ジャンル : ミステリー・サスペンス
初秋の塩原温泉、美貌の柳倭文子を巡り二人の男、三谷房夫と岡田道彦が毒薬を用いて決闘を行う。勝った三谷房夫は未亡人柳倭文子を手に入れ、一方で負けた岡田と思われる人物の水死体が半月後に発見される…その頃から倭文子の周囲には怪しい人物が現れるようになっていく。倭文子の六歳になる息子が何者かに誘拐され、身代金を要求する電話が入る。倭文子の恋人三谷は名探偵・明智小五郎に捜査を依頼。吸血鬼のごとき怪人の正体を、明智探偵は見破ることができるのか?
浅草歌劇全盛期に「レビューの女王」との名声を得ていた踊り子・水木蘭子。彼女は彫刻家・里見雲山の衣頼により大理石像のモデルとなり、その肉体美を再現した作品は、展示会を大いに賑わせた。その会場に、彫刻を撫でまわす謎の盲人が…彼との出会いから、蘭子の人生が狂い始める。「触覚芸術論」という持論を持つ「盲獣」と、美女蘭子の痴態の限りを尽くした日々とその末路はいかに?触覚だけの世界の愉楽とはどのようなものなのか、そして殺戮を繰り返す盲獣の目的とは?
16歳のぼくを置いて母は逝った。母は宮沢賢治研究に生涯を捧げ、否定されている『銀河鉄道の夜』の第四次改稿版の存在を主張していた。花巻を訪れたぼくは、気がつくと昭和8年にいた。賢治が亡くなる2日前だった。たどり着いた賢治の家で、早逝したはずの妹トシとその娘「さそり」に出会うが。永遠に改稿される小説、闊歩する賢治作品の登場人物。時間と物語の枠を超える傑作。
“アインシュタインの涙”と呼ばれるミニ地球に閉じこめられた百五億のテラ住民たちは、ヴィシュナのもくろみどおりヴィールス・インペリウムの一部となり、巨大コンピュータの情報処理作業に没頭していた。難をのがれたエルンスト・エラートと四次元性の影チュトンも、ヴィシュナの基地にあるクリスタル建造物“時間塔”の底に監禁されてしまう。この時間塔を管理しているのは、修道士を名乗る謎めいた存在の者だった!
九月七日十二時三十分クロイドン発フランス行き。十歳のローズ・モーリーは初めて飛行機に乗った。父と祖父、祖父の世話係が一緒だ。パリで交通事故に遭った母の許へ急ぐ旅であることも一時忘れるくらいわくわくする。あれ、お祖父ちゃんたら寝ちゃってる。-いや、祖父アンドルー・クラウザーはこときれていた。自然死ではなく、チャールズ・スウィンバーンに殺されたのである。
真面目さが取り柄の会社員・透子は、ひょんなことから名探偵・九条の秘書になる。かつて彼は全国を股にかけ、多くの難事件を解決した素人探偵だったが、今はなぜか地元・川崎市内というご近所でのささやかな謎にしか興味を持たない、自称“ご当地探偵”になっていた。ご当地アイドルに届いた予告状の謎など、ものぐさ探偵と生真面目秘書が依頼人の悩みを晴らす連作ミステリ全5編。
超越知性体“それ”および無数の意識存在が居住する半球惑星エデン2では、平和な時間が流れていた。そんなある日、超越知性体の指示で惑星をパトロールしていた旧ミュータントのタコ・カクタは山間の谷底で奇妙な十二体の生物と出会った。チンパンジーとクマを合わせたような風貌で、童話や伝説に出てくる小人に似ている。ところが、無邪気に見えた小人たちにタコ・カクタが近づいたとたん、おそろしいことが起こった!
ジェネシス星の戦闘機パイロットの少女ノエミは、“ゲート”防衛戦のさなかに遺棄された地球の調査船でアベルという人間そっくりの人型ロボットを発見する。30年前に“ゲート”の弱点を調査するためやってきたが、独立戦争に巻きこまれ、船におきざりにされていたのだ。アベルから“ゲート”を破壊する方法を聞きだしたノエミは、故郷の惑星を救うため“ゲート”によって円環をなす5つの世界へと旅立つことを決意する!
あの世とこの世の狭間に佇む写真館では、訪れた死者が年の数だけ自身の写真を選び走馬燈を作る。案内人は過去の記憶を持たない青年・平坂。来訪者は最高の写真を撮るべく希望する過去へと一日だけ平坂とともに戻ることができた。九十二歳の老女、四十七歳のヤクザ、七歳の児童、それぞれが写した人生最期の写真とは。そして平坂の悲しくも優しい秘密とはー。三つの物語が紡ぐ、感涙のミステリー。
「脳の血腫など特定の三徴候が出た場合、その幼児は被虐待児である」。堀尾雄次は子どもに三徴候があったことから、虐待を疑われて警察に連行された。雄次は容疑を否認。捜査に当たるのは、永久出向制度で警視庁から故郷に戻ってきた刑事・栗秋と若手の細井。栗秋の能力を疑う細井だったが、栗秋は上層部の意向を無視して、血腫について捜査を進める。「出向」刑事が、医療業界の闇を暴く!
東雲清一郎は、大学生活のかたわら書家として活動し、筆跡鑑定も行う超絶イケメン。だが、中身はトゲトゲなハリネズミのような毒舌家だ。おしゃれなカリグラフィー、図書館本の落書き、離別した父からの手紙、そして過去からのメッセージー「気持ちに嘘はつけても、文字は偽れない」。そう断言する彼の秘密が、また一つ明らかになっていく…古都・鎌倉を舞台に、文字と書、人の想いにまつわる事件を描く大人気ミステリー、第4弾!
1961年、少女ローレルは恐ろしい事件を目撃する。突然現われた見知らぬ男を母が刺殺したのだ。死亡した男は近隣に出没していた不審者だったため、母の正当防衛が認められた。男が母に「やあ、ドロシー、久しぶりだね」と言ったことをローレルは誰にも話さなかった。男は母を知っていた。母も男を知っていた。彼は誰だったのか?ケイト・モートンが再びあなたを迷宮に誘う。
第二次世界大戦中、ローレルの母ドロシーは、ロンドンの裕福な婦人の屋敷に住み込むメイドだった。向かいに住む作家の美しい妻に憧れていた彼女には婚約者もいたが、ロンドン大空襲がすべてを変える。2011年、ローレルは死の近い母の過去を知りたいと思い始める。母になる前のドロシーの過去を。それがどんなものであったとしても…。翻訳ミステリー大賞・読者賞W受賞の傑作。
「だいたいお前さん達は想像力ってもんが足りなさすぎるよ、新聞や雑誌にひょいひょい乗せられて、やれ空飛ぶ人だ空中散歩者だってはしゃいでるんだからーもう少し頭使って自分の考えで物を云いなさいよ」そう言い放ったこの、仔猫みたいなまん丸い目をした小男こそ、名探偵猫丸先輩その人である。コミカルな筆致とロジカルな推理で読者を魅了する倉知淳の本格的なデビュー作。
液体メタンの海とアンモニアの氷に覆われ、高速自転で赤道部が膨らんだ巨大惑星メスクリン。赤道部で3G、極地で700Gのこの星は、ある緯度以上への人類の進入を許さない。地球人は南極で離陸不能となった無人調査ロケット回収のため、原住生命と取引きをした。体長40センチ、36本肢のメスクリン人は、なぜ無報酬も同然でこの危険な仕事を引き受けたのか?ハードSFの傑作!
アルマダ王子のナコールとともにローランドレをめざす銀河系船団は、いよいよ目的地に近づいていた。ところがそのとき、一種の壁のような構造物が宇宙空間にあらわれる。その構造や性質は、探知分析によってもまったく不明だ。同時に“バジス”に警報が鳴りひびき、船内に未知者が侵入したことがわかった。船載コンピュータのハミラー・チューブが推測するには、異人からローランドレを守る者ではないかというのだが…。
ローダンらが地球との連絡を絶って1週間が過ぎた。大西洋の海底ドームではクレストらが、海底で発見されたアルコンの巨艦“トソマ”内に侵入する方法を模索していた。その頃、超小型宇宙船で土星の衛星タイタンにたどり着いたジュリアンらは、地球の状況を打開する情報を得る。ヴェガ星系では、トプシダーに捕獲されたフェロン人の長トルトの威厳ある姿に感銘を受けたローダンらが、トプシダーへの対抗策を練り始めた!