著者 : 長野まゆみ
学生課で紹介された猫シッターのアルバイトで、一郎は“猫飼亭”なる屋敷を訪れる。家主とその美しい兄弟の奇妙な注文に応えるうちに、彼は不思議な世界をのぞくことになり…庭の桜に誘われた“猫飼亭”を訪れる者たちが見た「極楽」を描く、4つの物語。
きっとあしたはもっといいことがある。みんながそう信じていた時代の子どものお話です(長野まゆみ)-21世紀になるまであと31年。その年、マボちゃんは11歳。チロリアンテープ、フィンガービスケット、インコのピッピ…小さくも愛おしいコドモノクニから、外の世界を見つめるマボちゃんの日々を描く、なつかしさあふれる連作小説集。
夏の夜届いた“少年電気曲馬団”への招待状に誘われ、ぼくはお台場へと向かっていた。しかし、遊覧船は知らぬまに“日付変更線”を超え、船で出会った紺という名の少年と二人、時をスリップしてしまう。やがてぼくらは、東京タワァ完成祝いの点灯式を見にいくのだが…単行本を大幅改稿。空中電氣式人形の秘密が、今明らかに。
17歳も年上の兄・朋彦に引き取られることになった史生。兄が教師を勤める学校に転校した彼は、そこで朋彦を慕う二人の少年に、少々手荒な歓迎を受ける。朋彦を自分だけの兄にしたいのだという彼らに、次第に史生は心を通わせるようになって…限られた時を生きる十四歳の少年たちの心の交流を描いた、感動の名作。
きみがそうやって生きているのは、おれがまだタマシイをつかまえているからなんだぜーウヅマキ商會を営む橘河にタマシイを拾われた岬。蛇を捕まえたり、昭和32年生まれの少年に傘を届けたり、アルバイトとして様々な雑事を引き受けるが、背後には常に怪しげな気配が…。時空を超えて煌く8篇の和風幻想譚。
希いを叶える貝殻細工の小箱から…置き薬屋が残した試供品の酔い止めから…朝顔市で買った夕顔の鉢植えから…和泉屋の苺のショートケーキから…骨董商で見つけた蓋つきの飯茶碗から…思いがけないことから、彼らの運命は動きはじめる。或るときは異界と交じり、或るときは時空を超え、妖しく煌く14の極上短篇集。
放浪癖のある父に連れられて転校を繰り返す岬は、中学二年の秋にたどりついた山間の町で、小柄な少年・賢彦に出逢う。学級のリーダー・北浦と、賢彦との微妙な関係。賢彦は二年前、忽然と現れる幻の湖で神隠しに遭い、ふらりと戻ったというのだが…。わずか三日間の邂逅、そして別離。時を超えるみずみずしい成長物語。
夏休暇も間近なある日、湾岸校に通う温は、ルビと名乗る少年から「契約」をもちかけられる。無口な少年と、手癖のわるい女の子、二つの人格をそなえたルビを、離れて暮らす母は「あなたの弟よ」というのだがー。生殖医療の発展した近未来を舞台に、人をこの世につなぎとめる愛、血脈を越える絆を描き出す傑作長篇。
弟は隣家から聞こえてくるユーモレスクが好きだった。六年前に行方不明になった弟・真哉。鏡合わせに一棟を分けた隣家は、それ以来「近くて遠い」場所となった…。不在の人の記憶が紡ぎ出す切ない物語。
1976年初冬。由緒ある華道家元の若き跡継ぎである原岡凛一は、従姉・省子の男ともだちだったアメリカンフットボール部のエース氷川享介と出逢う。その邂逅が、やがて二人の運命を変えていくことに…。冬から春、やがて夏へと移ろう季節の中で、彼等の思いはどこへ向かうのか。凛一の希みは叶えられるのか。少年たちの切ない恋を描く好評シリーズ第一弾。
水琴窟という、庭先に水をまくと珠をころがすような安らかな音が鳴る仕掛け。操がそれを初めて知ったのは至剛の家の庭だった。孤独な転校生だった操を気遣ってくれた爽やかな少年至剛。しかし、快活そうに見えた彼には、避けがたい死が迫っていた。病床の至剛の求めるまま、操は庭の水琴窟を鳴らすのだが…。少年たちの孤独と淡い愛情、儚い命の凛々しさを描く表題作など珠玉の短編五編。
その少年の肌は、あの碗の青貝のようで妙に照るんです…雨夜に哉を抱いたのは幽霊か?美しい教師に愛された少年は本当は誰なのか?雨にけむる生と死のあわいで揺れ動く魂の交流を描き絶賛された珠玉作。