著者 : 荻原浩
誰の人生にも罪はあり、罪の理由は人生にある。神森で5歳のASD児・真人が行方不明になった。無事に保護されるが「クマさんが助けてくれた」と語るのみ。真人の母でシングルマザーの岬は、バッシングに晒されている。真人の叔父・冬也の懸命な調査で、4人の男女と一緒にいたことは判明するが、空白の時間は完全には埋まらない。森での邂逅が導く未来とはー。誰もが抱く、拭えない過去を浄化に導く、癒やしの書。
ある朝、通勤と反対方向の電車に、魔が差して乗ってしまった。山の中をさまよい、戻ってくると、誰もマスクをしていない!似ているが…ここは私の世界じゃない。コロナ禍の行動制限中に日経連載。迷い込んだ異世界が現実を先取り?
農業なんてかっこ悪いと思っていたー父親が倒れ、やむなく家業の農業を手伝う恵介。両親は知らぬ間にイチゴの栽培にも手を出していた。農家を継ぐ気はないが目の前のイチゴをほうっておくことはできない。一方、東京においてきた「農業反対」の妻との間にミゾができ始め…富士山麓のイチゴ農家を舞台に、これからの農業、家族の姿をみずみずしく描き出す感動作。
コーラルブルーの海に囲まれ、亜熱帯の緑深い森に包まれている“日本でいちばん天国に近い島”志手島。その島で世界最大級のカマキリが発見された。『びっくりな動物大図鑑』を執筆中のフリーライター・藤間は取材のため、現地へ向かう。だが、楽園とは別の姿が…。
一家の大黒柱・花菱清太郎が家族全員を巻き込んで始めたのは、『レンタル家族』という商売。行く先々で依頼人の理想の家族を演じるものの、失敗につぐ失敗で借金はかさみ、家計は火の車に。やがて住む家すら失った花菱家の六人は、それぞれ別の道を歩み始めるが…。笑いと涙が詰まった荻原作品の“原点”ともいえる傑作家族小説。
店主の腕に惚れて、有名俳優や政財界の大物が通いつめたという伝説の理髪店。僕はある想いを胸に、予約をいれて海辺の店を訪れるが…「海の見える理髪店」。独自の美意識を押し付ける画家の母から逃れて十六年。弟に促され実家に戻った私が見た母は…「いつか来た道」。人生に訪れる喪失と向き合い、希望を見出す人々を描く全6編。父と息子、母と娘など、儚く愛おしい家族小説集。直木賞受賞作。
「あたためますか?」「アイスあっためてどうすんの!」。俺はコンビニバイトの傍らネタを作り続ける。漫才でいつか天下を取るんだ!…相方はまだいないがー芸人を夢見るフリーターを描く表題作ほか、何者かになろうと挑み続ける、不器用で諦めの悪い八人の短篇集。愛すべき彼らが動き出す、著者書き下ろし「あと描き」を特別収録。
いじめを受けた側、いじめた側、その友だち、家族、教師…「いじめ」には、さまざまな“当事者”たちがいる。7人の人気作家が「いじめ」をめぐる人々の心模様と、ときにやさしく、ときに辛辣な視点で深く迫った物語を競作。胸の奥に、しずかに波紋を投げかける短編集。
恋人にふられ、やりがいのない仕事に追われていた潤は、夏祭りで気まぐれにすくった琉金にリュウと名をつけた。その夜、部屋に赤い衣をまとった謎の美女が現れ、潤に問いかける。「どこだ」。どうやら金魚の化身らしい彼女は誰かを捜しているようだが、肝心な記憶を失い途方に暮れていた。突然始まった奇妙な同居生活に、潤はだんだん幸せを感じるように。しかし彼女にはある秘密があった。温かくて切ない、ひと夏の運命の物語。
大学4年生の高橋真矢は、映画研究会在籍の実力を買われ、アルバイトで民俗学者・布目准教授の助手となった。布目の現地調査に同行して遠野へ。“座敷わらし”を撮影するため、子どもが8人いる家庭を訪問。スイカを食べる子どもを数えると、ひとり多い!?座敷わらし、河童、天狗と日本人の心に棲むあやしいものの正体を求めての珍道中。笑いと涙のなかに郷愁を誘うもののけ物語。オリジナル文庫。
幸せなはずの新婚生活で摂食障害がぶり返した。原因不明の病に、たった一人で向き合う直子を照らすのは(表題作)。DV男から幼い娘を守るため、平凡な母親がボクサーに。生きる力湧き上がる大人のスポ根小説(「ヒット・アンド・アウェイ」)。短編小説の名手が、ありふれた日常に訪れる奇跡のような一瞬を描く。名付けようのない苦しみを抱えた現代人の心を解き放つ、花も実もある8つのエール。
ダム工事の現場で、縄文人男性と弥生人女性の人骨が発見された。二体はしっかりと手を重ね、互いに向き合った姿であった。三千年近く前、この男女にいったいどんなドラマがあったのか?新聞記者の佐藤香椰は次第に謎にのめりこんでいくー。紀元前七世紀、東日本。谷の村に住むウルクは十五歳。野に獣を追い、木の実を集め、天の神に感謝を捧げる日々を送っている。近頃ピナイは、海渡りたちがもたらしたという神の実“コーミー”の噂でもちきりだ。だが同時にそれは「災いを招く」と囁かれてもいた。そんなある日、ウルクは足を踏み入れた禁忌の南の森でカヒィという名の不思議な少女と出会う。
“コーミー”は暮らしを豊かにする神の実か、それとも災いの種なのか。禁忌の南の森に入ったウルクのピナイ追放が決まった。だが裏ではコーミーを手に入れてくれば帰還を許すという条件がつけられる。初めて目にする村の外、ウルクは世界の大きさを知る。しかし、そんな彼を執拗につけ狙う存在がいた。金色の陽の獣・キンクムゥ。圧倒的な力と巨躯を持つ獰猛な獣に追い詰められたウルクは、ついに戦いを決意するー。一方、新聞記者の佐藤香椰は、死してなお離れない二体から、ある大切な人を思い出していた。第5回山田風太郎賞受賞作。
人気、実力とも当代随一の作家5人が腕を競う、恋愛小説アンソロジー。3年越しの恋人が無断で会社を辞めてショックを受け、結婚を焦るOL。夏の日、大人の異性との出逢いに心を震わせる少年と少女。長年連れ添った夫婦の来し方、そして行く末。人の数だけ恋の形はあるー。人の心が織りなす、甘くせつない物語の逸品。
恋に恋する女の子のささやかな成長。家出した少女の冒険と、目の当たりにした社会の現実。早熟な少年が抱く不安と、それをほぐす少女のやさしさ。-人気作家が「少女」をキーワードに綴った傑作短編9編を収録。多感な時期の憂しやときめき、ときに切ない気持ち。そしてそれらの先にある成長を、思い出のアルバムをめくるように楽しんでください。それぞれの作家の魅力も体感できる贅沢な一冊。
「もう一度、仕事をしてみないか」。二人の子どもにも恵まれ、ささやかながら幸せな日々を送る福田曜子の元に届いた25年ぶりの仕事の依頼。幼い頃にアメリカで暮らした曜子は、祖父エドからあらゆることを教わった。格闘技、護身術、射撃、銃の分解・組立…。そう、祖父の職業は暗殺者だったのだ。そして、曜子はかつてたった一度だけ「仕事」をしたことがあった。家族を守るため、曜子は再びレミントンM700を手にする。
伝えられなかった言葉。忘れられない後悔。もしも「あの時」に戻ることができたら…。母と娘、夫と妻、父と息子。近くて遠く、永遠のようで儚い家族の日々を描く物語六編。誰の人生にも必ず訪れる、喪失の痛みとその先に灯る小さな光が胸に染みる家族小説集。
荻原浩「サークルゲーム」-中学二年生を担任する矢村琥代。彼女のクラスではいじめが起きているようなのだが…。小田雅久仁「明滅」-祖父の死をきつかけに地元に帰った私は、同級生と蛍を見に行ったあの日を思い出す。越谷オサム「20センチ先には」-クラスメイトからいじめられている僕の前に、現れた「悪魔」が見せる光景とは。辻村深月「早穂とゆかり」-小学校の同級生だった二人。早穂は、塾経営者として成功したゆかりを取材することになり…。中島さなえ「メントール」-由美子と志乃は歌劇団のトップ女優を目指す親友同士だったのだが、やがて…。学校で、職場で、ネット空間で…いじめと関わったことがない人、いますか?いま、この世の中に蔓延する空気を切り取った5つの短編小説。