著者 : 谷瑞恵
子供のころ、誰もが読んだ優しい物語が今の私の心に大切なことを思い出させてくれるー。契約社員の野花つぐみは、実家の本棚でお菓子レシピが挟まった、見慣れない『小公女』の古書を見つける。それは不思議な老女・メアリさんの遺品だった。どうやらその本はつぐみだけでなく、この街の様々な人に届けられているらしい。『小公女』の「ぶどうパン」、『不思議の国のアリス』の「女王様のタルト」、『ドリトル先生』の「アブラミのお菓子」…つぐみの本探しと物語の菓子作りはやがて、簡単にはやり直せない過去を抱えた人々との優しい縁を結び始める。じんわり涙がこぼれる6つの連作集。
仲の良い姉妹・笹子と蕗子が営む小さなサンドイッチ専門店『ピクニック・バスケット』。ここには悩みを抱えた人々が、心を癒す絶品サンドイッチを求めてやってくる。ある日、蕗子はパンダのアップリケが付いた手作りのパスケースが店内に落ちているのを発見した。密かに想いを寄せるパン職人・川端さんが持っていたものと似ている。持ち主は誰だろうとやきもきして…。
火事で家族を失った大学生の水城朔実は、自らを育ててくれた恩人に頼まれ、「幻堂設計事務所」、通称「まぼろし堂」を訪れる。主の幻堂風彦が案内してくれたのは、館内に迷路のように広がる部屋の数々。この「まぼろし堂」には、「あかずの間」を貸し出すというもう一つの顔があり、さらには訳ありげな下宿人たちを受け入れてもいて…。個々の人生の物語に「居場所」をあたえる「まぼろし堂」と風彦との出会いが、身寄りなき朔実にもたらすものとは?
大阪の靭公園にある、手作りサンドイッチの専門店『ピクニック・バスケット』。おっとりした姉・笹子がつくる絶品サンドイッチと、しっかり者の妹・蕗子の切り盛りに惹かれ、多くの客が店を訪れている。笹子のサンドイッチは、誰かが胸の内で大事にしている味に、そっと寄り添ってくれるのだ…。そんななか蕗子は、笹子が元彼と会っているらしいと知る。フランス帰りのシェフだという彼は、自分のレストランに笹子を誘おうとしているのかもしれないー。心穏やかではいられない蕗子だが、一方、彼女のほうにも新たな変化の兆しが…!?
千景のもとに「-もうすぐ僕は、絵を完成させる。見た人を不幸にする絵だ…」と脅迫めいた手紙が届いた。消えた図像術の研究者、有名な心霊スポット「切山荘」、四つの絵…点と点が線となり、やがて千景の過去へと繋がっていく。誘われるように、自らの失った記憶に向き合おうとする千景を透磨は案じ、守ろうと二人の距離は近づいてー?待望の第六弾!!
靭公園にある『ピクニック・バスケット』は、開店して三年を迎える手作りサンドイッチの専門店。蕗子が、姉の笹子ー笹ちゃんのこの店を手伝いはじめて、半年になる。笹ちゃんは店を訪れた人たちの、具材への思いや記憶、そして物語をやさしくパンにはさんで、誰が食べてもなつかしいような新しいような、そんなサンドイッチをつくっているのだ…。おっとりした姉としっかり者の妹、店を訪れる個性的な人々-常連客の小野寺さんやパン職人の川端さんーが織りなす、優しくも愛おしい物語。
ファッション業界で働く紬の前に、長らく行方不明だった母親の文子が姿を現した。紬の部屋で暮らし始めた母は自身を「山姥になった」と言い、面影にもどこか違和感がある。困惑する紬は、同じく故郷を離れ東京で暮らす二人の姉に相談するがー。20代、30代、40代。それぞれの年代の三姉妹は、母との再会をきっかけに、自分自身を見つめ直すことになる。母と娘の絆を描く、心に染みるミステリー。
今年33歳になる竹宮ひかるは、結婚を前提に交際していた相手の母親から、手切れ金と共に息子と別れるよう言い渡される。幼い頃から母に束縛され、上京してきてからも人生が思い通りにいかない。そんな時、亡くなった父から、一通の封筒が届く。そこには携帯の番号と「開けるヒント」という言葉が書かれていた。その番号の相手は、ひかると高校時代に孤独を分け合い、いまも孤独の只中にいる達郎だった。再会した二人は、修学旅行で乗った特別列車「あおぞら号」にいた、幸運をもたらすと伝えられている「ソラさん」を思い出す。彼を見つけることが、いまの人生を変えるきっかけになるのではないかと思い、二人の「ソラさん」を探す旅が始まる。
「自分が死んだらこの手紙を投函してほしい」と中学時代の親友・響子に託された「おたより庵」の店主・詩穂。やがて、彼女の死を知った詩穂は手紙を開封し、過去にまつわる事件に巻き込まれてゆく。町屋の並ぶ、どこか懐かしい町で「あの日の約束」が再び動き出す。店を訪れる者と、想いを伝えたい大切な誰かを繋ぐ、手紙ミステリー。著者初の単行本が、待望の文庫化!!
事故で婚約者を喪った額装師・奥野夏樹。彼女の元には一見額装不可能で、いわくありげな依頼ばかりやってくる。ヤドリギの枝、小鳥の声、毛糸玉にカレーポットー。表具額縁店の次男坊・久遠純は夏樹の作品の持つ独特な雰囲気に惹かれ、やがて彼女自身にも興味を持つのだが…。『思い出のとき修理します』著者が紡ぐ、心温まる手仕事小説。
自殺未遂した少女、消えた絵…。鈴蘭学園美術部で起こった複数の事件には、図像術につながる何かが感じられる。そんななか鈴子の提案で、千景は生徒の一人を装って、学園の潜入調査を決行することになって…!?矛盾する少女たちの証言に翻弄されながらも、千景と透磨は、事件と…呪われた絵画「ユディト」の謎を追うー。話題の美術ミステリー、第五弾!!
職を失った男のもとへやってきた猫、かつて飼っていた猫に会えるというホテル、猫飼い放題の町で出会った二人、猫が集まる縁結びの神社、死後に猫となり妻に飼われる男──猫にまつわる五つの物語。
ファッション業界で働く小峰紬の前に、行方不明だった母親の文子が姿を現した。面影にどこか違和感がある母に困惑する紬は、年の離れた姉の麻弥と絹代に相談する。二十代の紬、三十代の麻弥、四十代の絹代。仕事や恋、家族について、それぞれに悩みをいだく三姉妹は、母との再会で変化がー。三姉妹と母との絆をめぐる、切なく温かいミステリー。
成瀬家は、代々“禁断の絵”を守ってきた旧家だ。その絵が盗まれた。当主の美津に絵をさがしてほしいと頼まれた千景と透磨だが、件の絵は異人館画廊に置き去りにされていた。同時期、失踪中の次期当主候補・雪江が遺体で見つかるが、容疑者に浮上した男が千景の誘拐事件の関係者だと判明し!?深まる謎の中、記憶の封印が次第に解けてゆく。緊迫の美術ミステリー!!
不仲に思えた両親の絆、亡き妻への秘めた思い…時計店には今日も人々の「思い出」が持ち込まれる。そんな中、秀司が作ってくれているドレスウォッチの完成が近いと聞き、喜びとともに複雑な気持ちになる明里。秀司の元に、スイスの時計工房から手紙が届いているらしいからだ。ともに商店街で暮らす未来を夢見つつ、本当は秀司がスイスで修業を続けたいのではないかと悩み…。ついに完結!
老舗ホテルの一人娘として生まれた「眠り姫」は、経営不振の実家を救うためにお見合いをすることに。「ヘンゼルとグレーテル」は廃屋から届くケーキの注文に戸惑っていた。自分こそが学年一の美少女だと思っている「白雪姫」は、同じくらい美しい無愛想な少女の存在が気になっていて…。誰もが知る“グリム童話”を大胆にアレンジ!人気作家の作品、全六編を収録。
図像術の絵を求めて、離島に住むブリューゲルのコレクターを訪ねた千景。絵の持ち主・波田野は、邸の庭園でブリューゲルの絵を再現しようとしているらしい。庭園を完成させれば絵を見せると言われた千景は庭園の謎を追うが、透磨はそれが千景の父・伸郎の設計だと気づく。父の見えない悪意に苦しむ千景は、さらに波田野の息子が起こした事件に巻き込まれてゆき…。
英国で図像学を学んだ千景は祖母の営む『異人館画廊』で暮らしている。ブロンズィーノの贋作の噂を聞いた千景と幼馴染みの透磨は高級画廊プラチナ・ミューズの展覧会に潜入するが怪しい絵は見つからなかった。が、ある収集家が所持していた呪いの絵画が、展覧会で見た絵とタッチが似ていることに気づく。しかも鑑定を依頼してきたのが透磨の元恋人らしいと知って!?