著者 : 角田喜久雄
組織人としての苦悩を抱えながらも、ひとたび事件が起これば矜持を胸に執念の捜査で犯人を追い詰めていく。鮫島警部、黒マメコンビ、相良刑事、庄司部長刑事、朝霧警部、加賀美捜査一課長といった名刑事たちの活躍を、たっぷりお楽しみあれー。歴史ある日本推理作家協会賞を受賞し、ミステリー界が誇る作家六名による、珠玉作短編集シリーズ第七弾。
元禄の討ち入りから十四年。既に世にないはずの赤穂浪士が江戸に出没、かつて浅野家に仕えていた女たちが次々と殺される。その悪行を偶然目にした駿河屋の娘・お京がさらわれ、大石内蔵助を名乗る男とその一党から届いた脅迫状には、身柄と交換に『将監闇日記』を渡せという要求が。だが誰も、その『闇日記』なるしろものに覚えがなかった。さらに、浦島太郎を探しに「竜宮」からやってきたという“於兎姫”一行も現れて…。複雑に入り組んだ謎を解くべく、八丁堀同心・水木半九郎が立ち上がる!多くの者が必死に探す『将監闇日記』とは?北上次郎選第三弾。
『将監闇日記』の謎が解けぬうち、今度は半九郎の妻・お柳が行方不明に。どうやら、蔵前の札差し・松前屋本蔵が関わっているらしい。本蔵はかつて「お役者小僧」の異名をとった、大盗賊であった。その本蔵の手引きを受けて、半九郎はお柳を救い出すべく悪の巣窟・幽冥庵に忍び込む。お柳を誘拐しておきながら、その幽閉先を教える本蔵の狙いは何なのか?そして『将監闇日記』とは、「竜宮」とは?浅野内匠頭、大石内蔵助らを名乗る悪党たちや、於兎姫一行までもが絡むなか、いよいよすべての謎が明らかに!半九郎シリーズ第二弾にして、戦後時代伝奇小説の傑作。
時代伝記小説の大家・角田喜久雄は、大正十四年、探偵文壇にデビューし、戦前・戦後を通じて数々のミステリを発表してきた推理小説の名手でもあった。笛を吹くだけで人を殺すことが出来るのか?人間の心に潜む底知れない悪意を描いて昭和三十三年度の探偵作家クラブ賞を受けた「笛吹けば人が死ぬ」、恐水病に罹った男の異様な犯罪計画を描く「恐水病患者」等、単行本未収録作品一篇を含む全十三篇!著者十代の才気あふれる初期作品から、最後のミステリ「年輪」まで、傑作・代表作を網羅した角田ミステリの精華集。
連続殺人の犠牲者は、みな雛人形を抱えていた。名人人形師の遺作という五体の人形には、どんな秘密が隠されているのか。日ごろ子どもに手習いを教える異色の同心いろはの左近は、この謎をどう解く。推理小説の手法も鮮やかな表題作をはじめ、般若面をつけた生首の怪を追う『鬼面三人組』、刺青を彫った死体ばかりが盗まれる『美しき白鬼』など、巨匠の抜群の小説技巧を示す初期捕物帳七作を収録。
文久三年騒然たる幕末の風雲に包まれた江戸に出現した怪しの結社卍組、神田お玉ガ池の広大な屋敷に住む卍組の党首は汐見田一笑、副頭領はその息隼人であった。水戸浪士で世に名高き兵学者市瀬右有斎の美しい娘お妙は、岡っ引き蜘蛛の長六にひきたてられ、卍組のもとに拉致された。隼人や一味の赤痣の男法川左近次の魔手がお妙のうえに迫ったとき、金泥をもって「八咫烏」と書かれた黒羽根の矢が飛来した。八咫烏の正体とは。そして、兵学者右有斎の秘書「築地図録」のうち欠損の一枚を入手せんと狂奔する卍組の一党のまえに立ちふさがる正義の若侍は、京より江戸へ下ってきた長門小次郎であった。舞台は日光へ!スケールも大きく展開する伝奇長編時代小説の雄編。
奥州八戸よりの旅を急いで江戸は飛鳥天王社の境内にさしかかったのは、妻お霜と愛児のおみやを同道した吾妻一平であった。北町奉行となった遠山左衛門尉景元の密命を受けた一兵が、八戸に闇太郎様にまつわる奇怪な謎を探っての帰途であった。江戸に近づいた一兵は、ふと目にした「闇太郎様」と書かれた紙切れに誘導されて踏み込んだ荒れ寺で、墓場のような地獄の闇を思わせる深い穴の中へと落とし込まれてしまった。日本に亡命したイエス・キリストは八戸太郎と改名、その子孫は生きつづけているという。それが妖しの闇太郎様か、黒頭巾に面を包んだ遠山景元は秘かに常磐津文字千賀を訪ね、元大目付松本左膳の屋敷への潜入を命じた。遠山金さん奉行の活躍は、伝奇傑作長編。
錦絵『江戸七美人』に描かれた十八歳のお喜美は、御用聞き並木の仙蔵の愛娘であった。お喜美の住まいの裏隣に、若い浪人佐川重四郎がいた。重四郎とお喜美の二人がまき込まれた大江戸の夜を恐怖に陥れた怪事件とは、娘ばかりをねらう全身真っ赤な幽霊であった!並木河岸の材木問屋、桝屋五郎右衛門の娘お銀が次にねらわれていた。その身代わりに立った気丈なお喜美は、赤いお化けの一味にいずこへか拉致されていった。大身旗本笠松十郎兵衛の屋敷には、八重・雪太郎という美しい姉弟があった。笠松家をめぐる陰謀の元凶長山典膳に一味へ誘われた重四郎は?野州足利一万一千石、戸田家の次男駒之丞とうり二つの重四郎の正体は?-赤屋敷の恐怖は謎をはらんで展開する。
嘉永5年の春、八丁堀同心吾妻一兵の娘おみやは17歳の美しい娘に成長していた。浅草観世音に詣でたおみやは、町家の番頭が持っている唐草模様の風呂敷をねらうならずものと、怪しげな娘の姿を目撃した。その風呂敷に包まれていたものは折り鶴散らしの振袖であった。風呂敷を奪った怪しの娘がならずものの鍾馗の三次に襲われた危ないところを救ったのは、おみやの小坂流吹き針の妙技であった。時の南町奉行は遠山左衛門尉景元であった。大江戸を騒がす振袖娘の誘拐事件の捜査に当たる稚児同心佐川左内は、女のような美男子であった。紫のお高祖頭巾の美女振袖お柳の出現によって謎はさらに深まっていく。-金さん直属の部下、吾妻一兵の活躍は。
シャムロ(タイ)国の灼熱の原野で、シャムロ兵とビルマ兵との壮絶な戦いがくりひろげられる中に、日本義勇隊員を率いた山田長政の姿があった。その隊員の中には、“へのへのもへじ”の刺青をしたへのへの茂平次と名のる快男児がいた。そしてまた、前髪の美貌の若者山柿甚吾もいた!茂平次は長政から、「甚吾は危険人物」との注意を与えられていた。-山田長政の活躍するシャムロ国から物語は始まる。戦国、海の男たちのロマン。
傷ついた美女知香を救い出したへのへの茂平次は、意識を失った彼女を懸命に看護しながら、六右衛門爺の黒瀬丸を待っていた。強敵山柿甚吾がそんな二人を秘かにねらっていた。恐るべき重四郎のふるう投石器に相対した茂平次は、負傷しながらも重四郎と組み打ちのままに、怒涛逆巻く海中へと転落していった。茂平次と知香の運命やいかに…。-海と戦国の男たちを描いて息もつかせぬおもしろさに満ちた一大伝奇扇代長編会心作。
正徳(1711)のころー、江戸に“両国の三奇人”といわれる奇妙な男たちがいた。それは回向院前の魚屋太吉に薬研堀の聴雨堂なる老人、3人目の男が聴雨堂近くの裏店に“よろず指南所”の看板を下げる多賀甚三郎なる25、6歳の男で、この男なにか特異な感覚があるらしく、八丁堀が手を焼く難事件を快刀乱麻を断つごとく解決してしまう。聴雨堂平右衛門の娘お蝶が泉岳寺に参ったとき、内匠頭の墓所にぬかずく頭巾の武士は、大石内蔵助と名のった。そして、白黒だんだら染めの印羽織をまとった大高源五の死体が出現したが、それは何者かに殺された魚屋太吉であった。さらに矢頭右衛門七の死体が。-江戸の街にふたたび出没する赤穂浪士47士の謎に敢然と挑戦する多賀甚三郎。
隅田川につり糸をたれていた二人は、平賀源内と桜兵之介であった。川岸へ視線を向けた源内と兵之介が見たものは、無頼の男どもに追われているひとりの娘であった。兵之介は娘を救ってやった。その可憐な娘は、烏山の浪士泉川作太郎の娘多喜であった。多喜は芝愛宕山寂光院門前の茶屋の主忠兵衛を訪ねたが、まもなく、上州館林六万一千石松平藩の重職菅沼右兵衛の命をうけた紋次の手で、いずことなもなく連れ去られた。菅沼右兵衛と老女蔦枝に無理に薬をのまされた多喜は、そのまま麻布清徳寺墓地に埋葬された。奇怪なことに墓に記された名は楓であった。楓というナゾの女の身代わりに葬られた多喜の運命とは?兵之介・源内の活躍は。興趣満点、角田喜久雄時代長編大作。
江戸は浜町の常磐津の師匠お妻の娘お光は、“浜町小町”と噂の色白の顔に大きな目が鈴を張ったような愛くるしくも幸せな十八娘に成長していた。が、お光は16年の昔、金四郎(遠山景元)によって深川の木場で拾われた奇しき運命にしばられた哀れな赤子であった。その肌身につけていたお守り袋の中の“18歳の4月10日の夜、本郷湯島天神境内の一本杉の根元に参集せよ”との書付けに従って出向いていったお光は、青白い顔にまるでざくろのような赤い唇の女と影法師の二人連れによって、いずくともなく連れ去られてしまった。もう一人、お光とまったく同じ運命に逢着していたのが20歳の美女、大奥中〓@62E4のお浦であった。-奇怪な桔梗屋敷の地下牢に捕らえられた2人の美女が秘めた謎とは…?