著者 : 谷村志穂
息子が就職して家を出たことを機に部屋を片付けていた香菜子。クローゼットの片隅にしまわれたPCを開き、夫のメールを見つけてしまう。そこには、夫と女が親密に名前で呼び合い、2人が子どものように育てていた猫が死んでしまったなど、21年以上にわたるやり取りが書かれていた。おかしい。21年前といえば、香菜子が必死に幼い息子を育てていた頃なのに。夫と女の間に何があったのか。その後、彼女は「不倫小説の最高傑作」とも評価された1冊の小説を出版していることが分かってー。美しくて残酷な究極の不倫小説。
明治時代に、北海道・大沼を開拓した者たちの後裔として、大沼の地で自分たちらしく根を張ろうとした小さな母と、魅力的な長身の三兄弟。また、この地を自分たちの新天地と考えて、第二次世界大戦後、山梨より順に嫁いでいくことになる、それぞれに個性溢れる三姉妹。この「奇跡の三夫婦」たち大家族は、様様な困難に見舞われながらも、この地に新風を注ぎ込んでいく…。そして、母の死に際に、三夫婦に明かされた謎とは?北海道を舞台に、数々の小説を発表してきた著者が、五年の歳月をかけて紡ぎ上げた、実話をもとにした、大恋愛と大家族を描く感動長篇。
北海道・大沼湖畔に佇む2つの施設。そこではさまざまな事情で親元を離れた少年少女たちが、自立のために職員たちと一つ屋根の下で暮らしていた。施設を束ねる藤城遼平の娘・ゆきは札幌の病院で働く新人の理学療法士。偶然、父の教え子である同世代の摩耶が唄うYouTubeを見たことから、摩耶、そして同じく教え子の兄・拓弥と出会う。実在の児童自立支援施設を取材し、繊細な心を描き上げた著者の新境地。
情熱、野心、そして愛ーすべてを賭けて、命をつなげ。1985年、まだ実験的段階にあった臓器移植。最先端の医療を学ぶため渡米した3人の日本人医師を待ち受けていたのは、血の滲むような努力も崇高な理想をも打ち砕く、シビアな命の現場だった。苦悩し、葛藤しながらも、やがて彼らは日本初となる移植専門外科を立ち上げるが…。命を救うための最終手段である臓器移植。限界に挑む医師たちを支える想いとは。命と向き合い、生きていくことの意味を問う傑作長編。
茉祐子は火山の麓で百年以上続く温泉旅館を営んできた。三十代半ばだが、年より若く美しい彼女が深い仲になったのは、新聞の支局員、火山の研究者、新任の教師。時が来れば、彼女の元から去って行く男たちばかりだった。旅先のNYで出会った初老の夫婦の言葉に彼女の凍りついていた心が解きほぐされる表題作など男女の深淵を描く傑作揃いの短編集!
大沼を開拓した者たちの係累として、大沼の地で自分たちらしく根を張ろうとした小さな母と、長身の三兄弟、また、大沼を自分たちの新天地と考えて、山梨より順に嫁いでいくことになる、それぞれに個性の異なる三姉妹。この大家族は、様々な困難に見舞われながらも、この地に新風を注ぎ込んでいく…。北海道を舞台に数々の小説を発表してきた著者が、5年の歳月をかけて紡ぎ上げた渾身の作品。
母と通うカルチャーセンターに、『源氏物語』を教える大橋征一がいた。王朝の愛憎劇を読み解く老講師は、教室の外でも、光源氏のごとく女たちの求めに応えているらしいー母もその一人だった。私は大橋と二人きりで会った。半ば、興味本位に。どんな風に誘うのか、偽源氏が織りなす倒錯の世界を、垣間見たい思いもあった。
100通の往復メールで構成されたラブストーリー。パリ祭の日に、空港へ向かう電車が故障したことで出会った男女。帰国後、メールを送りながら想いを深めていくが、男には恋に臆病になる事情があり…。恋愛小説の名手二人が男女それぞれの視点でメールを紡ぎ、物語を織り成していく。大人になってからの恋だからこそ惑い、傷つけ合ってしまう男女を描いた、切なくも美しい長編小説。文庫オリジナル。
幼い頃に母を亡くし、大海女と呼ばれた祖母のもとで志摩の漁村に育った野井山孝子は、高校卒業後は海女になるはずだった。しかし、神主の修行を積む白川武雄との出会いから、ふたりの透明な魂は響きあい、孝子は定められた生き方と、女性としての目覚めの狭間で揺れうごく。体ひとつで海の底から生きる糧を獲る少女と、伊勢神宮の伝統ある神社の跡取りの青年ー運命は、ふたりを思いもかけぬ方向へと導いていく。
昭和二十七年。何の前触れもなく姿を消した恋人…末期ガンの母に代わって消えた男を捜す娘は、いつしか母の想いに自分の恋を重ねはじめる。函館の街を舞台に、時代を挟んで向き合う二組の恋人たちの行き着く先はー衝撃の結末が胸を揺さぶる渾身の恋愛長編。
恋は、予想もしないところから訪れて、わたしを塗りかえてゆく。ずっと待ちつづけたあの人の影。禁じられたからこそ、燃えあがる感情。背筋を貫いた忘れられぬ快感。しずかに甦る、出会ったときの熱ー。結ばれて、喪って、また新たな鼓動に気づく。あなたへの想いは星座となり、やがて雪空へと溶けてゆく。『海猫』『余命』で絶賛を浴びた著者が描く、切なくて甘美な六色の恋愛模様。
コンビニで働く大学生の宗助には、気になる女性客がいた。クリスマス・イブにも一人で店を訪れ、ショートケーキを買う彼女は見映えのしない四十代だが、なぜか気になってしかたがない。ある日、街中でその女性を見かけ、自分でも大胆だと思えるほどの行動に出る。思いがけず、親子ほども歳の離れた若い男から情熱を寄せられた美南子は、結婚に破れたという自身の傷から立ち直れず、恋愛に臆病になっていた。だが、物怖じしない宗助の一直線な恋愛を前に、だんだんと自分の中に眠っていた火が燻りはじめる…。
愛はいつしか悲しい色彩に変わっていく。婚約者が事故死する直前に、私に見せたがったナナカマドの「赤」。夫に見捨てられた私を染めていく、夕空の「紫」。同棲相手と致命的なケンカをして、ひとりで泊まるホテルの床の「茶色」。決して叶うことのない恋の相手に贈る、フォトフレームの「ピンク」。この愛に優しい光は灯るのかー。様々な色をテーマに、胸を打つ恋愛を描いた掌編集。オリジナル文庫。
恋はいつも、人のこころを様々な色彩に染めていく。ガンの手術を受ける私に、運命の人が贈ってくれた花の「白」。手の届かない人と並んで見つめた、雪が残る湖の「銀色」。遠く離れた初恋の相手と私とを繋ぐ、あの日と変わらぬ空の「ブルー」。婚約者のいる男性と別れ、ひとりで歩く公園の「緑」-。色をテーマに、切なく胸をしめつける恋愛を描いた、ショートストーリー集。