著者 : 高杉良
「日本経済の青春期」を型破りに駆け抜けた業界紙記者がいた。裏も表も知り尽くした著者渾身の自伝的経済小説!幻の処女作「自轉車」を特別収録!“昭和三十三年、高校中退の杉田亮平は石油化学新聞社に入社した。「まもなく二十歳、ここにいる誰よりも筆力も取材力もあると思います」。生意気な言葉通りに、彼は持ち前の度胸と機転で、高度成長期の企業トップや官僚と互角に渡り合う。国策会社民営化、エチレン不況カルテル、企業間の技術譲渡…数々のスクープで業界を激震させ、水面下で経済を動かしたのは、毎号わずか四ページの業界紙だったー。”
大日生命社長を務める父の強引な招きで、商社から取締役待遇で転職した広岡厳太郎。「世襲人事」との批判をものともせず、外務の“生保のおばちゃん”に学び、保険の国際化、法人営業部の創設など革新的な新機軸を打ち立てるのだが…。英姿颯爽の快男児を描き、働き方や同族経営の問題に切り込む長編経済小説。
老舗商社が放漫経営で倒産へと追い込まれた。負債総額は一一〇〇億円を超える。会社更生法を申請するも再建にはみな懐疑的。社員とその家族を守るため、保全管理人になった弁護士の宮野英一郎とともに商社再建に賭けた男たちが立ち上がる。企業小説の第一人者が描く感動のビジネス&リーガルストーリー。
世界的規模の石油化学コンビナート建設を進める昭栄化学工業。コンピュータ・コントロール・システムを担う柿崎仁は、完全制御の技術開発の命を受けた。持ち前の熱意と行動力で、画期的な業績をあげるが、その矢先、柿崎の重篤な病が発覚。中国大慶との技術交流も行うが、病魔には勝てず、45歳の若さで逝ってしまうー。多くのプロジェクトを完遂しながらも、白血病に冒されて散った技術者を、感動的に描いた長編経済小説。
岡山に生まれ早稲田大学へと進学した北野譲治は、契約社員として損保会社に就職した。明るい性格で仕事熱心な譲治は、歩合制のこの仕事で優秀な成績を収める。独立した譲治に、「イーパーセル」という電子宅配便を扱う会社の社長から、ぜひ働いてほしいとの依頼が来た。新しいことに挑戦したい譲治は、この依頼を引き受けるが、会社の経営は困難を極めていてー。Googleに勝利し世界に名を馳せたイーパーセル株式会社。熱血社長・北野譲治の驚くべき手腕とは?著者初のITベンチャー小説。
かつて日産自動車に君臨し“天皇”と畏怖された男・塩路一郎。組合員二十三万人の労働組合の総帥として、社長人事に影響を及ぼし、経営を歪め、社内紛争を長引かせる一方、豪華クルーザーで遊び、愛人を囲い、私利私欲を極めた。なぜ彼は権勢をほしいままにできたのか。大企業の病巣に切り込む迫真の実録小説。
かつて卑劣な手段で西田を放逐した、全米第二位の巨大投資銀行が、国際的な金融ショックで青息吐息に。ジャパンマネーに縋ろうとする投資銀行は、米製薬会社の日本法人に勤める西田に接触するがー裏切りが横行し、欲望が渦巻く国際金融戦争に、果敢に立ち向かう若き経済人の大逆転劇!
競合デパートとしのぎを削る大松屋銀座店の法人外商部課長・津川直二郎は、突然、大口顧客から取引停止を通告される。年商二億円の商権を失う危機に、左遷を仄めかす上司。津川が挽回に奔走する最中、妻は不倫に走り、娘は万引き事件を起こし、家庭にも深刻な亀裂が。人生最悪の逆風に直面した男の選択とは?
経済誌「帝都経済」をいつか一流誌に…若手幹部・田宮大二郎の熱意虚しく、オーナー杉野良治の傍若無人ぶりは増すばかり。記事で企業や経営者を槍玉に挙げたかと思うと一転して大絶賛ーすべての沙汰はカネ次第。多方面から巨額の金をせしめていた。さらに大物政治家との関係をちらつかせ財界に食い込んでいく。大物フィクサーの姿から政官財の腐敗した癒着をあぶりだす経済小説の名著。
「帝都経済」誌オーナー・杉野良治は、映画やゴルフ会員権事業など各方面に手を広げ、数々の企業に出資や賛助金を強要し権力を拡大し続けていた。当然、社内でもやりたい放題ー出世・降格はたまたクビも杉野の気分次第。自らが信心する新興宗教に社員を無理やり入信させるなど周囲の人間も限界に。ついに杉野に反旗を翻す男が!日本企業の闇に蠢く人間たちの姿を活写した著者の代表作。
「森を懲戒解雇にするぞ」-。大手合成繊維企業で中堅の有望株と目される森雄造は、川井常務の経営方針を批判して怒りを買う。次期社長を巡る派閥抗争の巻き添えも食い、不当に貶められて馘首の憂き目に。出世の階梯が突如暗転した森は、会社を相手にたったひとりの闘いを挑む。信念を貫いたサラリーマンの勇気溢れる物語。
シェアの下降が止まらず「夕日ビール」と蔑まれたアサヒビールに、住友銀行から乗り込んだ樋口廣太郎。先例にとらわれず、ライバル会社に教えを請い、若い社員を硬軟織り交ぜながら鼓舞して、大胆な改革を次々と実践する。絶対王者を抜き去り業界のトップへと押し上げた逆転劇を、企業小説の名手が鮮烈に描く!
中堅損保、栄和火災海上の相沢靖夫は、秘書室次長で会長付の四十六歳。会長の絵の個展を企画したが、思わぬ窮地に陥ってしまう。絵を貰ったN証券社長から会長に一千万円の商品券が贈られたのを知り、口止め料二百万円を握らされたのだ。苦悩する相沢。そこに強面の経済記者の取材が…。悩みつつも職責を果たそうとする中間管理職を描き、感動を呼ぶ経済小説の傑作。
幼少時に両親と生き別れた苦境を糧に、ロサンゼルスでスーパー経営に成功した日系2世のフレッド・和田勇。7年ぶりに訪日した1958年、親交が厚い日本水泳連盟会長の田畑政治から、オリンピックを東京に誘致したいとの相談を受けた。ラテンアメリカ諸国の票を集めるのが肝心要だと考えた和田は、翌年、中南米を歴訪し、票獲得に尽力する。祖国日本に、勇気と希望を与えたいー。戦後日本の隠れた英雄を描く実話小説。
ヘッドハントされて邦銀を退職、アメリカ系の投資銀行に転職した西田。大手医薬品メーカー同士の対等合併という大型案件に挑むのだがー横取り、リベート、詐欺的商法が横行する外資の暴走。日本経済が蹂躙される実態を描いたベストセラー『小説 ザ・外資』を改題。著者があとがきを新たに寄稿した新装版。
東邦食品工業の創業者で相談役の小林貢太郎が急死した。絶大な権力とカリスマ性で会社を掌握してきた小林の死に、社内は揺れる。大株主でもある小林の妻・晶子の支持を得た社長の筒井節は、周囲を蹴落とし次第にワンマン体制を築きあげていくのだが…。大手総合食品メーカーの創業経営者の突然の死と後継者争いを描き、今日、多くの企業が直面する経営承継問題の本質に鋭く切り込む、著者真骨頂のビジネス小説!
添乗員時代、ツアー客の航空券を忘れる大失態に辞職も考えたJTBの“ずっこけ若手社員”大東敏治。「仕事上の失敗は仕事で返すしかない」。心機一転、OB人脈や顧客の何気ないひと言からヒントをつかみ、前例のない新商品を生み出していく。年金ツアー、積立旅行、デパート共通商品券…。思考停止とマンネリを嫌い、つねに新しい仕事を楽しんだ実在のヒットメーカーの胸のすく半生を描く快作。
日本興業銀行頭取・会長、経済同友会代表幹事を歴任し、「財界鞍馬天狗」と呼ばれた中山素平。新日鐵発足、ジャパン・インドネシア・オイル設立、NTT民営化、国鉄分割、東京ディズニーランド開園…。時代を画する案件の向こうには、必ず彼がいた。格差社会が叫ばれる今日、勁く温かいリーダーの実像を描く傑作。
部下の不祥事の責任を取って退職した証券マンは、チョコレート職人への転身を目指し単身スイスで修業を始める(『エリートの転身』)。派閥争いに巻き込まれ、些細な理由で会社から懲戒解雇にすると脅されたサラリーマンが、重役と刺し違える覚悟で会社に闘いを挑む(『エリートの反乱』)。転機を迎えたサラリーマンの生き方を、厳しくも温かい眼差しで描いた珠玉の4編。組織で働く全ての人たちへの応援歌。著者によるあとがき解説収録。