著者 : 金子浩
アーシュラ・K・ル=グイン賞特別賞受賞作。未知のパンデミックに襲われ、人々の絆や社会が崩壊しかけた近未来。余命わずかな子供たちを安楽死させる遊園地で働くコメディアンの青年、亡くなった人との短い別れを提供するホテルの従業員、地球を離れて新天地をめざす宇宙移民船…消えない喪失を抱えながらも懸命に生きる人々の姿を描く、切なくも美しい新鋭の第一長編。
温暖化が進行し環境悪化に苦しむ22世紀の地球。貧しいコンピュータ技術者アイヴァン・プリチャードは、一攫千金を夢見て、小惑星帯へと向かう探鉱船“マッド・アストラ”に乗り組む。だが、探査の末、乗組員全員が大金持ちになれるほどの重金属を豊富に含む小惑星を発見したまさにその時、恐るべき悲劇がプリチャードを襲う…はるかな過去に超文明の尖兵が仕掛けた卑劣な罠に敢然と挑むひとりの男の孤独な戦いを描く!
あなたに初めて会ったとき、それがわたしの人生が終わった瞬間だったーわたしはダク。11年前の夜、巨大なクルミのような形をした小型宇宙船が、町の海沿いにあった海軍基地に墜落した。それはやがて“物体E”と呼ばれるようになり、研究所に姿を変えた基地で秘密裏に研究されていた。わたしはそこの警備主任だった。そしてあの日、わたしの部下として新人警備班員のあなたが配属されてきた…驚愕のサスペンスSF!
息子のために殺人を犯し、終身刑で服役中のフランクは、火星基地建設プロジェクトへの参加を持ちかけられる。刑務所で人生を終えるか、火星で生きるかー後者を選んだフランクをはじめ、プロジェクトの参加者は老若男女の囚人7名。だが彼らは火星でひとりまたひとりと命を落としていく。酸素不足、過量服薬、二酸化炭素中毒…これは事故なのか、自殺なのか、それとも?ディック賞受賞作家が贈る火星サバイバルSF。
アザーズ侵攻からパヴ人の星系を守るための戦いは敗北に終わった。しかもその戦闘で、敵に地球の位置を知られてしまう。つぎに狙われるのは地球だ!ボブたちは必死で対抗策を考えるが、対処しなければならない問題はほかにも数多くあった。ポセイドンの独裁者政権、ブラジルの複製人メデイロスの攻撃…そんななか、ついに強大なアザーズの艦隊が襲来する。地球防衛のために集結した500体のボブは…3部作、堂々完結!
ソフトウェア会社の社長兼プログラマーのボブ・ジョハンスンは、SF大会の会場で交通事故にあい死亡した。目覚めてみると、なんと117年後、キリスト教原理主義国家となったアメリカで、恒星間探査機の電子頭脳になっていた!はからずもほぼ無尽蔵の寿命と工業生産力を手に入れたボブは、人類の第2の居住地を探して近隣の星系を探索し、つぎつぎに新発見や新発明を成し遂げていく!傑作宇宙冒険SF、3部作開幕篇!
空飛ぶ自動車にロボットメイド、宇宙観光…かつて人々が夢見た輝かしい未来が実現したもう一つの2016年からぼくはやってきた。きみたちの“間違った世界”に。この世界がディストピアになったのは、すべてぼくのせい。クリーンなエネルギーを無限に生みだす革命的装置ゲートレイダー・エンジン起動の瞬間に、ぼくが立ち会わなければ…。世界を変えてしまった残念な時間航行士の冒険を描く、可笑しくも哀しい時間SF。
暴走人工知能×スペースオペラ。ケイディが恋人エスラと別れた日、宇宙船団により彼らが住む辺境の惑星は侵攻を受けた。星際企業戦争に巻きこまれたのだ。人々は3隻の宇宙船で脱出をはかるが、最寄りのジャンプステーションまでは半年以上航行する必要がある。いずれ追手の敵戦艦に追いつかれてしまうだろう。さらに、船内に危険なウイルスが蔓延していると判明する。そのうえ、船の人工知能が乗員に危害を加えようとしていた…メール、チャットや軍の報告書、復元された文書ファイルでつづられた異色SF。
西暦2312年、人類は太陽系各地で繁栄しつつも、資源格差や環境問題をめぐり対立を深めていた。そんななか、諸勢力共存の要だった水星の大政治家アレックスが急死。彼女の孫スワンは、祖母の極秘の遺言を届けに木星の衛星イオに赴く。地球を訪れたのち水星に戻ったスワンは、移動都市を襲う隕石衝突に巻きこまれる!『レッド・マーズ』の著者による3度目のネビュラ賞受賞宇宙SF。
生後6カ月でリズムと音程への才能を認められ、2歳にして音楽の天才と評されたクリスチャン。人里離れた森の奥で、いっさいの人工的な音から遮断され、ただ鳥の声や風の歌声だけを聴いて育った彼は…表題作ほか、異星人の攻撃から地球を守るため設立されたバトル・スクールで最高の成績を収めた少年エンダーの成長を描く処女作「エンダーのゲーム」(短篇版)など、独創的なアイデアと奔放華麗な想像力で描く傑作11篇。
化学物質の摂取過剰のために、出生率の低下と痴呆化が進化したニューヨーク。下水ポンプ施設の職員の視点から、あり得べき近未来社会を鮮やかに描いたローカス賞受賞の表題作、石油資源が枯渇して穀物と筋肉がエネルギー源となっている、『ねじまき少女』と同設定のアメリカを描きだすスタージョン賞受賞作「カロリーマン」ほか、全10篇を収録。数多の賞に輝いた『ねじまき少女』でSF界の寵児となった著者の第一短篇集。
少年は、14歳の誕生日のあと間もなく、農場を出て街をめざす自分を、毎夜夢に見るようになった。だが、彼の行動はある強固な意志によって制御されていた…。現代SFのトップランナー、イーガンによる本邦初訳の表題作。スタージョン記念賞を受賞したマルセクの究極のVRSF「ウェディング・アルバム」ほか、ブリン、マクドナルド、ソウヤー、ストロスら現代SFの中心作家が、変容した人類の姿を描いた全12篇を収録。
すべては、若き古美術商アレックス・ベネディクトと、その相棒の美人宇宙船パイロット、チェイス・コルパスのところに持ちこまれた、ひとつのカップから始まった。一見したところありふれたカップだったが、コンピュータの解析によれば、およそ9000年前に造られたものと判明したのだ。しかもそこに描かれている古代文字から、抑圧的だった当時の地球を脱出してユートピアを築くべく出発したものの、その後消息を絶ち、いまでは伝説と化している宇宙船“探索者”の備品であることが確定したのである!もし、いまも銀河のどこかを漂っているこの宇宙船を発見できれば、巨万の富は約束されたようなものだ。しかも“探索者”が見つかれば、彼らが移住したといわれる植民星マーゴリアも発見できる可能性はきわめて高い。そうなれば、史上空前の大発見だ!かくて調査を開始したアレックスは、かすかな手掛かりから次々に新事実を手繰りだしてゆく。そしてアレックスの指示のもと、チェイスは愛機“ベルマリー”を駆ってリムウェイを飛び出し、テレパシー能力を持つアシユール人の惑星や、人類の故郷である地球にまで赴いて調査を続けるが…!?2007年ネビュラ賞最優秀長篇部門受賞作。
数学者チューリングが基礎を築いた数学的魔術により、平行宇宙から魔物じみた異生物が侵入してくる怖れがあることが判明した。この魔術的災厄の防止を目的として、英国政府が設立した組織が“ランドリー”である。ボブ・ハワードはこの秘密組織の新米エージェント。初の現場任務は、アメリカからの帰国を希望する大学教授との接触だった。哲学教授で赤毛美人のモーは、自分では気づかぬうちにオカルト的国防にかかわる研究をしていたため、アメリカ政府から帰国を許されなかったのだ。たんなる調整だけの初級任務のはずだったが、中東系テログループに彼女が誘拐されたことから事態は一変する。SWATチームの突入により彼女は無事奪還されたが、テログループの目的は謎だった。リーダーらしき人物がドイツ語を話していたことから、背後にナチス・ドイツの魔術研究機関アーネンエルベとの関連も推測された。真相究明のため、ボブとモーの二人は、アーネンエルベの資料があるアムステルダムの残虐行為記録保管所へと向かうが…!?表題作「残虐行為記録保管所」と、その続篇で2005年ヒューゴー賞ノヴェラ部門受賞作の「コンクリート・ジャングル」の2篇を収録したSF+クトゥルー+スパイスリラー。
1958年の夏。当時、12歳のわたし(デイヴィッド)は、隣の家に引っ越して来た美しい少女メグと出会い、一瞬にして、心を奪われる。メグと妹のスーザンは両親を交通事故で亡くし、隣のルース・チャンドラーに引き取られて来たのだった。隣家の少女に心躍らせるわたしはある日、ルースが姉妹を折檻している場面に出会いショックを受けるが、ただ傍観しているだけだった。ルースの虐待は日に日にひどくなり、やがてメグは地下室に監禁されさらに残酷な暴行をー。キングが絶賛する伝説の名作。