著者 : 長野まゆみ
日常のなにげないひとこと。その言葉をふと拾ってみれば、酩酊をさそう25の物語がゆらりとあらわれる。不気味な話、怖い話、しみじみする話、苦笑いする話、不思議な話、にやりとする話、呆然とする話、あざやかな話、びっくりする話、泣ける話、笑うしかない話、感動する話…。百花繚乱!長野まゆみワールド。
春の名残が漂う頃、隠れ宿「左近」の長男・桜蔵のもとに黒ずくめの男が現れる。タマシイを喰う犬を連れた男、髪や皮をわがものにしようとする男、この世の限りに交わりを求める男…行きずりのあやかしたちをついひろってしまうらしい桜蔵は、そこで彼らのほしいままにされ…酔いしれるような夢と現、濃厚にたちのぼる死の気配と生とのあわいを往還しながら繰り広げられる、蠱惑の幻想譚。
武蔵野にひっそりとたたずむ一軒の古屋敷。そこは、世界をはばかる逢瀬のための隠れ宿「左近」である。十六歳になる長男の桜蔵は、最近どうも奇妙な男にかかわることが多い。生まれながらの性質なのか、その気もないのに、この世ならざるあやかしたちを引き寄せてしまうのだ。彼らは入れかわりたちかわり現れては、桜蔵を翻弄するのだが…。これは夢か現か、人か幻かー。生と死の境をゆきかう、いともかぐわしき物語。
昭和二〇年八月六日、広島は雲ひとつない快晴だったー東京の女学校に通う十五歳の珠紀。戦争の影が濃くなるなか、友人たちは次々軍人に嫁いでゆき、珠紀は従弟の担任教師と結婚する。だが突然、夫は軍に志願したため、二人で過ごせる時はたった一週間しかなかった。珠紀は姑と暮らすため広島へ移り、やがてその地で運命の日を迎えることに…。少女たちの目から原爆を描き話題となった名作。
謎の航海日誌「カルトローレ」を託された青年・タフィ。彼はかつて大空を航行していた巨大な“船”の乗員だったが、“船”は空から沈み、乗員たちは地上に帰還したという。その理由は。他の乗員たちの運命は。幾重にも折り畳まれた記憶の迷宮が開く時、“船”とタフィの出自の秘密が明らかになるー。豊かな想像力を駆使して硬質な物語を創造してきた著者による数奇で壮大な最高傑作。
スワンは兄と二人暮らし。13歳の誕生日、立て続けに三人の少年から“王子”に間違えられた。“超”の最中に事故にあい、行方不明になっている王子にそっくり、というのだ。本当の王子はどこに?…“超”する少年たちの出会いと別れを描く“超”人気作、待望の文庫化。
両親の離婚により転校することになった音和。野川の近くで、彼と父との二人暮らしがはじまる。新しい中学校で新聞部に入った音和は、伝書鳩を育てる仲間たちと出逢う。そこで変わり者の教師・河合の言葉に刺激された音和は、鳥の目で見た世界を意識するようになり…。ほんとうに大切な風景は、自分でつくりだすものなんだ。もし鳥の目で世界を見ることが、かなうなら…伝書鳩を育てる少年たちの感動の物語。
銀色と黒蜜糖ー。白い野ばら咲く庭に住みついた2匹の美しい猫と同じ名前を持った2人の少年は何者なのか?目覚める度により深い眠りにおちてゆく少年月彦。その不思議な夢の中で繰り広げられた真夏の夜のフェアリー・テール。
水天宮の段々坂に鈴の音が鳴ると、ぼくの兄さんとよく似た少年が現れる。歳の離れた姉さんは言う。ぼくには六歳で死んだもう一人の兄がいたのだと。兄さんは作り話だと笑うのだが…著者が初めて子どものために書下ろした珠玉作。
ケンタウリ・プロキシマ。“星の名前”を教えてくれた宵里という名の少年は、いつもアビを魅了してやまない。ソォダ水のはじける音、天使の枕、流星群の観測…秋の新学期から、翌年の夏期休暇まで、二人が過ごした一年足らずの日々を描く。幻の初期作品四冊が、今一冊になって甦る。
太陽から二億三千万キロ離れた夏星。そこではP.U.Sという先天的病気の因子が住民を蝕み、人々は“新世界”への渡航を夢見ていた。斡旋住宅で兄シュイと二人きりで暮らすイオ。彼の元に残された謎の物質“ゼル”とは何か?二人を巻き込む壮大な闘いが今、始まる。超人気シリーズの第一巻。
“ミンクを収容施設から連れ出せ!”シュイは、主治医ソレンセンからの指令を受け施設に侵入するが、襲撃を受け格闘するうち、傍らで何者かが燐光を起こす…徹底的に監視され孤独を深めゆくシュイの姿を描く巨篇・第二部。謎の物質“ゼル”をめぐる争いは混迷を深め、少年たちの運命の歯車が回りだす。
「希んだら、あなたの手で殺してくれますか」-イオの放った紡錘の直撃を受け意識を失ったシュイ。傷を負い、目醒めた彼のもとに戻ってきたのはイオではなく“ミンク”だった。二人は果たして別人なのか?衝撃の展開が訪れるシリーズ第三部。翻弄される“兄弟”の運命は?長野まゆみロング・インタヴュー(後篇)付。
「ミンクが覚醒すれば、イオは消滅します…あなたはそれで平気なんですか」-美貌の亜人ジャウが、シュイに近づく時、最も危険な人物の影もまた忍び寄っていた。超人気巨篇シリーズ、ついにクライマックス突入!最後の闘いが今、始まる…。新世界をめぐるQ&A/長野まゆみ自身による図解・カバーイラスト集付。