小説むすび | 著者 : 野谷文昭

著者 : 野谷文昭

20世紀ラテンアメリカ短篇選20世紀ラテンアメリカ短篇選

出版社

岩波書店

発売日

2019年3月16日 発売

ジャンル

ヨーロッパの前衛、熱帯の自然、土着の魔術と神話が渾然一体となって蠱惑的な夢を紡ぎだす大地ラテンアメリカーー。ガルシア=マルケス、バルガス=リョサなどはもちろん、アストゥリアス、パスなどの先行世代、アジェンデ、アレナスなどのポスト・ブームの作家まで、20世紀後半に世界的ブームを巻き起こした南米文学の佳篇16篇。 1 多民族・多人種的状況/被征服・植民地の記憶  青い花束……………オクタビオ・パス  チャック・モール……………カルロス・フエンテス  ワリマイ……………イサベル・アジェンデ  大帽子男の伝説……………ミゲル・アンヘル・アストゥリアス  トラスカラ人の罪……………エレーナ・ガーロ  日 蝕……………アウグスト・モンテローソ 2 暴力的風土・自然/マチスモ・フェミニズム/犯罪・殺人  流れのままに……………オラシオ・キロガ  決 闘……………マリオ・バルガス=リョサ  フォルベス先生の幸福な夏……………ガブリエル・ガルシア=マルケス  物語の情熱……………アナ・リディア・ベガ 3 都市・疎外感/性・恐怖の結末  醜い二人の夜 ……………マリオ・ベネデッティ  快楽人形……………サルバドル・ガルメンディア  時 間……………アンドレス・オメロ・アタナシウ 4 夢・妄想・語り/SF・幻想  目をつぶって……………レイナルド・アレナス  リナーレス夫妻に会うまで……………アルフレード・ブライス=エチェニケ  水の底で……………アドルフォ・ビオイ=カサーレス  解 説(野谷文昭)  初出一覧

チリ夜想曲チリ夜想曲

饒舌に隠された沈黙の謎  死の床で神父の脳裏に去来する青春の日々、文学の師との出会い、動乱の祖国チリ、軍政下の記憶……作家の死の3年前に刊行された、後期を代表する中篇小説。  語り手はチリ人の神父セバスティアン・ウルティア=ラクロワ。カトリックの一派オプス・デイに属し、詩人で文芸評論家でもある神父は、信仰心に篤く、心穏やかな日々を送っていた。ある日、突然「老いた若者」がやってきて、サンティアゴの家のドアをノックするまでは……  「老いた若者」はウルティア=ラクロワにしか見えない存在らしく、かつての神父の「沈黙」を盛んに責め立て、罵倒する。ウルティア=ラクロワは自らの言葉にも、沈黙にも責任があると応じ、残された力を振り絞って必死の弁明を試みる。  熱に浮かされた神父の、ときに幻覚も入り交じる独白を通じて、祖国チリが辿った苦難の歴史が浮かび上がる。実在した文芸評論家に想を得た人物フェアウェル、ノーベル賞詩人パブロ・ネルーダらが登場、クーデターを率いた独裁者ピノチェト将軍と対面する戦慄の場面もあり、二度と戻ることのなかった祖国チリに寄せる作家のアンビバレントな思いが読者の胸に突き刺さる。

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