著者 : 高儀進
アルフレッド・ポリーは貧しい商店主の家に生まれ、服地商の徒弟になる。父の遺産で自分の店を開いたものの倒産寸前。高嶺の花の少女にふられた反動で結婚した従妹の妻との仲もうまくいかず、ある決心をするー自宅に火を放って剃刀自殺をし、生命保険と火災保険を妻に遺して不毛な人生に幕を下ろすのだ、と。一九一〇年に発表された、ウェルズ中年期のコミック・ノヴェル。「SFの父」が自身の若き日を投影し、下層中産階級の苦悩をコミカルかつ哀切に描く。作家自ら、最愛の作品と認める自伝的長篇。人生の「おぞましい穴ぼこ」に嵌まり込んだ男の起死回生の物語。本邦初訳!
新聞で「田園便り」を担当する独身男ウィリアムは、手違いから、突如外国特派員に任命される。派遣されたのは、政変が噂されるアフリカの独裁国家。怪しいスパイや政商が暗躍し、ライバル記者たちが報道合戦を繰り広げるなか、ウィリアムは人生初の恋に落ち、思いがけずスクープをものにするのだが…。ウォーが「ジャーナリズムに対する軽い諷刺」と述べている本書は、一九三八年に発表され、今なお「現代の古典」として不動の地位を占めている。二〇〇三年、『ガーディアン』紙上で「古今の名作小説一〇〇」に選出され、二〇一四年、『テレグラフ』紙上においても「絶対必読の小説一〇〇」に選出されている。
1969年、大学で英文学を教えるアメリカ人の教師モリス・ザップと、イギリス人の教師フィリップ・スワローが交換教授となって半年間互いにポストを取り換える。やがて二人は文化的メンタリティーだけではなく、なんと妻をも「交換」することになる…。コミック・ノヴェルの最高傑作を、待望の改訳一巻本で贈る!
親友のたった一言が、運命の歯車を狂わせた…。第二次大戦下のロンドン郊外。「スパイごっこ」をする二人の少年の前に見え隠れする「ドイツのスパイ」、大人たちの秘密、最後に明かされる意外な真相とは?ウィットブレッド小説賞受賞。
有名作家が筆を折った真の理由。作家とその妻、夫妻の旧友で人気脚本家の中年男女3人が胸に秘め、触れられたくない“痛い所”に、若き女性ジャーナリストが辛辣なインタビューで迫る!人生の悲喜劇を軽やかなタッチで描いた最新の傑作中篇。
スコットランドの片田舎でテクノロジーを拒否して、信仰を守りながら暮らす人びとがいた。彼らはラスケンタイアリアンと呼ばれた。癒しの超能力を持つ19歳の少女アイシスはこの教団の次期指導者である。4年ごとの「愛の祝典」が間近にせまったある日、従姉のモーラグから手紙がきた。改宗して教団を離れるという。モーラグを翻意させるため、教団はアイシスをロンドンに派遣することにしたが…テクノロジーの産物である自動車を使うことを禁じられているアイシスは、タイヤチューブの筏に乗って旅に出ることになった。教祖である祖父サルヴァドルの秘密、モーラグの真の生活の秘密、教団創設の秘密、消えた大叔母の秘密、アイシスの超能力の秘密。さまざまな秘密がやがて真実の姿を現わしてくる。
苺畑の広がるサン・ピエドロ島の沖合で、漁網に絡まった死体が発見された。漁師の日系アメリカ人=カズオ・ミヤモトが殺人容疑で逮捕された。島の陪審員は根強い人種遍見を抱いている白人たち。法廷内は緊迫するが、第二次大戦で心に深い傷を負った人々が謎の解明に起ちあがる。英米で各賞受賞の裁判小説。
うだつの上がらない弁護士のヘンリーは、ある日、日頃から憎々しく思っている醜い妻を毒殺する決心をした。ところが、妻を狙ったはずが見当はずれの人間ばかりが次々と死んで、のどかな郊外住宅地は一転、上を下への大騒ぎに…。あの『ウィンブルドンの毒殺魔』事件から数年後、ヘンリーは相変わらず妻に頭が上がらず、一人娘との関係もぎくしゃくしている。今年こそはいい年にしようと年頭の誓いをたてるが、雇ったばかりの掃除婦をめぐって騒動が持ち上がり新年早々なにやら前途多難な予感。果たして、山であやうく遭難しかけたり、漫画雑誌の通信講座に加入したために死ぬほどの恐怖を経験したり、老女連続殺人に巻き込まれたりと、さまざまなトラブルが…。妻殺しに失敗し、戦々恐々とする中年男の身辺で起きる一年間の出来事を、ブラック・ユーモアたっぷりにつづった小粋な連作短篇集。
ノース・カロライナ州の小都市ヒルストンに衝撃が走った。警官を射殺、死刑を宣告された黒人青年ジョージ・ホールの刑執行が、執行前夜、突然、延期されたのだ。人種偏見が色濃く残る州では、この処置をめぐって右翼団体が不穏な動きを開始。市の安全をあずかる警察署長のマンガムは、厳戒体制を敷く。だが、その矢先、死刑囚の弟クープが何者かに射殺された。警察小説のスリルと法廷小説のサスペンスを合わせもつ傑作。
弟クープの殺害事件を捜査するマンガム署長は、死体から発見された銃弾が、ある右翼団体メンバーを射殺するのに使用されたのと同じ銃から発射されたことを突き止める。そのメンバーは、死刑囚ジョージに射殺された警官の義弟だった…。一方、ジョージの裁判は、手続きの不備が判明して再審が決定。敏腕弁護士ローズソーンが弁護を担当して、激しい法廷論争を繰り広げる。法廷でやがて明かされる事件の意外な真相とは。
全米各地で動機のまったく不明な殺人事件が続発していた。被害者は赤ん坊から老人まで多岐にわたったが、手口は共通していた。そんな時、ミネアポリスに住む大学教授のフィルは、旧友サムの招きで孤島を訪れた。だがそこは、サムが指導者として君臨する教団の島で、彼はやがて驚くべき体験をすることに…カルト教団を題材に、気鋭が放つ衝撃のミステリ。
ヴェネツィアで消えた富豪の生死を確かめてほしいー刑事警察のゼンは、昔の恋人から思わぬ仕事を頼まれた。行方不明の男は、彼女の夫が勤める法律事務所の顧客だという。多額の報酬を約束された彼は、口実をつくり生まれ故郷のヴェネツィアに赴く。が、そこで複雑怪奇な事件に巻き込まれることに…英国推理作家協会賞を二度受賞した名シリーズの最新作。
ここは英国のカントリーハウスの一室。一堂に会すは、退役大佐、伯爵夫人、神父、英国の大富豪、等々。この中に冷酷な殺人犯が潜んでいるのだ…と思いきや、実はここは老人ホーム。殺人などは起こっていない。すべては探偵小説好きの老女の妄想なのだ…と思いきや。英国ミステリ界きっての俊英が贈る、才知とたくらみに満ちた本格ミステリ。
サン・ピエトロ寺院のドームで、ミサの最中に一人の男が墜死を遂げた。男の名はルスパンティ。若くして家督を継いだ公爵だった。自殺か、それとも他殺か?ヴァティカンの大司教に請われ、刑事警察のゼンは捜査を開始する。だが、その直後に事件の目撃者がまたもや謎の死を…。英国推理作家協会賞に二度輝き、英国ミステリの新旗手と謳われる著者の注目作。
一枚のフロッピーディスクに、ある大学教授の生涯の記録が打ちこまれていく-。彼の名はレオポルド・スファックス。フランスに生まれ、第二次大戦中には反ナチ運動に参加、その後アメリカに移民し、文芸評論集『悪循環』を発表して、一躍、時代の寵児となった。だが、彼の研究室に「彼女」が現われた日から、スファックスの栄光に満ちていたはずの過去は、もろくも崩れはじめる。そして、ついに起こった忌まわしき殺人-。英国文壇の俊英が技巧の粋を凝らして「究極のフーダニット」に挑む問題作。