著者 : 緒川久美子
母から亡くなった父の息子ではないと知らされたブロンプトン侯爵は、自暴自棄になり、正当な相続人であるマーカム卿に侯爵家の全財産を譲るため、トランプゲームの賭けでわざと負け、全財産を譲ると申し出る。マーカム卿は当然拒否、代わりに姉レディ・キャサリンとの結婚を要求する。姉は「英国一結婚から見放された女」と王太子の友人に揶揄されてから社交界に出られなくなったのだった。
貴婦人のコンパニオンを勤めるフレイアは没落した公爵家の娘で、女性だけの秘密結社「ワイズ・ウーマン」のメンバー。彼女はある調査にたずさわっていたところ、ハーロー公爵クリストファーに再会する。彼はフレイアの一族を窮地に立たせた「グレイコートの悲劇」に関わった者だった。「悲劇」の真相をさぐるために彼に近付くフレイア。敵である二人だったはずが、いつしか惹かれ合い……
スキャンダルに巻き込まれ、一度は社交界を去ったノラ。以来、田舎でひっそりと暮らしていたが、父親が破産したため、伯爵夫人のコンパニオンとして働くことになる。夫人は彼女を気に入り、社交界に再デビューさせると決めた。伯爵夫人の義理の息子ケンダル公爵タイタスは、義母から彼女を手助けするよう頼まれる。彼は実はノラを窮地に追い込むことになった原因で、ずっと彼女を気にかけており…。
義姉の手引きで社交界デビューしたパンドラ。しかし田舎でのびのびと育った少し風変わりな彼女は、同年代の貴族の令嬢たちの集団からは浮いていた。結婚にも興味がもてないので、舞踏会での恋のさやあてにも加われずにいる。 ただ、そんな中でもバーウィック夫人の娘ドリーだけは優しくしてくれ、彼女たちのあいだには友情が芽生えていた。そのドリーの危機を救うため、パンドラが舞踏会会場の庭のあずまやで捜し物をしていたところ、ドレスがそこにある椅子にひっかかって動けなくなる。 偶然通りがかったガブリエルが助けてくれたが、なんと服が破れてしまった。おまけに折悪しく人が通りがかり、パンドラとガブリエルはあらぬ誤解をうけることに。ガブリエルは責任をとると言うのだが!?
海洋生態学を学ぶ大学院生のアニーは、仲間と共にルイス島を訪れた。しかし、仲間たちが環境保護の名のもとにテロ行為を行うエコ・テロリストの一員であったことを知る。米軍特殊部隊の隊員で調査のために潜伏していたディーンとともにテロ行為を未然に防ぐが、テロリストから殺人の濡れ衣を着せられてしまった。こうして二人は警察とテロリストから逃れるための逃避行を続けることになるのだが……
まちがえられて秘密結社に拉致されたアイリス。人違いだと訴えても解放されず、あわや命をうばわれそうになったところを救出してくれたのは、舞踏会で一度会ったことのあるダイモア公爵だった。 彼はアイリスを救いたい、そして〈混沌の王〉の追っ手を振り切るためには、自分と結婚するしかないと言う。 こうして彼女は、ダイモアにかくまわれて暮らすことになるのだが……。
ロスで活動しているカメラマン、クリント・マッケイドはアリゾナ州フェニックスに住むサンディ・カークを訪ねた。二人は小学校以来の親友だ。共に貧しい家庭に育ったが、今やサンディは映像制作会社を経営していて、フリー・カメラマンになったクリントはエミー賞を受賞するほどの活躍ぶりだ。 何でも話せる親友の二人だが、クリントは以前から彼女を真剣に愛していた。だがそのことを告白しようとした矢先、サンディから、好きな人ができたと打ち明けられてショックを受ける。 サンディの片思いの相手は弁護士のジェームズ・ヴァンデンバーグ。上流社会に生まれ育ち、ハンサムで知性と教養に富む、非の打ちどころのない人物だ。サンディの会社が撮影を請け負うことになったキャンペーンの契約を通して知り合ったジェームズに、彼女はひとめぼれしてしまった。しかし自分からアプローチすることができない。 撮影の協力を買って出たクリントは、サンディの恋の成就のためにも手助けをしようと決心する。少年のように飾り気のないサンディを、カメラマンとしての知識とセンスで女性らしく美しく見えるようにスタイリングしたり、男心をひきつけるためのアドバイスをしたりと、こまごまと指導した。 その甲斐あって、ジェームズとサンディは接近していくのだが、やがてサンディは自分のことをいちばん思いやってくれる人がだれなのかあらためて気づき……
カイル公爵ヒュー・フィッツロイは、とある晩餐会に出席した真夜中の帰り道、暴漢に襲われた。応戦したものの、多勢に無勢で窮地に陥る。そこに現れたのが「セントジャイルズの亡霊」と呼ばれる謎の人物。屋根から屋根へと飛び移り二本の剣を操る身軽な「亡霊」はヒューを助け、キスをしたかと思うと、あっという間に姿を消した。「亡霊」は女性だった。 自分を襲わせたのは誰なのか? 晩餐会で目撃した密書のやりとりが関係しているのか、あるいは謎の秘密組織〈混沌の王〉が黒幕なのか、ヒューには判断がつかない。調査を進めるため、セントジャイルズの情報屋の少年、アルフを呼び寄せる。 ところがこのアルフこそ、セントジャイルズの亡霊だった。女性であることを隠し、男装することで身を守って貧民窟で生き抜いてきた彼女は、正体がばれたのかとあやぶみながら公爵に会いに行く。そして仕事の依頼だとわかって、少し落胆しつつ聞き込みを開始したところ、彼女もまた暴漢たちに襲われて重傷を負ってしまい……。
パーティでのお披露目を目前にして、婚約解消したいという手紙を受け取ったクレア。なんと婚約破棄はこれで4回目。クレアのせいではなく、婚約者の身の上にいつも何かが起きるのだ。すでに社交界では「レディ・クレアの呪い」と言われている。 途方に暮れるクレアの前に元婚約者ポールの幼なじみであるアレックスが現われ、「力になりたい」と言う。不審に思うクレアだが。 実はアレックスはクレアたちの結婚を阻止することで、ポールへの復讐を果たそうとしていた。そこでポールの借金の借用書を買取るかわりに婚約を解消させたのだ。 アレックスは、勝手に自分とクレアの結婚を宣言し、「破産寸前の放蕩者から彼女を守りたい」と言い出したが、いったい!?
NYタイムズ、USAトゥデイ紙ベストセラーリストの常連作家、ついに日本上陸。 名門貴族の令嬢デボラは12歳のとき、ロクストン公爵家の跡取り息子オールストン侯爵ジュリアンとひそかに結婚させられた。だが真夜中のことだったので、デボラはよく覚えておらず、夢だとさえ思っていた。 8年後、デボラは貴族の体面を重んじてばかりの家を飛び出し、亡くなった兄オットーの遺児の世話をしながらバースで暮らしていた。ある日、決闘をして傷を負った美しい青年を森の中で助ける。その青年こそ、長くイングランドを離れていたジュリアンだった。彼は8年前の結婚を本当のものにし、跡継ぎを作るために帰国したのだが、互いの素性を知らないまま惹かれあう二人。やがてジュリアンは自分が探していた結婚相手がデボラだと知るが、素性を隠したまま結婚する。 愛に満ちた幸せな新婚生活を送っていた二人だが、ある日ジュリアンの正体が放蕩者と噂されるオールストン侯爵であることと、8年前の出来事をデボラは知らされる。大きな秘密を隠されていたことにショックを受け、彼との愛が信じられなくなるが……
大人気《メイデン通り》シリーズ第10巻。 若くして、女性使用人の管理職であるハウスキーパーの地位に着いたブリジット。仕えているモンゴメリー公爵バレンタイン・ネイピアはギリシャ彫刻のように美しいが、放蕩者で邪悪な人物だと噂されている。 ブリジットがバレンタインに仕えることになったのは、彼が屋敷に隠している秘密の品々を見つけて運び出すという使命を負わされ、送り込まれたためだった。 その品をもとに、貴族たちが脅迫されていると聞いている。そして秘密を握られた人々のひとりには、彼女の産みの母もいた。 あるとき、屋敷のなかを探しまわっているところを、公爵に見つかってしまったブリジット。 使用人とは思えない気品と知性のある彼女に興味を抱いた公爵は、処分を言い渡すことはなかったが、なにかと挑発してくる。 誘惑にとまどいながらも、彼のさりげない優しさやユーモアに触れ、ブリジットはだんだんと会話する時間を楽しみとするようになった。 はじめは冷たい人物に見えたモンゴメリー公爵だが、腹違いの妹をいつも気にかけ、慈しんでいるのをブリジットは知る。脅迫にみえた行動も、妹のためにある狙いをもって行っていたことだった。 兄妹はともに幼少の頃に過酷な体験をし、助け合ってそこから生き延びたという絆があった。 また、公爵もブリジットの出生の秘密を知り、彼女が大人たちの都合で人生を左右されてしまったことに憤る。 心の傷を癒やし合うように、二人は引かれあってゆくのだが……
「ロンドン一美しい男」とタイムズ紙にも書かれたマンウェアリング侯爵セバスチャンは、悪運にみまわれている。舞踏会でほんの戯れで言葉をかけた令嬢に追いかけ回され、辟易して国外に逃げていたが、2年たって帰国してもまだ騒動は終わらなかった。ストーカー令嬢は妊娠しており、お腹の子の父はセバスチャンだと言い張ったのだ。あげくの果て、身に覚えのない嫌疑のために決闘に引きずり出されるという運のなさだ。 放蕩者と後ろ指をさされ続けるセバスチャンだが、ずっと想い続ける女性がいた。音楽会でピアノソナタを弾きこなす彼女を見て恋におちたが、意中の人はおじの年若い妻キャサリンだと知って、情熱をしまいこんできた。その後おじは亡くなったが、醜聞まみれの自分は嫌われていると思い込んでいる彼は、キャサリンに近づけない。 いっぽうキャサリンは、自分に自信がなくひきこもりがちな性格だ。折り合いの悪い父から逃れたいばかりに、かつて歳の離れた夫との縁談に逃げ込んだ。華やかなセバスチャンに気後れしていたが、彼と思いがけず接近することになり、意外な一面を知るようになって、彼女のかたくなな心もほどけていくが……
公爵の妹フィービーには、トレビロン大尉が護衛として常に付き添っている。 トレビロンは、目が不自由なフィービーが明るく前向きに生きている姿に心惹かれていた。 ある日、外出先でフィービーが何者かにさらわれてしまう。間一髪で彼女を救い出せたものの、責任を感じて辞職を申し出るトレビロン。 フィービーはその時、身も心も守られていたことに気づく。 ところが、トレビロンが彼女の前から立ち去った数日後、再びフィービーは誘拐されてしまった。それを知ったトレビロンは……!