関連小説
愛愛
デュラスが、自らの創造力のなかからつくりあげた「白骨の西洋」-海と空にひらけた、砂と風の町、S・タラ。「海」であり「死」であるこの町を舞台に、「旅人」や妊娠した狂女といった名前のない登場人物が繰り広げる物語は、デュラス文学の極北であると同時に、『ロル・V・シュタインの喪心』『副領事』と同じ背景をもち、その世界の核となるものである。 1996/04/04 発売
愛愛
【国書刊行会 創業50周年記念復刊】 〈ちがうね、諸君、もう一度言うが、それはちがう。君たちは若いし、頬っぺたにも熟れた林檎みたいな赤みがさしている。ジーンズだって擦りきれ、声も明るく甲高い。だがね、ステパン・イリイチ・モロゾフが恋人のワレンチーナを愛したような愛し方はどのみち絶対にできっこないんだ・・・・・・〉 愛の物語を一切省き突然の狂気へと読者をひきずりこむ、ゼロ形式の恋愛小説ともいうべき表題作「愛」。女教師と教え子のアブノーマルな〈授業〉を即物的に描いた「自習」。故人に関する驚愕の事実が友人によって明かされる「弔辞」。 そのほか「真夜中の客」「競争」など、日常の風景のさなかに悪意を投げ込んで練りあげた文学的オブジェの数々。あまりの過激さに植字工が活字を組むことを拒否したとされる、最もスキャンダラスな作家が放つ、グロテスクかつアンチ・モラルな短篇集。 ◎装幀=松本久木(松本工房) *本書は、1999年に小社より刊行した『愛』を、若干の改訂を行った上で、新装版として刊行したものです。 2023/02/21 発売