大化改新後の飛鳥に、すみれの花のにおいとともに黒眼がちの額田王が姿を現わし、大海人皇子を恋に陥れた。政争と愛憎が交錯する古代史の世界。
壬申の乱直前の激烈な王権訌争のなかで、天智はその弟、大海人皇子から額田王を奪う。両帝に愛された女性の謎につつまれた境涯に迫る長篇歴史小説。
その建物がまだホテルだったころの名残で「夕陽ホテル」と呼ばれる小さなマンション。そこの4階の住人たちに、ある日、オーナーからパーティの招待状が届けられた。ほとんどの住人が出席してささやかな祝宴は開かれたが、その日を境にして、それまでお互いの生活にまったく無関心だった住人たちの関係に、小さな亀裂が生じていった…。都会人の孤独を浮き彫りにする、傑作長篇ロマン。