著者 : 魯迅
日雇いで暮らす「阿Q」という人間を通し、当時の中国社会を風刺的に描く。辛亥革命の失敗点を痛烈に暴き、民族的決意を促し、文学史にその名を刻んだ代表作。ほかに、デビュー作の「狂人日記」、日本留学の思い出を描いた「藤野先生」、「孔乙己」「小さな事件」「故郷」「家鴨の喜劇」「孤独者」「眉間尺」を収録。解説/佐高信 [もくじ] 狂人日記 孔乙己 小さな事件 故郷 阿Q正伝 家鴨の喜劇 孤独者 藤野先生 眉間尺 後 記 解 説 魯迅略年譜
魯迅が中国社会の救い難い病根と感じたもの、それは儒教を媒介とする封建社会であった。狂人の異常心理を通してその力を描く「狂人日記」。阿Qはその病根を作りまたその中で殺される人間である。中国社会の欺瞞性を鋭くえぐり出す魯迅最初の作品集。
名前も定かでない日雇い農民の阿Qは「精神勝利法」という一種の癖を持っており、 喧嘩で負けようが、笑い者にされようが、結果を自分の都合の良いように取り替え、 心の中で自分の勝利としていた……。 当時の中国社会にはびこる問題を風刺的に描き、辛亥革命の失敗点を強く指摘したとされる 『阿Q正伝』他『狂人日記』『藤野先生』など5編を漫画化。
「人が人を食う」ことを恐怖する主人公の、「子供を救え」の叫びとともに、封建制度・儒教道徳の暗黒を描く「狂人日記」。革命のどさくさの中の阿Qの死と悲喜劇を通して、「革命と民衆」を鋭くつく「阿Q正伝」。ほかに、「孔乙己」「酒楼にて」など。辛亥革命前後の混乱期に、敢然とペンを執って立ち上がり、中国近代文学を切り拓いた魯迅が、時代の苦悩と不屈の精神を伝える13篇の名作。魯迅を読まずして中国を知ることはできない。
魯迅が中国社会の救い難い病根と感じたもの、それは儒教を媒介とする封建社会であった。狂人の異常心理を通してその力を描く「狂人日記」。阿Qはその病根を作りまたその中で殺される人間である。こうしたやりきれない暗さの自覚から中国の新しい歩みは始まった。
あそらくは一生魯迅(1881-1936)の意中を駆けまわったにちがいない痛罵や皮肉や悲しみを、中国の神話・伝説・史書からの題材に仮託して書かれたもの。『天を補修する話』『わらびを採る話』『剣を鍛える話』他5篇より成る。喜劇的諷刺的内容の濃いこれらの昔物語は、またわれわれにも、時に深刻な、時にユーモラスな感情を起こさせずにはおかない。