著者 : 谷甲州
戦闘員・タイプV-遺伝子工学の粋を集めて創り出された戦闘用バイオニック・サイボーグ。ヴォルテはその記念すべき第一号・プロトタイプとして生まれた。動物の持つ鋭敏な感覚と人間の知能、そして超人的な肉体に秘められた驚異の戦闘能力。地上戦闘に革命を起こすこの新兵器の、クローニングによる量産化は目前だった。実用実験の最終段階、雪山で実戦テスト中、ヴォルテは崖から滑落する。生死の境をさまよう彼の意識の中に突然、若い女の声が響いた。「戦って自由になるのよ!逃げなくては」この時からヴォルテの、長く熾烈な戦いが始まった…。
21世紀末。弱小な外惑星連合はついに地球に宣戦を布告。同時に連合軍の奇襲攻撃が始まった。そしていま、火星の有人加速鉄道M-RR-19も連合軍の攻撃を受けつつあった。鉄道を愛する陽気な航空宇宙軍パイロットの決死の反撃を描いて87年の星雲賞に輝いた表題作ほか、不運な元航宙艦艦長が、タイタンの濃密な大気の中を飛ぶパイロットとして再生する「タイタン航空隊」、大敗北を喫した護衛艦隊の中でただ一艦、孤独な戦いに臨む特設砲艦の姿を描く「土砂降り戦隊」など、太陽系各所に展開する外惑星動乱時の航空宇宙軍の熾烈な戦い7篇を収録。
カリスト国境警備隊のダンテ大尉は新編制の陸戦隊指揮官に任命される。ダンテは興奮する。陸戦隊が必要な攻撃目標といえば、木星の微小衛星アナンケの航空宇宙軍基地以外考えられなかったのだ!-21世紀末。地球からの独立を望む外惑星連合は航空宇宙軍を仮想敵として、密かに軍事同盟を結んでいた。もっとも未だ弱体の外惑性諸国にとって、地球との戦争など想像を絶する事態のはずだった。だが…。主戦派の急先鋒カリストを舞台に、航空宇宙軍の圧力に反発する外惑星連合の駆け引きと連合自らの内部対立が錯綜する緊迫の外惑星動乱前夜!