著者 : 長野まゆみ
古いフランス製の家計簿に書きこまれた膨大な文書を翻訳してほしい、と文化人類学者河島からの依頼。最後にVincent van Goghと署名があって、ゴッホ直筆かもしれない。しかも署名付き家計簿は二冊存在するという。贋作ならば、なぜ複数必要だったのか。ぼくは翻訳を進めるいっぽう、家計簿の来歴を追った。だが、謎は深まるばかりだった。
武蔵野の隠れ宿を実家に持つ桜蔵(さくら)は、霊園行きのバスの中で奇妙な出来事に遭遇する。祖父の遺品に導かれるように、消えた茶碗の行方とみずからのルーツを追って異界めぐりの旅がはじまる。
綿柎開(わたのはなしべひらく)、水始涸(みずはじめてかるる)、朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)--。 季節を表す言葉を鍵に、物語は膨らんでゆく。 十二人の作家の想像力で、旧暦「二十四節気七十二候」が現代の物語に生まれ変わった。 六世紀ごろに大陸から伝わり、改暦を重ねながら明治の初めまで用いられてきた旧暦。そこには春夏秋冬の四季に留まらない、さらにこまやかな季節が織り込まれている。 大暑や立秋、大寒といった季節の節目を表す二十四節気と、「地始凍」「熊蟄穴」など、動植物や空模様がそのまま季節の呼び名に採り入れられている七十二候。 古来伝わる“季節の名前”が現代の作家たちを刺激し、味わい豊かな掌篇に結晶した。 ー旧暦の魅力を知る解説つきー 西村賢太「乃東枯」 重松清「鷹乃学習」 町田康「大雨時行」 筒井康隆「蒙霧升降」 長野まゆみ「綿柎開」 柴崎友香「玄鳥去」 山下澄人「水始涸」 川上弘美「蟋蟀在戸」 藤野千夜「霎時施」 松浦寿輝「地始凍」 柳 美里「朔風払葉」 堀江敏幸「熊蟄穴」 白井明大「輪のようにめぐる季節のさなかで 二十四節気七十二候について」 西村賢太「乃東枯」 重松清「鷹乃学習」 町田康「大雨時行」 筒井康隆「蒙霧升降」 長野まゆみ「綿柎開」 柴崎友香「玄鳥去」 山下澄人「水始涸」 川上弘美「蟋蟀在戸」 藤野千夜「霎時施」 松浦寿輝「地始凍」 柳 美里「朔風払葉」 堀江敏幸「熊蟄穴」 白井明大「輪のようにめぐる季節のさなかで 二十四節気七十二候について」
カフェで、ファストフードで、教室で、ケアホームで、一見普通の人物が語りはじめる不可思議な物語。一卵性双生児、夢の暗示、記憶の改竄、自殺志願者など、ちりばめられた不穏なモチーフが導く衝撃の結末。読んでいるうちに物語に取り込まれ、世界は曖昧で確かなことなど何もないと気づかされる戦慄の9篇。
小説好きのみなさん、お待たせしました。日本文藝家協会が毎年編んで読者に贈る年間傑作短編アンソロジー。2018年の1年間に文芸誌などの媒体に発表された全短編から厳選。ベテラン作家から新鋭作家まで、日本を超え、世界を捉え、文学を革新する多彩な書き手15人による注目作、意欲作を選び出す。この一冊で2018年の日本文学を一望できる珠玉の短篇名作選。解説は中沢けい氏。 文通 土脉潤起 どみゃくうるおいおこる 坂をおりる船 ダークナイト・ミッドナイト 本当の旅 ハレルヤ 牡丹華 ぼたんはなさく 風下の朱 巡礼 生き方の問題 チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ 風鈴 永遠のあとに来る最初の一日 残影 野戦病院
あのころ知りあいのだれもがなにかしらのウソをついて暮らしていたーー 長く潜伏したあとでひょっこり姿をあらわした、良く似た姉妹による巧妙なウソ。 郵便受けに届いた1枚の葉書が呼び起こした、弟との30年前の秘密。 「語りとは騙りのことである」とうそぶく読書会の主宰者。 賢治の童話やフランドル派の絵画に秘められた寓意。 そして、記憶を失った青年たちと、自らの物語に生きる老婦人たちーー。 消えゆく記憶の彼方、不在の人物の輪郭から、おぼろげに浮かび上がる6つの物語。 解説・東直子
ジョバンニの旅は終わってもカムパネルラの旅は続く…。あの「銀河鉄道の夜」を今夜、カムパネルラが語りなおします。長野まゆみデビュー30年記念小説。
川の流れる東京の下町で生まれた父は実直な文字職人として穏やかな生涯を送ったーはずだった。死後、折々に亡き父の来し方を思う娘は、親族との会話を通して、父の意外な横顔に触れる。遠ざかる昭和の原風景の中に浮かび上がる敗戦の記憶。著者の実体験をもとにした家族の物語。第68回野間文芸賞受賞作。
きっかけは図書室でみつけた一冊の古書だった。亀甲文字で印刷された中世の書物にぼくは夢中になる。時間旅行装置“デカルコ”で時を隔てた世界を行き来する者たち、その実用化を目指す国際的な研究機関ICOD、突如現れては、運命の女について語って去ってゆく謎めいた少年…メビウスの輪のようによじれた時空間を自在に移動し、かつて栄華を誇った一族の奇妙な足跡と家系図の迷宮を描いた壮大なサーガ。
港町ミロナの地図収集館で働き始めたリュスは救済院育ちの17歳。感情を封じて慎ましく暮らす彼のもとにメルカトルなる人物から一通の手紙が届いたその夜、アパートに見知らぬ女が立て続けに訪ねてくる。以来、彼の周辺で不可解な事件が次々と起こり、リュスの平穏な日々は大きく転回し始めるー謎多き女たち、変死した大女優、紅い封鑞つきの手紙…やわらかな心をくすぐるロマンチックな冒険活劇。
男同士が忍び逢う宿屋「左近」の長男、桜蔵(さくら)は高校を卒業し、大学に進学。それを機に実家をはなれ、父の柾とその正妻と同居することになる。しかし、やっかいなものを拾う”体質”は、そのままで…… 大雨の朝、自転車通学の途中で事故にあい、迷いこんだ先は古着を仕立て直すという〈江間衣服縫製所〉。その主の婆さんは着ていた服で浮き世の罪の重さをはかり、つぎに渡る川や行き先を決めるというーーこの世ならざる古着屋や巡査との出逢い、境界をまたいで往き来する桜蔵の命運やいかにーー!?(この川、渡るべからず) 匂いたつかぐわしさにほろ酔う、大人のための連作奇譚集。
大学進学のために上京した鳥貝一弥17歳。東京でのアパート探しに行き詰まっていたところ、 いい部屋があると薦められて訪ねた先は高級住宅街の奥に佇む洋館だった。条件つきだが家賃も破格の男子寮だという。共同生活を営んでいるのは揃ってクセのある男たちばかり。先輩たちに翻弄されながら戸惑いつつも、幼い頃の優しい記憶の断片を甦らせ、自らの生い立ちと向き合っていく鳥貝。艶っぽくて甘酸っぱい極上の青春小説! 【本書は2009年11月に筑摩書房より刊行された単行本『白いひつじ』を改題のうえ、加筆修正して文庫化したものです。】
村田喜代子×酒井駒子「手なし娘協会」 長野まゆみ×田中健太郎「あめふらし」 松浦寿輝×及川賢治(100%オレンジ)「BB/PP」 多和田葉子×牧野千穂「ヘンゼルとグレーテル」 千早茜×宇野亞喜良「ラプンツェル」 穂村弘×ささめやゆき「赤ずきん」 6人の作家×6人の画家による夢のコラボレーション 斬新な解釈による大人のための新しいグリム童話集!
複雑な関係ながら、皆個性的で仲がいい宝来家で飼われることになったネコ兄弟、チマキとノリマキ。一家の息子のカガミさんは、みんなの健康のために美味しくてヘルシーな料理を日々作り続ける。そんな彼が気になっているのは居候の桜川くんなのだが…。著者真骨頂、ネコ目線のほっこり「不思議家族」物語。
アナナスとイーイーは“鐶の星”の巨大なビルディングで同室に暮らしている。二人は、父と母が住むという碧い惑星に憧れ、帰還を夢みている。出口を求めて迷路をひた走る二人に脱出の道はあるのか。そして、碧い惑星はまだ存在しているのか?…SF巨篇を一冊で待望の復刊!
川辺の下町、東京・三河島。そこに生まれた父の生涯は、ゆるやかな川の流れのようにつつましくおだやかだったー。そう信じていたが、じつは思わぬ蛇行を繰り返していたのだった。亡くなってから意外な横顔に触れた娘は、あらためて父の生き方に思いを馳せるが…。遠ざかる昭和の原風景とともに描き出すある家族の物語。
海沿いの小さな町で暮らす中学三年生の一。人に云えない不安を抱えつつも平穏だった学校生活は、いわくつきの転校生・七月の登場で様変わりしてゆき……繊細にして傲慢な少年たちの夏を描いた傑作青春小説!