著者 : J・M・G・ル・クレジオ
自らの祖先に関心を寄せ、島を調査に訪れる大学人フェルサン。 彼と同じ血脈の末裔に連なる、浮浪者同然に暮らす男ドードー。 そして数多の生者たち、亡霊たち、絶滅鳥らの木霊する声……。 父祖の地モーリシャス島を舞台とする、ライフワークの最新作。 ノーベル文学賞作家の新たな代表作! ぼくは帰ってきた。これは奇妙な感情だ、モーリシャスにはこれまで一度も来たことがないのだから。見知らぬ国にこうした痛切な印象を持つのはどうしてか。父は、十七歳で島を離れて以来、一度も戻ったことがない。(…)父は戦後母と出会い、二人は結婚した。父は故国を離れた移住者、今で言う「一族離散(ディアスポラ)」による移住者だった。(「砂嚢の石」より) アルマ。この名はごく小さいときから言える。ママ、アルマと言う。ママとはアルテミジアのこと。母さん(ママン)のことはよく覚えていない。母さんはおれが六つのときに死んだ。(…)意地の悪い奴らは、母さんがよそへ行けばよいと思っている、レユニオン島生まれのクレオールで、分厚い縮れた髪をしているからだ。(「おれの名はドードー」より) 主な登場人物 フェルセン家略系図 モーリシャス島略図 序に代えて、人名 おれの名はドードー ゾベイード 砂囊の石 ラ・マール・オ・ソーンジュ ラ・ルイーズ クリスタル アルマ マヤ クレーヴ・クール マカベ ラルモニー エムリーヌ トプシーの話 クリスタル ……ドードー…… 森のなかで ポンポネット 洗足式 クリスタル(続) ある賭け マリ=マドレーヌ・マエの身の上話 パリ 罠 アディティ アショクの身の上話 ドードーは旅する レ・マール ある結婚式 幽霊 サクラヴーの身の上話 ブラ・ドー トカゲ 預言者 刑務所のクリスタル ディティの誕生 最後の旅 南へ 海 二つの家 楽園最後の日々 おれは名無しだ 変わり者、終章に代えて 参考文献、証言、教示など 感謝を込めて 訳註 訳者あとがき
幼き日々を懐かしみ、愛する妹との絆の回復を望む判事の女と、 その思いを拒絶して、乱脈な生活の果てに恋人に裏切られる妹。 先人の足跡を追い、ペトラの町の遺跡へ辿り着く冒険家の男と、 名も知らぬ西欧の女性に憧れて、夢想の母と重ね合わせる少年。 ノーベル文学賞作家による珠玉の一冊! ペルヴァンシュはまたもかたくなになっていた。クレマンスが表しているものすべてを、社会的地位だの、責任だの、権威だのを憎んでいた。ある瞬間、こんなあばら家を出て、あんなひどい人たちから遠く離れたところに行けるようにあなたを助けてあげられるわ、お金を貸してあげられるわと、ぎこちなく口にした。ペルヴァンシュは猛然と反発した。(「心は燃える」より) きっと、アリがひとこと頼みさえしたら、サマウェインは自分の宝物を見せただろう。手紙の束を、何枚もの黄ばんだ写真を、そしてなによりも、女性の腕に抱かれた赤ん坊がうっすらと写っている写真を。海の向こうからやってきた金髪の女性、父を連れて行ったその女性を、サマウェインは母と呼んでいる。(「宝物殿」より) 心は燃える 冒険を探す 孤独という名のホテル 三つの冒険 カリマ 南の風 宝物殿 各篇解題 訳者あとがき
万物の死の予感から逃れ、生の中に遍在する死を逃れて錯乱と狂気のうちに太陽で眼を焼くにいたる青年ベッソン(プロヴァンス語で双子の意)の13日間の物語。ひりひりする緊張感を孕みつつ、叙事詩的な世界を生み出してきたル・クレジオは、2008年、ノーベル文学賞を受賞。その彼のデビュー作『調書』以前に書き始められた長編の、待望の文庫化。
『フライデーあるいは太平洋の冥界』-南海の孤島で遭難したロビンソンは、島を開拓し、食料の備蓄に努めるが、野生人フライデーの登場によってその秩序は一瞬のうちに崩壊する。文明と野蛮を双子のように描いた哲学小説。『黄金探索者』-失われた楽園を取り戻すため、父の遺した海賊の地図と暗号文を手がかりに、ぼくは終わりなき財宝探索の旅に出る。2008年ノーベル文学賞受賞作家による、魅惑に満ちた自伝的小説。