著者 : 辻井喬
不安の周辺不安の周辺
新興宗教に凝った社長に代わって新しく老舗の広告会社の社長となった山上は、辣腕を揮って業績を伸ばし業界の制覇を狙う。しかし、右翼業界紙の主宰者である柴木が恐喝で逮捕されると、彼と親しい山上にも嫌疑がかかってきた。社長交替劇の背後には何があったのか?スキャンダルのゆくえは?-現実に大企業のトップにたつ著者が、経営者の内面を赤裸に描く異色の企業小説。
彷徨の季節の中で彷徨の季節の中で
「妾の子」と悔蔑した級友を狂ったように殴りつづけた小学校2年生の甫。それは週1回しか家にやって来ない父への無意識の抗議だったのか、それとも胸を病んで臥せっていることの多い母への苛立ちだったのか?複雑な生い立ち、父との軋轢、共産主義運動と挫折、不毛の恋愛、結核の療養ー西武セゾングループのリーダー堤清二が、戦争と混乱の時代を生きた青春を赤裸々に描く。
いつもと同じ春いつもと同じ春
百貨店の社長として烈しい競争の世界を疾駆し続ける〈私〉の胸に、ふと、引き裂くように自由への渇望がこみ上げる。そのような時にはまた、宿業を負った生い立ちから、理想に燃えて父に反逆した青年期が思い起こされる。-一族の血の重さに耐えつつ、ひたすら事業を拡大し、なおしなやかな感性を保ち続けようとする生きざまを驚くべき真率さで物語る。平林たい子文学賞受賞。