ジャンル : ミステリー・サスペンス
一緒に暮らさないか、キンケイドはそう言ってくれる。しかしアリーンは迷っていた。もちろん愛してはいるけど…そんなある日、判事一家が惨殺される事件が発生。目撃者は一人の少女。だがショックからか口がきけない。続いて第二の殺人が。手口は同じだが被害者に共通項がない。やがて彼女のもとに、殺人予告めいた詩が送りつけられてきた。なぜ、わたしに…。新シリーズ第二弾。
それはオコナー上院議員にとって、再選をかけた選挙戦のさなかの出来事だった。雑誌記者である愛人が自宅アパートで殺害され、しかも自らがその第一発見者となる。死亡推定時刻、折悪しくある人物と密かに接触していたために、アリバイは成立しなかった…。弁護士を経て政界に入り、つねに前進をつづけてきた議員。事件は思いがけず、人生の綻びを浮かびあがらせることになる。
毎朝、今日こそ逮捕されるという思いで目が覚める。選挙戦がいかに苛酷であろうとも、絶えず心をよぎる。彼女は本当に愛してくれていただろうか。殺人の真相を掴みたい上院議員は、やがて自分とその周囲の人間を見つめ直すことこそ避けて通れない道であると気づく。見えていなかった過去、目を背けていた現実。単なる政治家の枠を超えて理想を追い求める男を巧みに描いた物語。
サム・レイナー、二十八歳。海軍航空基地所属の一等兵曹。妻への虐待を繰り返し、離婚訴訟のただ中にあるこの男は、十万ドルを越える金を貯めこんでいた。金の行方を探ってほしいというのが依頼の内容だったが、ある夜、そのレイナーが何者かに射殺されてしまう。疑われたのは妻。調査に乗りだしたわたしの目に、壊れた家族の肖像が見えてくる。自然体の探偵ジェリ、待望第三弾。
「蠅がいない。蠅抜きでどうして、中世のギルドが運営できるんだ。」セーラとマックスの旧友リディアが、目下職を得ている美術品修復業者、その名も“復活の人”。これが実に怪しい男で、職人たちに珍妙なルネサンス画家の格好をさせるかと思えば、仕事に際しては極端な秘密主義を敢行。おまけに彼の周囲では、過去何人もの人間が謎めいた死を遂げているらしい。折りしも彼らが甦らせた品々が相次いで盗まれ、殺人事件までが発生してしまう。陰には常に、赤いジョギング・スーツ姿の人影が…。骨折リハビリ中のマックスも奮闘する好調第十弾。
灼熱の太陽に喘ぐパリが漸く黄昏れた頃、不意にカケルを見舞った兇弾ーその銃声に封印を解かれたかの如くヨハネ黙示録の四騎士が彷徨い始める。聖書の言葉どおりに見立てられた屍がひとつ、またひとつと、中世カタリ派の聖地に築かれていく。ラルース家事件の桎梏を束の間忘れさせてくれた友人が渦中に翻弄され、案じるナディア。謎めく名探偵矢吹駆の言動に隠された意図は。
『盲獣』いつにない早起き、ありふれた日常だったはずの朝が始まる。雨に降りこめられた展覧会場で、森厳な空気に相容れぬ雰囲気を醸す人影を見た水木蘭子は、凶事の予感に怖気をふるう。それは魅入られたかのように盲獣の魔手に搦め取られていく自身への哀歌にも似て…『地獄風景』旧家の一人息子が私財を蕩尽した大遊園地ーさながら怪奇のおもちゃ箱ーに集まる、名にし負う猟奇の紳士淑女たち。ひとり、またひとりと増える犠牲者を後目に殺人遊戯はエスカレートしていく。「犯人は誰か、その理由は」と公募された犯人当て懸賞小説。共に竹中英太郎画伯の華麗な挿絵を付す。
ひっこみ思案のジャッキーが妖精郷で巨人退治をなしとげ、一年がたった。いまや妖精郷の一部では“心臓”ともいうべき存在だ。彼女の仕事は、妖精たちにとって糧である月からの幸運が、毎日正常に流れているかを確認すること。しかしその異変に気づいたころ、ひとりの妖精の無残な死体が見つかった。現場にはなにやら魔法のにおい。やがて魔の手はジャッキーにも及んだ。が、危ういところでクミンと名乗る男に助けられる。お礼のしるしにと、さっそく男を屋敷に招待してしまうのだが…無邪気なジャッキー、ほんとうにこれでいいの。『ジャッキー、巨人を退治する』の続編。
絶海に行方定めぬ小船が一艘、瀕死の有明男爵と忠臣久留須左門、そして親友と謀り内心で男爵を憎む大曾根五郎が飢渇に喘いでいた。もはやこれまでと己が妻と財産を友に託す男爵。だが一夜明けて陸影を認めた途端、本性を現わした大曾根は二人を手に掛け、まんまと男爵の後釜に据わる。それから二十数年、飛行競技大会で超絶技巧を披露する二青年があった。それと知らず出逢い宿業の仇敵と認めあうに至る二人こそ、有明と大曾根を継ぐ者である。正義を旗幟に掲げる貴公子と、帝都に大暗室と呼ぶ王国を築き全世界の覇者たらんと欲する地底魔との凄絶な戦いの火蓋が切って落とされた。
こんな都会に妖精郷が存在する。ジャッキーだって最初は信じていなかった。でもあの晩、暴走族に追い回されていた人影は人間にしては小さすぎた。小男は目前で轢かれ、あとに残るは灰と赤い帽子のみ。そこで彼女が恐る恐るかぶってみると…見慣れていたはずの町は妖精たちで一杯。おまけにその別世界で巨人退治の大役を命ぜられてしまうなんて。元気な現代ファンタジィ。キャスパー賞受賞作。
ジェーンはためいきをついた。せっかく女二人になれたというのに、娘のケイトときたら朝寝はする、バイトはする、そのあとだって門限一秒前までお出かけくださる。弱気の虫がうずいたそんな折り、ジェーン自身の母親が遊びにやってくる。滞在中、つきあって自分史執筆の講座を受けることにしたが、思いがけず毒殺事件が勃発し…。主婦探偵が生きがいと殺人犯を探索する第三弾。
道に迷ったジェネットはトラックが突進してくるのを呆然と見つめた。絶体絶命。ところがなぜか敵は勝手に横転、混乱する彼女を尻目に、トラックは爆発するは、車は盗まれるは、避難先の無人の家は放火されるはー。新妻を襲った災難に騎馬警官のマドックは大慌て。かくて、雲をつかむような謎を相手に二人の探索が始まる。
どんな相談にも応じるという和尚が様々な難問に出した回答。対立する子供たちの間に出現した少女が引き起こす事件。パズル好きの父が遺した遺言。溺れかけながらも微笑む女の真実。探偵好きの少年たちが直面した本物の密室殺人。盗作の疑いがかけられたTVコマーシャルに隠されたメッセージー短編の名手が選んだ佳品六編。