著者 : 荒崎一海
元柳橋芸者ばかりが店子の貸家をいとなむ信兵衛が、若い囲い女と死んでいるのが見つかった。相対死か殺しか、北町奉行所定町廻りの喜平次は、覚山に疑念を持ちかける。一方、人気芸者友助に惚れている船頭の松吉は、落籍話を耳にしてすっかり落ちこむのだった。深川人情シリーズ第四弾!
芸者がゆきかう花街の用心棒として頼りにされる九頭竜覚山。三人の刺客に、刃引の脇差と樫の八角棒で対するが、手疵を負い、妻よねに心配をかける。同じ夜、殺しが二件あった。一件は辻斬。袈裟懸けの一刀。もう一つは強盗。寺町通りの料理屋の若旦那が殺された。深川人情シリーズ、第三弾!
深川の大店両替屋の娘が蓬莱橋から身を投げた。日本橋の両替屋との祝言を控えた評判の小町娘だった。その夜、二件の押込み強盗があり、独り暮らしの妾と質屋の七名が殺されたと、九頭竜覚山は北町奉行所の柴田喜平次から聞く。覚山は、雨の夕刻、大店の娘がひとりでいたのが気にかかった。
雲州松江の粋人大名松平治郷の気まぐれで、学問一辺倒だった九頭竜覚山は、門前仲間に仮寓することになった。この堅物兵学者に、深川一の売れっ子芸者米吉が惚れたのだから、わからない。料理茶屋万松亭の主に、覚山は通りの用心棒をたのまれる。ある夜、料理茶屋青柳で芸者が殺された!
新月の夜、屋台で十六文の二八蕎麦一杯を仲良く食べていた幼い三人がそろって大川に身を投げた。たがいの袖に腕をいれ、けっして離れまいとする三人。あまりの出来事に江戸じゅうが嘆いた。一方、隼人は叔父の老中松平和泉守に呼ばれ、新たな密命を受けるが、帰路、またしても忍に襲われる。
晩春三月二十九日の江戸は厄災の夜となった。一晩で五組七人の死。屋台の蕎麦売り、材木問屋と深川芸者、旗本、屋根船の若い男女、そして柳橋芸者の小菊…。おまえが殺したようなものだ。おのれを責めながらも、隼人は複雑にからみあう謎に立ち向かう。誰が何のために小菊を殺したのか?
松平和泉守の京都所司代時代に、家臣小野大助が嫁にせんと望んだ商家の娘が、江戸に戻った大助を慕って深川の下屋敷を訪ねる。だが、辻斬に遭って死んでいた。娘は大川に身を投げる。ところが、下屋敷の小野大助は江戸を離れたことはないという。和泉守の甥、隼人はからみあう謎を追う!
公家の姫とのあいだに生まれ、人知れず伊豆下田の山里で剣の師無心斎に育てられた宗元寺隼人。齢三十四。京の尼庵で父の菩提を弔う母に会うも、江戸に向かう鈴鹿峠で手裏剣の山伏に襲われる。異変を報せた弥生も手裏剣で応戦!さらに隼人は、林で刺客たちに追われた武家の娘を救うのだが!?
たびかさなる刺客の襲来。霞幻十郎は見えざる敵の意図をはかりかねていた。叔父の南町奉行池田長恵の失脚が狙いなのか。未然に防いだ岡山池田家への強請を仕掛けたものの遺恨なのか。さらには、黒狐一味らしき押込み強盗についての助勢を、南町奉行所の面々に求められる。剣客にして名君の血をひく霞幻十郎が、鞍馬流の剣で刺客を斃し、謎を解く痛快時代小説。
鷹森真九郎は、城下の羨望の的である雪江を妻にして、ひそかに今治藩を出奔する。江戸の片隅でつつましやかに暮らしはじめた二人だったが、ある人物の命を救ったことから、次々と襲いくる刺客たちと刀を交えることになりー。特別書き下ろし短編『祝言(一)』を収録。
新妻・雪江との平穏な暮らしを望む鷹森真九郎は、はからずも江戸に暗躍する組織から命を狙われることになってしまう。人を斬る悲しみに沈む真九郎だが、ついには、雪江にまで危難が及ぶにいたり、自らの運命を受け入れる覚悟を固める。悲哀の剣が舞うシリーズ第二弾。
将軍の食事を調理する御膳所御台所人の三男坊。ゆえあって、恋女房と町家で暮らし一膳飯屋を営む。庖丁さばきも鮮やかに供する料理は逸品揃い。ひとたび剣を抜けば、無海流の遣い手。-山谷堀を舞台に、江戸の味と人情がたっぷり香る最新作。