野屋から盗み出したある重大な書物についてさつきたちに話をする。ちょうどその頃、その肉が万病に効くという「人魚」の噂が江戸に広まる。体調を崩したおよねの身を案じる両親は喜重郎たちにその探索を依頼するのだがー。書物に記された暗号を読み解くことで、自分の人生を翻弄したある重大な陰謀を明らかにしたさつきは、己れの信じる道を読売で貫こうと決意する。そして物語は感動の終幕を迎える!
立秋を迎え、照月堂でも秋ならではの菓子を出し始めた矢先のこと。なつめは、店前の仕事を一人で切り盛りする番頭・太助に、疲労の色が滲んでいることに気づく。そんな折、太助をますます疲れさせる客が現れた。かつて、上野の菓子舗・氷川屋と競い合いをしたときに判定役だった無役の御家人・陶々斉だ。陶々斉は、競い合いの際に久兵衛が作った菓子を食べたいと駄々をこねる。一方、好調だった氷川屋の商いが下り坂となるなか、互いに惹かれ合う氷川屋の職人・菊蔵となつめの関係はー。物語がいよいよ動き出す、大好評シリーズ第六作。
長承三(1134)年。父を亡くした11歳の藤原忠雅は、白い花を携えて末茂流への婿入りの日を迎えていた。手に持つのは、明け方から夕方にかけて色を少しずつ変化させる酔芙蓉。その邸で完璧なまでに整った容貌を持つ美少年・藤原隆季と出会う。低い家柄である隆季は、やがてその美貌ゆえに権力者の我欲に翻弄されていく。だが龍のごとき男・平清盛と盟を結び、隆季は家のため出世の階段を登り始める。そして平安末期の「保元・平治の乱」。高貴な家柄を持つ男と類い稀なる美貌を持つ男の運命は。
主・久兵衛の主菓子が幕府歌学方に気に入られ、照月堂は躍進の兆し。来たる夏に向けての主菓子も所望され、久兵衛はなつめにも案を出すよう言いつける。自分に新たな菓子など考え出せるのかと緊張しつつも、なつめはさっそく思いを巡らし始める。そんな折、照月堂では、出入りの薬売りの子を数日預かることとなった。ところがその富吉、妙になつめに懐いてくる。不思議に思っていたなつめだったが、ある時富吉が口にした「けいさま」という名を聞いて、驚き、動揺して…。続々重版の大人気時代小説シリーズ、第五巻!
さつきと喜重郎は、およねが黒鳶式部の名で書いた黄表紙を紹介する瓦版(読売)を刷って好評を得る。そんなある日、姿を消したままの駒三が自分の兄ではないかという男が訪ねてくる。その男、清右衛門はその後も万葉堂にやってくるようになった。清右衛門が、盗賊団「蛇の目」の一味が瓦版を連絡に使っているらしいと話したことから、さつきと喜重郎は瓦版から得られた手がかりを同心に知らせたのだが…。「蛇の目」捕縛に繋がる情報は見つかったのか?そしてさつきと伝蔵、およねと喜重郎、それぞれの仲は進展するのか。シリーズ佳境となる、注目の第三作!
照月堂の主・久兵衛の菓子作りの才に対して、警戒を見せる上野氷川屋の主人・勘右衛門。久兵衛の味を盗もうとしてか、久兵衛の弟子で、先ごろ自分の店を開いたばかりの辰五郎を引き抜こうと、卑怯な策を仕掛けてくる。そんな父のやり方を憂う氷川屋の跡取り娘・しのぶは、友であるなつめや照月堂の皆に顔向けできないと意気消沈していた。なつめは元気を出してほしくて、しのぶとある約束をしてー。大人気書き下ろし時代小説シリーズ第四巻。
川越藩筆頭家老の息子・小河原左京は、学問剣術いずれにも長け、将来を嘱望される13歳の少年。ある日、城下の村の道場で自分と瓜二つの農民の少年と出会ったところから、運命の歯車が大きく動き出すー。幕末の川越藩を舞台に、激動の時代と数奇な運命に翻弄されながらも、己に誠実に、まっすぐ生きようとする若者たちを清冽に描き出した青春時代小説の永遠のスタンダード、誕生!
さつきは、二号目の瓦版(読売)に近所での窃盗事件を取り上げた。犯人が「あやかし」だという読売に対抗して真犯人が分かるように書いたため、逆恨みした犯人によって兄の喜重郎が刺されてしまう。次の号に盗賊団「蛇の目」のことを書こうかと考え始めるさつき。しかし、同業である日吉堂の伍助と栗橋靱負からは「蛇の目のことを書くな」と言われてしまう。その頃、さつきの親友およねは“黒鳶式部”という筆名で黄表紙作家としてデビューし、これまでの熱い胸の内を喜重郎に伝えるのだが…。一方、さつきは伝蔵への恋心を伝えられずにいた。シリーズ第2弾!
母と兄とさつきで営む万葉堂。体調を崩して寝込んだ母・登勢の容体が回復しないのを心配したさつきは、蘭方医に診てもらおうと伝手を探す。ある時、偶然居合わせた若殿と呼ばれる侍が紹介状を書いてくれたおかげで、大槻玄沢に母を診てもらうことができた。その侍は、老中田沼意次嫡男である田沼意知だった。しかし、母は亡くなり、家業立て直しのためにさつきは瓦版の発行を考える。そんな折、意知が殿中で刺殺の報せが入った。殺したのは、さつきにも縁のある人物だった!さつきは、事件の真相に迫れるのか?江戸の“女性記者”を描く、シリーズ第1作!
江戸を去った蓮次の帰りを待つおりんは、さびしさから針仕事ができなくなってしまう。そんなある日、大奥入りした煕姫と再会。喜びもつかの間、大奥の派閥争いに巻き込まれそうになっていることを打ち明けられ、将軍綱吉主催の衣裳対決にのぞむことになる。一方、大老・堀田正俊が城中で刺殺され幕閣にも暗雲が…。
生意気盛りな惟喬親王のお世話をしていた、在原業平。しかし、権勢を誇る藤原良房の娘に惟喬親王の異母弟が誕生し、皇位継承を巡って暗雲が立ちこめる。やがて、親王に身の危険が迫るようになった。そのころ、親王に仕える香澄から、藤原家の陰謀が隠された和歌の秘密を暴いて欲しいと言われる。業平は、陰陽師の行貞とともに和歌の謎を解き明かすとともに、隠されていた文書を発見する。それは、藤原家の闇の歴史が記されたものだった。業平は、親王を守ることができるのか。宮中一の美男子業平と親友の陰陽師が活躍を繰り広げる、書き下ろし王朝ミステリー。
京の呉服商「更紗屋」の跡継ぎになりたくない、染師になると言って勘当され行方知れずとなっていたおりんの兄・紀兵衛。その兄と神田で再会したおりんは更紗屋再建の望みを兄に託そうとするが頑なに拒否される。そんなある日、兄の修業先・神田紺屋町で毒殺事件が起こり、その犯人として紀兵衛が捕縛される。
後鳥羽上皇から勅撰和歌集の六人の撰者の一人に任命された藤原定家。そこにある日、歌神と名乗る者から脅迫文が届く。曰く、ただちに和歌所を閉じよ。さもなくば、当代の六歌仙を一人ずつ死に至らしめるーこれは後鳥羽上皇への挑戦状なのか。当代六歌仙とは誰を指すのか。そして、歌神の正体は一体!?次々舞い込む弔歌と相次ぐ歌人の死。事件の真相に迫る為、定家は長覚の力を借りて再び謎解きに挑む!
時は元禄。京の呉服商「更紗屋」の一人娘・おりんは、将軍継嗣問題に巻き込まれ、親も店も失った。江戸へ出たおりんは、類稀な裁縫の腕を見込まれ、越後屋をはじめ大名家や旗本屋敷へ奉公に上がる。いつか店を再建するために…。人々とのかけがえのない出会いによって、美しく清らかに成長していく少女の物語。
鎌倉前期の高名な歌人・藤原定家はある日、父・俊成から三種の御題を解けば「古今伝授」を授けると言われるが、数ヶ月後、俊成は何者かに誘拐される。その目的は一体どこに?鍵を握るのは御題の暗号解読。美貌で毒舌の僧侶・長覚と、紀貫之と同じ紀氏の血を引く少年・潮丸と協力して、父・俊成の救出に奔走する定家。伝統的な和歌の修辞法と謎合わせをモチーフに公家社会の権力の闇に迫る、平安鎌倉ミステリシリーズ開幕!
五代将軍後継問題で世界が騒いでいた頃、父を亡くした京の呉服屋の一人娘おりんは、叔父を頼り、江戸へ出た。が、江戸の店はすでに閉じ、叔父夫婦と三人で長屋に暮し始めた。身に付けた裁縫の腕で日銭を稼ぎ、ひょんな事から、日本橋の越後屋の主と関わりを持つことになった。果しておりんは店を再興できるのか。