著者 : 草鹿外吉
“人間”が怪獣をつくりだした。合金の骨格に緑色の人工血液、生肉を動力源とする鉄製の怪獣17Pは、前肢の鑿岩機で地中を進み、また拙いながら人間のことばも話した。怪獣を創造した科学者、“人間”は自ら怪獣に乗りこみ、地下潜行試験を繰り返していた。一方、市内で発生したストライキを鎮圧した国家総統は独裁体制を推し進める。「旅に出る時ほほえみを…」金属製の怪獣の歌う声が心に響く、現代のおとぎ話。
革命前夜のロシアに咲いた暗黒の幻想 南極大陸に建設された新国家の首都〈星の都〉で発生した奇病〈自己撞着狂〉。発病者は自らの意志に反して愚行と暴力に走り、撞着狂の蔓延により街は破滅へと向かうーー未来都市の壊滅記「南十字星共和国」。15世紀イタリア、トルコ軍に占領された都市で、スルタン側近の後宮入りを拒んで地下牢に?がれた姫君の恐るべき受難と、暗闇に咲いた至高の愛を描く残酷物語「地下牢」。夢の中で中世ドイツ騎士の城に囚われの身となった私は城主の娘と恋仲になるが……夢と現実が交錯反転する「塔の上」。革命の混乱と流血のなか旧世界に殉じた神官たちの死と官能の宴「最後の殉教者たち」など、全11篇を収録。20世紀初頭、ロシア象徴主義を代表する詩人・小説家ブリューソフが紡ぎだす終末の幻想、夢と現、狂気と倒錯の物語集。アルベルト・マルチーニの幻想味溢れる挿絵を収録。 序文 地下牢 鏡の中 いま、わたしが目ざめたとき…… 塔の上 ベモーリ 大理石の首 初恋 防衛 南十字星共和国 姉妹 最後の殉教者たち 解説
敗戦。混乱と飢餓の中に、悩みつつも爽やかに輝く春青群像。新しい社会へ踏み出していく若い恋人たち、希望を抱いて働き学ぶ若者の群れ。折しも、ゼネストに立ちあがる労働運動のうねりが彼らをつつむ…。新生日本への息吹きと旧体制の崩壊をダイナミックに描く長編。