著者 : 西川美和
「愛するべき日々に愛することを怠ったことの、代償は小さくない」 長年連れ添った妻・夏子を突然のバス事故で失った、人気作家の津村啓。 悲しさを“演じる”ことしかできなかった津村は、 同じ事故で母親を失った一家と出会い、はじめて夏子と向き合い始めるが…。 突然家族を失った者たちは、どのように人生を取り戻すのか。 人間の関係の幸福と不確かさを描いた感動の物語。
故郷である田舎町を嫌って都会へ出た奔放な弟・猛と、家業を継いで町に残った実直な兄・稔。対照的な生き方をしてきた二人の関係が、幼なじみだった智恵子の死をきっかけに揺らぎはじめる…。映画史に永く刻まれる傑作を監督自らが小説化。第20回三島由紀夫賞候補作。
村からただ一人、町の塾へ通っているりつ子は、乗っていた路線バスの運転手・一之瀬から突然名前を呼ばれ戸惑う。しかしりつ子は一之瀬のある事実を知っていた(「1983年のほたる」)。人の業を独自の筆致で丹念に描き出し、第141回直木賞候補作になった傑作が待望の文庫化。
終戦の日の朝、19歳のぼくは東京から故郷・広島へ向かう。通信兵としての任務は戦場の過酷さからは程遠く、故郷の悲劇からも断絶され、ただ虚しく時代に流されて生きるばかりだった。淡々と、だがありありと「あの戦争」が蘇る。広島出身の著者が挑んだ入魂の物語。
脚本・監督作『ゆれる』『ディア・ド クター』が高い評価を受け、執筆活動 でも『きのうの神さま』が直木賞候補 になるなど、常にその創作活動が注目 されている西川美和さんの小説処女作 です。田舎を嫌って都会に出た奔放な 弟・猛と、田舎に残り実家を継いだ実 直な兄。対照的な二人の関係が、幼馴 染みの女性の死をきっかけに、大きく 揺らぎはじめる……。本作は、同名映 画の小説化(ノベライズ)という位置 づけになりますが、登場人物ひとりひ とりの視点から描かれた心象風景は、 文学作品として非常に高い完成度を誇 り、第二十回三島由紀夫賞候補にもな っています。