著者 : 谷村志穂
シュークリアの海シュークリアの海
深く深く海の底に潜ることで空っぽな心を満たそうとするアサコ。誰とでも寝る自堕落なキリ。南の島でフリーター生活をおくるふたりの女たちの毎日は、刺激的で自由で、でも本当は退屈に倦んで少しずつ死んでゆくよう。永遠に続くかのように思われた楽園の日々も、キリのエイズ騒動で終わりがやってくるー。表題作「シュークリアの海」その続編「島は沈まない」で描くアサコの再生への軌跡。
なんて遠い海なんて遠い海
男から与えられる愛では満たされないことに気づいてしまった女、婚約者がいながら別の男に惹かれてゆく女、平穏な結婚生活の中でひと夏の記憶を辿る女…。ささやかだけど穏やかな幸福に包まれていても、どこか満たされない。心の奥底にひりつくような渇きを抱えて生きる女の日常に小さなさざ波をたてるのは、それもやはり“愛”。よせては返す波にも似て、果てなき海にまどう九つの愛のかたち。
妖精愛妖精愛
「お前はすけべえな女だ。これしか能がないんだ」彼が言った。「あなたがこうした」私は答えた-。刹那の性愛を求めて夜の街を彷徨う女たち。満たされぬ心の叫びを、哀切に描き出す衝撃作。はかなく危うい愛の形。
なんて遠い海なんて遠い海
あなたも、わたしも、ここにいる。なのに、なんて遠い男と女。求めても、体を重ねても、満たしきれない。禁じられるものは何もない。現代のさまざまな愛のかたちを描く短編小説集。男では満たされないことを知った女(「暗がりのローランサン美術館」)。婚約者とは別にプラトニックな愛を深めていく女(「最終公演、ワーグナー」)。平凡な結婚生活を送る女に突然よみがえるひと夏の記憶(「海に抱かれて」)。穏やかに見えても、心に、体に、生じるさざ波。果てなき愛の海をさまよう、男と女の九つの物語。