著者 : 鈴木涼美
2025年に取り壊しが決まっている期限つきの“棲み処”。そこで生きる人間たちの「欲望」を描いた著者初の連作集! 俗世というジャングルをサバイブする男女はアニマルか。 グランドホテルならぬグランド古マンション形式の物語は、混沌として続いてゆく。----桐野夏生氏 両親が離婚し、母とふたりで暮らしている高校生の羽衣。母の自己中ぶりには慣れたが、母の今の恋人のことは心底気にくわない。その男と別れてくれたら母の全てを許してやるのに。 「501号室 十七歳はこたつで美白に明け暮れたい」 十年以上ホストとして生きてきた春樹。いずれは店を辞め同棲中の女を実家に連れていこうと考えていたが、女は勝手に出ていってしまい……。 「309号室 三十三歳はコインロッカーを使わない」 子どもが欲しいかどうかもよくわからないまま卵子凍結することを決めた有希子。人生の選択を先送りする最良の方法だと思ったけれどーー。 「403号室 三十九歳は冷たい手が欲しい」 ほか、全7篇を収録 【目次】 204号室 二十八歳は人のお金で暮らしたい 403号室 四十三歳はどうしても犬が飼いたい 402号室 八歳は権力を放棄したい 501号室 十七歳はこたつで美白に明け暮れたい 309号室 三十三歳はコインロッカーを使わない 403号室 三十九歳は冷たい手が欲しい 1階 二十六歳にコンビニは広すぎる 【著者プロフィール】 鈴木涼美 (すずき・すずみ) 1983年東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部在学中にAV デビュー。その後はキャバクラなどに勤務しながら東京大学大学院社会情報学修士課程修了。修士論文はのちに『「AV 女優」の社会学』として書籍化。2022 年『ギフテッド』が第167 回芥川賞候補作、23年『グレイスレス』が第168 回芥川賞候補作に。他の著書に『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』『浮き身』『トラディション』『YUKARI』『娼婦の本棚』等多数。
『ギフテッド』『トラディション』著者が描く、『源氏物語』を題材とした歌舞伎町文学の新境地。 三浦瑠麗氏推薦「与えたい女、奪う男ーー「多情」の心の裡がみごとに綴られている。」 【あらすじ】 婚約者との結婚を控え、何の不自由もなく暮らしていた紫。あるダンサーとの過ちを機に、高校時代に惹かれた柿本先生に手紙を出すことに。そこで綴られるのは、幾度となく先生が話してくれた『源氏物語』のことだったーー。 【本文より】 私はどれか一人の女ではない、また私と同じ店で働いてきた四十も五十もいる女たちがそれぞれいずれかの女性像に似ているのではないのです。お客が次々に女を変えて、多様な女たちが彼の夜の生活を彩るわけではない、私たちは一人であるのです。 【目次】 ■一の手紙 浅茅が露にかかるささがに ■二の手紙 山の端の心も知らで行く月は ■三の手紙 波路へだつる夜の衣を ■四の手紙 嘆きわび空に乱るるわが魂を ■五の手紙 今はかひなき恨みだにせじ ■六の手紙 風に乱るゝ萩の上露 ■七の手紙 草の原をば問はじとや思ふ
もうすぐ子供を産めなくなる私は、恋人と深刻な喧嘩をした翌日、かつて暮らした歓楽街へと赴く。その地に近づくにつれ、デリヘル開業を目指す若者たちと過ごした「十一階の部屋」の記憶が、強烈な匂いを伴って私の脳内に蘇るー。セックス・ドラッグ・バイオレンス+フェミニズムを描いた新境地!
ポルノ女優たちに化粧を施す仕事をしている「私」森の中に佇む邸宅での祖母との静かな暮らし。あまりに対極的な二つの世界が交錯する。アダルトビデオ業界に生きる女の倫理観とは?「性と生」のあわいを繊細に描いた鈴木涼美の新境地。第168回芥川賞候補作。