ジャンル : ミステリー・サスペンス
かつて最先端機種として期待を集めていた人型ロボット“ピイ・シリーズ”。しかし現在では絵を描くだけの無用の存在として各地を放浪していた。恋人との仲に悩む女性、周囲にとけ込めない中年男性、人生を見失った青年ーピイと出会った人々は、姿だけを同じくする彼らの瞳に何を見るのか。ロボットとの対話を通して揺らぐ人人のこころを柔らかに描く、希望と祈りに満ちた物語。
貧乏探偵バーニーと、猫がらみの理由で警察犬訓練所を卒業しそこなった大型犬チェット。この最強コンビは伯爵夫人に愛犬の警護を依頼されたが、いかにもな失敗で即クビ。その後、夫人は愛犬とともに誘拐されてしまう。そして事件を取材中のバーニーの恋人まで失踪…。何が起きているのか?語り手が犬であるからこそ可能になったミステリ!『チェット、大丈夫か?』改題文庫化。
女の子は座席で眠っていた。途中駅でホームに降りた母親を置いて列車は出発、終点で確認したときには、女の子は消えていた…。捜査にあたったストックホルム市警の敏腕警部は、少女の母親の別居中の夫に目をつけた。どうやら母親は、夫に暴力をふるわれていたらしい。だが彼の部下フレデリカは違和感を感じていた。世界27か国で刊行、大好評を博したデビュー作シリーズ第一弾。
コンスル帝国の最北西の村に住むデイスは十六歳、村の外に捨てられていたところを拾われ、両親と姉に慈しまれて育った。ある日彼は土の中に半分埋まった肩留めを拾う。“太陽の石”と呼ばれる鮮緑の宝石。これは自分に属するものだ、一目でデイスは悟る。だが、それが眠れる魔道師を目覚めさせることに。デビュー作『夜の写本師』で読書界に旋風を起こした著者のシリーズ第三弾。
科学知識を駆使した奇想天外なミステリを描き、日本SFの先駆者と称される海野十三。鬼才が生み出した名探偵・帆村荘六が活躍する推理譚から、精選した傑作を贈る。異様な研究に没頭する夫の殺害を企てた、妻とその愛人に降りかかる悲劇を綴る怪作「俘囚」。密書の断片に記された暗号と、金満家の財産を巡って発生した殺人事件の謎を解く「獏鸚」など、10編を収録した決定版。
水星で暮らすぼくとママのところに、クローンの姉が月からやってきた。太陽が膨大な光をもたらすこの“逆行の夏”に姉と水銀洞へ出かけたぼくは、今まで隠されていた家族の真実を知る。ほろ苦くも美しいボーイ・ミーツ・ガールを描いた表題作、目も耳も不自由な人々のユートピアを提示してあまたの賞に輝いた「残像」など、怜悧で官能的なヴィジョンがあふれる6篇を収録。ヴァーリイの粋を結集したベスト・オブ・ベスト。
時間遡行技術が確立されて以来、オックスフォード大学史学部では学生たちが研究対象の時代に赴いて現地調査を行なってきた。そして2060年、第二次大戦中のイギリスへ史学生三人が送りだされる。だが、ロンドン大空襲で灯火管制(ブラックアウト)下にある市民生活を体験するポリーをはじめ、三人は現地で思わぬ事態に巻き込まれ…続篇『オール・クリア』とともにヒューゴー賞/ネビュラ賞/ローカス賞の三冠に輝く傑作。
1940年のイギリスで現地調査中の三人の史学生たちを、降下点のトラブルが襲う。郊外の屋敷のメイドとして疎開児童らに振り回されるメロピー、デパートの売り子として大空襲をまのあたりにするポリー、アメリカ人記者としてダンケルク撤退時の英仏海峡で命の危険にさらされるマイクル。もとの時代に帰るすべを模索する三人の運命は?SF界の女王ウィリスが積年のテーマを渾身のストーリーテリングで描いた歴史観察SF。
高さ100メートルの巨大な鉄柱が支える小さな甲板の上に、“会社”は建っていた。雇用主である社長は“人間”と呼ばれる不定形の大型生物だ。甲板上とそれを取り巻く泥土の海だけが語り手の世界であり、日々の勤めは平穏ではないー第2回創元SF短編賞受賞の表題作にはじまる全4編。奇怪な造語に彩られた異形の未来が読者の前に立ち現れる。日本SF大賞受賞作、待望の文庫化。
美しい姉妹が暮らすとある屋敷にやってきた「わたくし」が見たのは、対照的な性格の二人の間に起きた陰湿で邪悪な事件の数々。年々エスカレートし、ついには妹が姉を殺害してしまうがー。その物語を滔々と語る「わたくし」の驚きの真意とは?圧倒的な筆力で第7回ミステリーズ!新人賞を受賞した「強欲な羊」に始まる“羊”たちの饗宴。企みと悪意に満ちた、五編収録の連作集。
時は平安。人々の注目を集めるひとりの女性がいたーその名は紫式部。かの『源氏物語』の著者だ。実は彼女は都に潜む謎を鮮やかに解く名探偵でもあった。折しも、帝が寵愛する女性が待望の親王を出産、それを祝う白一色の華やかな宴のさなかに怪盗が忍びこみ、姿を消した。式部は執筆のかたわら怪盗の正体と行方に得意の推理をめぐらすが…。鮎川賞受賞作家による王朝推理絵巻。
眠るようにベッドに横たわる母と二人の幼い子ども。だが喉の傷と大量の血が、彼らが殺されたことを物語っていた。母親は失業中だが夫とは別居し、女手一つで子どもたちを育てていた。一家と親しかったらしい謎の男性の存在。母子が住む高級アパートを買ったのはその男なのか。やがてハンマルビー署、ショーベリ警視以下捜査陣は信じがたい事実にたどりつく。好評シリーズ第三弾。
ロンドンの女優エステラ。その絶大な人気は、体が不自由でウェールズに住んでいるという娘との交流を綴った新聞の連載エッセイに支えられていた。エステラの未来は順風満帆に思われた。服役中の危険人物の夫が、病気のため特赦で出所し、死ぬまえに娘に会いたいと言い出すまでは…。勃発した怪事件に挑むのは、警部チャッキー。巨匠の技巧が冴える、本邦初訳の傑作ミステリ!
廻国修行をさらに続ける男装の武芸者・毛利玄達だが、どういう腐れ縁か、行く先々で剣豪と名高い柳生十兵衛と出くわすことに。この度も、将軍家剣術指南役・小野次郎右衛門の墓参に連れ立つことになった二人。下総で、次郎右衛門が同門の善鬼と一刀流の継承を争った決闘の真相ほか、剣豪にまつわる三つの謎。剣の謎解きにかけては右に出る者がない、柳生十兵衛の鮮やかな名推理。
知性連合のプリンセスにして海軍大尉クリス・ロングナイフの今回の任地は、リム宙域外の無法星域。もと海賊船の武装商船ワスプ号を、海兵隊員が乗船する特殊コンテナ付きの王立調査船に改装すると、探検と平和維持(海賊船退治!)の任務のため、勇躍ウォードヘブン星を旅立った。同行するのは秘書コンピュータのネリーに警護隊長のジャック大尉をはじめとするいつものメンバー。はたして、クリスの行く手に待ち受けるのは!?
海外出張中の夫マックスの留守を預かるセーラのもとに、夫妻にとって因縁浅からぬ「御殿」ことウィルキンズ美術館にて、またもや変死事件が起きたとの報が入る。犠牲者は知人の画家ドロレスだった。その翌日、セーラは事務所にひとりでいたところを襲撃され、さらには警察で自分が彼女の遺言執行人に指名されていたことを知る。美術館一筋だったドロレスを死に至らしめた事情とは?
ドイツ、2005年8月。警察署に復帰した刑事ピアを、飛び降り自殺に偽装された女性の死体が待ち受けていた。実際は動物の安楽死に使用される薬物による毒殺で、夫の獣医や彼の働く馬専門動物病院の共同経営者たちが疑われる。だが刑事オリヴァーが指揮を執る捜査班が探るうち、隠された数々の事件が繋がりはじめ…。“ドイツミステリの女王”の人気に火をつけたシリーズ第一弾。
戦が終わり、生き残ったのは王弟マナウィダンら七人のみであった。兄妹を失い行くあてもないマナウィダンに、ダヴェドの若き大公プラデリは一緒に故郷に来ないかと誘う。寡婦となった母フリアノンの話し相手になってほしいというのだ。マナウィダンはかつてダヴェドを訪れた際に彼女に会い、強く心惹かれていた。傷心の英雄を待つ運命やいかに。神話ファンタジーの金字塔シリーズ。