ジャンル : ミステリー・サスペンス
二年三カ月ばかり食らい込んで出所したおれは、保護司の娘に一目惚れ。真人間になります、と厳粛に誓約して幸運にも高嶺の花を手折ることが叶ったのだ。しかし、白波稼業へ返り咲く夢断ち難く悶々と過ごす毎日。そんなおれの肚を読んだわが慧眼の恋女房殿は、なんとなんと「夫婦じゃないの。死ぬも生きるも一緒よ。二人で新しい怪盗を作りましょうよ」と宣うた。さても夫婦善哉。
魔法の素質は本物でも、女の子ゆえに魔術の道に進ませてもらえず、かといって持参金不足で結婚もできずに悩む、年頃のフィアメッタ。父親は大魔術師にして公爵に仕える金細工師。だがその父はいまや息絶え、その強力な霊は邪悪な者のもつ“死霊の指輪”に囚われようとしていた!黒魔術から父を守るため、炎の乙女が立ち上がる。時代はルネサンス、恋と冒険の歴史ファンタジイ。
刑務所を出たのは灰色の雨の朝だった。警官を死なせた罪を着せられ、棒に振った3年半。いまさらろくな職にありつけるはずもなく、妻の稼ぎにおぶさり酒に溺れる日々が始まる。だが、思いがけず偽装誘拐工作の渦中に巻きこまれたことから、すべてが、めまぐるしい急流へと呑まれてゆく。人生から脱落しかけた男の孤軍奮闘を描く手練のスリラー。
友だちになった人間を救おうとして、瀕死の傷を負ったフラレカナ。不思議な力によって回復した彼を迎え、群れは餌場を求めて“世界の果ての氷”へ向けて旅立つが、そこにかつての豊かな海はなかった。彼らは残された餌場を求めて極洋を渡る。だがそこでも、人間たちの魔手と、彼らのつくった“見えない火”の脅威が待ち受ける。『歌うクジラ』三部作完結編。
土砂降りの雨の夜、果樹園主を訪れたその男は「おまえには50ドルの貸しがある」と言い放つや、銃を発砲した! 霧の中を手探りするように手がかりを求めるフェローズ署長。試行錯誤の末に彼が見いだした、犯人の恐るべき正体とは? 警察の捜査活動を緻密に描きつつ、本格推理の醍醐味を満喫させる、巨匠ウォーの代表作。
●恩田陸氏推薦ーー「『ユージニア』の構想のきっかけになったのは、この作品です」 ●若竹七海氏推薦ーー「読みはじめたら最後、仕事は手につかないし、眠れないし、食べられない。」 クロックフォード──どこにでもありそうな平和で平凡な町。だが、ひとりの少女が殺されたとき、この町の知られざる素顔があらわになる。怒りと悲しみ、疑惑と中傷に焦燥する捜査班。だが、局面を一転させる手がかりはすでに目の前に……! 警察小説の巨匠がドキュメンタリー・タッチで描き出す《アメリカの悲劇》の構図。MWAグランドマスター賞受賞第一作。解説・若竹七海
アリスがまだ魔女や妖精を信じる幼い少女だったころ、親友のエルシーが突然姿を消した。彼女の行方も誘拐犯の正体も分からぬまま、事件は迷宮入りとなる。それから十年、封じられていた魔法が今、アリスを事件の真相へと導くのだった。運命的な暗合の連鎖が不思議な世界を作り出す、傑作「不思議の国の悪意」他七編を収録。かのエラリー・クイーンも絶賛した、才気溢れる短編集。
彼女は脱ぎ捨てられた服のように横たわっていた。ライラ・ブレヒトー往年のハリウッド女優を母親にもち、みずからは高級フィットネス・クラブを経営する美貌の主。現場に到着したデッカーは、レイプ及び盗難の被害者となったライラの纏う尋常ならぬ空気に当惑しながら捜査を開始するが…。スリルに富む展開と、異常な家族を中心に織りなされる謎とで、読者を魅了する第五弾。
2034年、地球の夜空から星々が消えた。正体不明の暗黒の球体が太陽系を包みこんだのだ。世界を恐慌が襲った。この球体について様々な仮説が乱れ飛ぶが、決着のつかないまま、33年が過ぎた…。ある日、元警察官ニックは、病院から消えた若い女性の捜索依頼を受ける。だがそれが、人類を震撼させる量子論的真実につながろうとは!ナノテクと量子論が織りなす、戦慄のハードSF。
【第3回鮎川哲也賞受賞作】 短大生の入江駒子は『ななつのこ』という本に出逢い、ファンレターを書こうと思い立つ。身辺を騒がせた〈スイカジュース事件〉をまじえて長い手紙を綴ったところ、事件の“解決編”ともいうべき返事が舞い込んだ……! こうして始まる駒子と作家のやりとりが鮮やかにミステリを描き出す、清新な連作長編。
パラダイン男爵家を脅かす怪現象の数々-ポルターガイスト、うろつく尼僧の亡霊、外から鍵をかけた部屋で夜ごとひとりでに曲を奏でるハープ。さらに悪いことに、客人が幽霊に襲われた!騒動を鎮めるため駆けつけた心霊探偵ヒーロー氏の活躍やいかに?『スノーグース』などで知られる心やさしきストーリーテラー、ギャリコ唯一の長編本格ミステリ、本邦初訳。
夜の張りこみのさなか、ライアンとグレゴリーは、棺を運ぶ葬列さながら、三つの人影がドラム缶を川に沈める光景に遭遇した。夜が明け水底を探ったが、見つかったのは古びたゴミバケツだけ。ところがその中から、失踪していた悪徳警官の白骨死体が転がりだす。ニューヨーク市警組織犯罪部の対照的なふたりの刑事が、湾岸地区に埋もれた犯罪を追う。哀歓のにじむ警察小説第一弾。
「これは殺人じゃないわ。処刑よ」リディアは宣言した。姉を自殺に追い込んだ憎き恐喝者が、いま残された家族の前で息絶えたのだ。彼らは死体を処分しようと画策するが、事件は早々に警察に知られてしまう。一方、通報を受けたニューヨーク市警のヴァルクール警部補は着実に彼らの跡を追う。だが、事件は意外な相貌を見せ始めるのだった。知られざる名手のサスペンス溢れる大表作。
奇術師フーディーニは、ある貴族の屋敷を訪れた。知友のコナン・ドイル卿も招かれ、降霊会が催されるからだ。実は敵から身を隠すためでもある。護衛はピンカートン社の探偵だ。と、たちまち幽霊騒ぎが、謎の狙撃が、ついには密室での怪死が…相次ぐ事件にロンドンより敏腕警部が到着。これで役者はそろった。真真相を巡り、推理合戦の火蓋が切って落とされる。だが、フーディーニを狙う人物はすぐそこに。かくも愉しき『探偵小説』。
科学者ジョー・コリガンは見知らぬ病院で目を覚ました。彼は現実に限りなく近いヴァーチャル・リアリティの開発に従事していたが、テストとして自ら神経接合した後の記憶は失われている。開発計画は失敗し、放棄されたらしい…。だが、ある女が現れて言う。二人ともまだ、シミュレーション内に取り残されているのだ、と。あまりにリアルな仮想現実から、脱出する方法はあるのか?
吹雪に閉ざされた屋敷では、折しも遺産争いの真っ最中。遺言も風変わりなら、集まった一族もこれまたちょっとおかしな人ばかり。この大騒動のとどめとばかりに弁護士が殺された。サンディたちはお酒や睡魔や恋の病に悩まされながらも、犯人を追って徹夜で奮闘するのだが、その周囲では事件もお構いなしの騒ぎが続くのだった!好評『ハネムーンの死体』に続く、笑うしかない第二弾。
邸の氷室は十八世紀に小丘を模して造られた。冷蔵庫の出現にともない保冷庫としての役目を終えていたそこで、不意に死骸が発見される。胴体は何ものかに食い荒らされた、無惨な死骸。はたしてこれは何者か?…ここにはすべてがある。悲嘆も歓喜も、幻滅も信義も。これはまさに人生そのもの、そしてミステリそのもの。ミステリ界に新女王の誕生を告げる、斬新なデビュー長編!CWA最優秀新人賞受賞作。