著者 : 花村萬月
太平洋戦争。農村で起きた悲喜劇。靜と綾。上槇ノ原で生まれた双子の姉妹には不思議な力が宿っていた。天才的な頭脳と統率力を持つ靜。絶対に死なない綾。そんな二人が成長したとき、太平洋戦争が勃発する。食料が枯渇した村は強烈な飢えに襲われ、打開策として靜がとった行動は、長年対立してきた下槇ノ原への襲撃だった。戦火の中、二人が人々を導く先は天国か地獄かー。今、世界で何が起きているのか。数多の文学賞を受賞し、多くの小説家に影響を及ぼす日本文学界の異端児が戦時下の極限状況を活写する。
信長絶頂期。嵐で破壊し尽くされた離島に巨大南蛮船が漂着。船内には無数の棺、そして一人の赤子がいた。島の網元・利兵衞はその赤子を「姫」と名付け育てる。たちまち美しく育った「姫」は人外の存在であり、特殊な能力が備わっていた。利兵衞の小さな夢を叶えるべく、「姫」は自らの力で支配者たちを操り、異形の仲間と旅をし、各地で凄絶な戦闘を繰り広げていくー。「姫」とは何者?日本で何を為そうとしているのか?
“骨髄異形成症候群”発症から骨髄移植、GVHD、間質性肺炎、脊椎四ヵ所骨折へと到る治療の経過を観察しつづけた作者自身による満身創痍のドキュメンタリー・ノベル!
気付けば無人の車両に乗っていて、わけもわからず上槇ノ原へとたどり着いた省悟。癖のあるどこか愛くるしい住民達と共に生活をするうち、省悟は郷にとってなくてはならない存在となった。ある日、省悟は上槇ノ原と下槇ノ原の抗争に巻き込まれてしまう。古より続く上下抗争だった。そんななか省悟は「夜半獣」として圧倒的な力を得ると共に、村民から敬われる存在となり…。夢か現か、異世界での戦争が始まった。
古く蝮を「くちばみ」と呼んだ。鋭い毒牙を持つその長虫は、親の腹を食い破って生まれるというー。時は戦国、下剋上の世。母に見捨てられ、父の油売りを手伝い、どん底から這い上がった峯丸は、いつしか国盗りの野望を抱くようになる。狙うは天下の要・美濃国。調略と誑かしで政敵を次々に抹殺し、主君の土岐頼芸をも追放する。だが、その頃、息子義龍の胸中には、父への嫉妬と憎悪が渦巻いていた…。「美農の蝮」と畏れられた乱世の巨魁・斎藤道三が義龍に命を絶たれるまでの父子の相克を、芥川賞作家・花村萬月が描ききる。戦国大河小説の最高傑作、ついに誕生!!
那覇で占い屋を営む崎島乙郎。彼の運命は超常的な力を宿した美少女・仲村ヒカリとの出会いで一変する。彼女のアイデアで、崎島は霊感がある者を募り“ユタの館”を開業、一躍注目スポットに。だが、突如海から上陸した人ならざるもの・マリンコーに盛況はかき消された。国境を越えて無差別殺戮を開始したのだ。荒廃した世界を生き抜くため、残された人々の狂騒は激化するばかり。極限状態の果て、崎島たちはヒカリに隠された大いなる秘密を知り…。
画家の子に生まれた鮎子は幼い頃からその才能を現し、油画で東京藝術大学に入る。ある日、大学の裏山で“イボテン”と名乗る奇妙な男と出会い、そのまま身体の関係を持つことにー。芥川賞作家が白血病と闘いながら紡いだ愛と生の物語。
都内随一の偏差値の低さを誇る高校で退屈な日々を送っていた伊織は、同級生の針生とともにロックバンドを組むことに。“ニードルス”のボーカルとして針生の天性の「声質」が注目される一方で、針生との絶望的な才能の差にも気づかされていく伊織。人気獲得のための演出は過剰となり、やがて針生が薬物に依存していく姿を見て伊織はー。
朝倉桜は京都の私立校に通う高校生。同級生の「モーゼ」こと百瀬は天才ギタリストとしてもてはやされ、既にプロで活躍中だ。学校に居場所を見いだせなかった桜は、モーゼの影響でギターに触れ、「世界が変わる」。音楽の虜になった桜は高校を中退。モーゼ率いるバンド「モーゼス」に加入。プロのミュージシャンになると決意するが…。熱情、誇り、挫折、恋慕ー青春の全てがここにある。心を掻き鳴らす、珠玉の青春音楽小説。
時は戦国、下剋上の世。京都・相国寺近くにある三好家の屋敷に、その男はいた。得体の知れぬ出自でありながら、茶の湯に通じ、右筆として仕える野心家である。気に食わぬ者は容赦なく首を刎ね、殺害した女を姦通し、権謀術数を駆使して戦国大名へと成り上がっていく。織田信長ですら畏れた稀代の梟雄・松永弾正久秀を突き動かすものは、野望かそれとも…!?「悪とは何か」を問う新感覚時代小説。
過食嘔吐を繰り返す小説家志望の自称モデル・宮島弥生を描いた前作『浄夜』の登場人物だった舎人憲夫。果たして彼は弥生の想念のなかから生みだされた妄想なのか、それとも…。虚構と現実を行き来する舎人の“M”を描いた哲学的小説。
信長は、なぜー。桶狭間の戦いで「敦盛」を舞ったのか。徳川家康と同盟を結んだのか。藤吉郎を重用したのか。長篠の戦いで武田に勝てたのか。比叡山を焼いたのか。そして、わずかな手勢で本能寺へと向かったのか。その答えは「私記=日記」にある。本能寺に至る生涯とその実像に迫る、花村歴史文学の衝撃作、遂に完結。
史上最凶の日本人、織田信長。社会の変革者にして、万を超える民を殺した虐殺者。俺は屍を越えてゆくー地獄をも怖れなかった男の生涯にちりばめられた“謎”を、作家の想像力で繋ぎ、浮かび上がる「人間」の姿とは?吉法師を名乗った幼少期から尾張統一までを描いた、花村文学の衝撃作、遂に文庫化。
家庭には無縁と思い込んでいた小説家の愛葉條司の考えは、娘・愛の誕生で一変する。妻の志帆と共に成長を愛しく見守る日々の中、己を必要とする存在があることを知ったのだ。だが、愛が間もなく三歳になるころ、異変は突如降りかかる。その引き金は志帆の抱える深い闇だった…。親と子、妻と夫、男と女。流れていく生の中で逃れえぬ関係を鮮烈に描く衝撃の長編。