著者 : 野口卓
宮戸屋の倅、信吾が店を継がずに開いた将棋会所も、一年になるか。記念の将棋大会を開く?そりゃ面白そうだが、一緒に始めた「よろず相談屋」のほうはどうだ?猫や狸がよく来る?大丈夫なのか?-将棋大会に多くの人が集まる中、ならず者が暴れ、隠していた武術の腕を見せねばならない事態に。そこから思わぬ方向に物語は動き、信吾に一大転機が訪れる。痛快青春時代小説シリーズ第4作。
兄龍彦が長崎に留学し、甥の佐一郎や新弟子の伸吉らが頭角を現す岩倉道場で、源太夫の実子幸司は二代目を継ぐ決意をする。しかし、幸司には悩みがあった。それは、偉大な剣客である父の秘剣「蹴殺し」を未だその目で見ていないこと。悩める幸司は父の一番弟子を訪ねるが…(『羽化』)。園瀬の里に移ろう時と、受け継がれる教え。それぞれの成長を描く豊穣の四編。
宮戸屋で食あたりが出たってよ!そりゃ大変だ、さすがの老舗もおしまいか?ところであそこの長男は、まだ相談屋だか将棋会所だかをやってるのかい?そっちは繁盛してる?しかし、二十歳で独立して、順風満帆とはいかないだろうー。型破りな生き方を通してきた信吾に、今回ばかりは「そりゃないよ」と言いたくなるピンチが。斬新な設定で話題の青春時代小説シリーズ、目が離せぬ第三巻。
噂はもう聞いたかい?そう、宮戸屋の倅、信吾のことよ。老舗の跡継ぎを弟に譲り、弱冠二十歳で独立。よろず相談屋と将棋会所を始めたって、まったくなんてやつだ。将棋会所はかなり賑わっている様子じゃないか。肝心の相談屋のほうは?-巷で話題のよろず相談屋。今回はまさかの相談ごとが舞い込みます!読み味軽快、読んで爽快!時代小説に新風をもたらすシリーズ、待望の第2巻が登場。
天才絵師「写楽」を売り出すー。それは知られざる“絵師”を中心にした空前のプロデュースだった。関わる者をわずかにとどめ、世間を欺く大仕掛け。正体不明の絵師は、噂が噂を呼んで大評判に。だが、気づいた者がいた…。思わぬ窮地に陥った仕掛人は、まさかの“禁じ手”を打つ。写楽は、なぜ謎のまま姿を消したのか。それが「写楽事件」を解く鍵だー。傑作時代小説。
手習所「薫風堂」で師匠を務める雁野直春の許に、遠く本郷から新たな手習子がやってきた。河出屋の番頭・半次の息子、善次は、どうやら前の手習所でいじめに遭っていたようだ。直春は、面倒見のいい儀助を一緒に通わせて、早く皆と馴染めるよう気遣いを見せるが…。一方、心身ともに患う美雪との関係は、進展のないまま時が過ぎていた。だが、直春は突如訪ねてきた美雪の幼馴染・菜実から、衝撃の言葉を告げられるー。
江戸の文化が花開く下町の老舗料理屋「宮戸屋」の跡取り息子は、なんとも妙な若者だ。鎖双棍とかいう武器をしのばせ、いざとなれば浪人とも渡り合う。将棋を指せば腕自慢のご隠居もひとひねり。動物と話しているのを見た、なんて噂も。そんな信吾が、店を弟に継がせて、自分は「よろず相談屋」を開くなんて言い出した…。不思議な魅力をもつ青年と、そこから広がる人の輪を描いた軽妙な時代小説。
七年の歳月が過ぎ、齢五十四となった園瀬藩の道場主岩倉源太夫。だれにも避けることのできぬ“老い”を自覚しつつも、かつて退けた剣士の挑戦を再び受けて立つ。挑戦者の註文は「真剣で」だったー(『歳月』)。道場を開いて弟子を持ち、後添いにみつを娶って、思いがけず子を得た源太夫。息子の成長と旅立ち、弟子の苦節と克服を見守る、逃徹した眼差しの時代小説。
晩秋の九月。雁野直春が師匠を務める「薫風堂」に血相を変えて駆け込む者がいた。男は、直春が通う沼田民斎の剣術道場に道場破りが現れたことを伝えに来たのだ。平塚富三郎なる剣客を、その場の機転で退けた直春。だが、その場を見ていた教え子により、直春の武勇伝の噂は、意外な拡がりを見せるのだった。そんなある日、「薫風堂」に馴染んだばかりの儀助が、平塚に捕らえられたとの報が。直春は、決死の覚悟で剣客に立ち向かう。
初午の時期を迎え、「薫風堂」に新しい手習子がやってきた。四カ所の寺子屋に断られたほどの悪童を、師匠の雁野直春は、引き受ける決心をする。一方、端午の節句が過ぎてほどなく、二人の武家娘が直春を訪ねてきた。ノブと菜実は、幼馴染の美雪が想いを寄せる直春を、ひと目見ようとやってきたのだ。だが菜実は、誠実な直春に只ならぬ関心を寄せるのだったー。静かな感動が心に広がる、著者の新たな代表シリーズ第二弾。
物書きになろうと三十歳を目前に江戸に出た十返舎一九は、『東海道中膝栗毛』で人気戯作者となり、原稿料だけで生活する本邦初の作家となる。その旅路で蔦重に励まされ、写楽に嫉妬し、京伝を羨んだ。人は何を面白がり何を笑うのか。飄飄とした語り口の中に革命児の慧眼と心意気を見る、稀代の流行作家の人生絵巻。
月夜の中、辻斬りから老人を助けた浪人・雁野直春。彼は幼くして両親を亡くすも養父母の愛情に育まれ、まっすぐな好男子に成長していた。救った老人ー忠兵衛は手習所を営んでおり、直春の人柄を見込んで後を継いでくれないかと依頼してきた。逡巡も束の間、忠兵衛の子どもの育て方に共鳴した直春は依頼を快諾し、「薫風堂」の看板を掲げた。だが直春は、人には言えぬ複雑な家庭事情を抱えていた…。
鏡磨ぎ・梟助さんの腕前に惚れ込んだ愚翁が切りだした、隣家の話。主人が寝ている隙に侵入した泥坊が、酒の誘惑に勝てず酔いつぶれて大鼾。間抜けな泥坊がどうなったかという結末を聞いて「まるで落語に出てきそうですね」と梟助さん。勢い話は落語に登場する泥坊づくしとなりまして…好評シリーズ第四弾!
奉公先から大金を盗んだ女が、斬首の間際、首斬り浅右衛門の直弟子に託した悲痛な願い。名作落語「らくだ」をモチーフに描く、極限状態に追い込まれた人間の本性。素浪人矢吹平八郎が知り合った、幼子のため必死に働く女に忍び寄る不穏な影ーときに己を奮い立たせ、ときに誰かを救う力となる、たぎる“怒り”を三人の名手が活写した、豪華アンソロジー第二弾。
「ねえねえ梟助さん、聞いて聞いて」話し上手で聞き上手の鏡磨ぎ師・梟助じいさんは今日もひっぱりだこ。五歳で死んだ子供が別の夫婦の子として生まれ変わっており、飼い犬が思わぬ証言をした!?という噂から、犬が人に、人が人に生まれ変わったらと思わぬ方向へ話は広がり…切なくも温かいシリーズ第三弾。
「遊び奉行」とは、禄高の割に月に一日の勤めでよいことから裁許奉行に付けられた別称である。藩主の長男ながら側室の子ゆえに、家老家に婿入りした九頭目一亀は、武士には禁じられている園瀬の盆踊りを踊った罪で、その暇な奉行に降格させられた。愚兄と誹られた振る舞いだったが、その陰には乱れた藩政を糺すための遠大な策略が!清冽で痛快な傑作時代小説。
流しの鏡磨ぎ師の梟助さんは、話し上手で聞き上手。江戸の町には梟助さんの噺を楽しみに待ってる人がたくさんいます。古い鏡にただならぬものを感じ、精進潔斎して鏡磨ぎの仕事に挑む表題作など全五篇。
腕利きの鏡磨ぎである梟助じいさんは、落語や書物などの圧倒的な教養があり、人あたりもさわやか。さまざまな階級の家に入り込み、おもしろい話を披露し、ときにはあざやかに謎をときます。薀蓄は幅広く、情はどこまでも深い。このじいさんの正体やいかに…。江戸の“大人”を描く、待望の新シリーズ誕生!
平和な里で突如、花火が鳴り響いた。軍鶏侍・岩倉源太夫が住む園瀬藩緊急の報せだ。番所に急行する藩士たち。現地には何の異変もなかったが、源太夫は公儀の企みであると看破。さまざまな疑惑が浮かぶ中、園瀬が最も沸く、盆踊りの季節がやってこようとしていた。もしや、狙いは祭りそのもの…。源太夫は園瀬の民を守れるのか。シリーズ初長編、緊迫の第六弾。