著者 : 草鹿外吉
心優しき怪獣は歌う、《人間》のためにーー 《人間》が怪獣をつくりだしたーー合金の骨格に緑色の人工血液、生肉を動力源とする鉄製の怪獣17Pは、削岩機で地中を自由に動きまわり、また拙いながら人間のことばも話した。20年の歳月を費やして怪獣を創造した《人間》--有名な設計家は、自ら怪獣に乗り込み、地下潜行試験を繰り返していた。人々は彼を称え、首相は《人間》に怪獣創造者の称号と勲章を与えたが、彼の関心は地位や名誉ではなく、科学と人類の可能性に向けられていた。一方、市内では労働者のストライキが発生、これを武力で鎮圧した首相は国家総統となり、独裁体制を推し進める。政治とは距離をおく《人間》も無関係ではいられなかった。独裁者の総統が彼にあたえた運命とは?「旅に出る時ほほえみを……二度と帰らぬ旅だもの……」人の痛みを知る鉄製怪獣の歌う声が心に響く、現代のおとぎばなし。
革命前夜のロシアに咲いた暗黒の幻想 南極大陸に建設された新国家の首都〈星の都〉で発生した奇病〈自己撞着狂〉。発病者は自らの意志に反して愚行と暴力に走り、撞着狂の蔓延により街は破滅へと向かうーー未来都市の壊滅記「南十字星共和国」。15世紀イタリア、トルコ軍に占領された都市で、スルタン側近の後宮入りを拒んで地下牢に?がれた姫君の恐るべき受難と、暗闇に咲いた至高の愛を描く残酷物語「地下牢」。夢の中で中世ドイツ騎士の城に囚われの身となった私は城主の娘と恋仲になるが……夢と現実が交錯反転する「塔の上」。革命の混乱と流血のなか旧世界に殉じた神官たちの死と官能の宴「最後の殉教者たち」など、全11篇を収録。20世紀初頭、ロシア象徴主義を代表する詩人・小説家ブリューソフが紡ぎだす終末の幻想、夢と現、狂気と倒錯の物語集。アルベルト・マルチーニの幻想味溢れる挿絵を収録。 序文 地下牢 鏡の中 いま、わたしが目ざめたとき…… 塔の上 ベモーリ 大理石の首 初恋 防衛 南十字星共和国 姉妹 最後の殉教者たち 解説
敗戦。混乱と飢餓の中に、悩みつつも爽やかに輝く春青群像。新しい社会へ踏み出していく若い恋人たち、希望を抱いて働き学ぶ若者の群れ。折しも、ゼネストに立ちあがる労働運動のうねりが彼らをつつむ…。新生日本への息吹きと旧体制の崩壊をダイナミックに描く長編。