著者 : 高儀進
ロンドンから飛行機に乗って一路ハワイへ、格安チケットでお見舞いに。トラベルワイズ・ツアーズの一行と英国人父子がくりひろげる、どこまでも愉快な物語。はたしてホノルルは、この世のパラダイスなのか?コミック・ノヴェルの第一人者デイヴィッド・ロッジが贈る、待望の最新長編小説。
妻を殺そう。そう思いたってからというもの、ヘンリーの頭の中は、太った醜悪な妻をどうやったら始末できるかということで、いっぱいだった。絞め殺す。崖からつきおとす?それとも、自動車に細工して事故に見せかける。いや、毒殺がいい。毒殺こそ、わが大英帝国の伝統と誇りにつちかわれてきた、秘めやかで美的な殺人方法だ。これでいくしかない。手段が決まると、ヘンリーはさっそく下調べをはじめ、タリウムという無味無臭の毒薬があるのを知った。これを料理にふりかければ、健康食品しか食べない妻のエリナーも、なんの疑いももたずに口にするだろう。だが、ヘンリーの細やかな気配りと努力にもかかわらず、妻はそう簡単に毒殺させてはくれなかった。のどかな郊外住宅地を舞台に、さえない中年男が妻をこの世から抹殺すべく、あの手この手の大奮闘をくりひろげる、ブラック・ユーモアたっぷりの英国ミステリ。
ノース・カロライナの小都市ヒルストンでは、二つのことはそうたびたびは起こらない。雪はたいして降らず、人はめったに殺しあわない。ところがその冬は、その二つのことが同時に起きた。ドラード上院議員の妻クローリスが自宅で殺害され、銀器と高価なコインのコレクションが盗まれたのだ。単なる物盗りの犯行かと思われたが、捜査を任されたジャスティン・サヴィル警部補は、真相はほかにあるとにらむ。その矢先、クローリスの友人で、かつて警察に協力して難事件を解決したこともある霊能者のジョアンナが、殺人当夜、クローリスの夢を見たと証言する。夢の中で血まみれのクローリスは、自分は前夫ベイントンの死が原因で殺されたと告げたのだ。ジョアンナによれば、事故死したとされるベイントンもまた何者かに殺されたというのだが…。南部の小都市を舞台に、名門の一家に起きた殺人が政財界を巻き込んで思わぬ展開を見せる。書評子絶賛の傑作『最終法延』の姉妹篇をなす警察ミステリ。
100年前のフロリダ-無法の辺境地帯。貧しい白人の入植者、黒人逃亡奴隷の子孫、インディアンなどが流れこむ混沌としたこの地に、謎の男エドガー・J・ワトソンはやって来た。マングローブの茂る湿地帯で他の入植者が苦闘している間に、ワトソンは有能な農園主としてたちまち頭角を現わす。しかし、一方では黒い噂が囁かれていた。一見して完壁な紳士である男が、なぜ地の果てまで流れて来て、肌身離さず銃を持ち歩いているのか?もしや、西部の名高いお尋ね者、人殺しのワトソンと同一人物ではないのか?そして、1910年10月24日、最大級のハリケーンが一帯を襲った後の静寂の中、惨劇は起こったのだった-。謎と伝説に満ちた実在の男エドガー・J・ワトソンが、綿密な調査と物語の凄まじいエネルギーによって、神話から蘇る。ナチュラリストとしても高名な著者が、息を呑む迫力のストーリーテリングで描き上げる、自然と人間の叙事詩。