小説むすび | アーケイディア[新装版]

アーケイディア[新装版]

アーケイディア[新装版]

荒海での船火事の大惨事後、難破船のマストに立つ若者の姿ー年の頃は18歳、金色と青の刺繍の衣装で、白い腕に剣を高く揚げ振りかざす姿には、驚嘆すべき美しさがあふれていた。純朴な漁師たちは彼にロープを投げ、岸辺に引き寄せようとするが、若者は、近づいてきたガレー船の海賊たちに襲われて、未知の国へと連れ去られてしまう…古代ギリシャの理想郷に躍動する恋と冒険の青春群像。エリザベス女王の廷臣にして文人のシドニーが著した英国ルネサンス期牧歌文学の最高峰。『ニュー・アーケイディア』初の完訳、待望の復刊。

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何世紀もの破壊の爪痕をめぐる  イギリス南東のサフォーク州の海岸線や内陸にひっそりとある町々をめぐる徒歩の旅。荒涼とした風景に思索がよびさまされ、過去の事跡からつぎつぎに連想の糸がたぐられていく。アフリカから戻ったコンラッドが寄港した保養地、中国皇帝が乗るはずだった列車が走行していた鉄橋……そして本書の同伴者となる17世紀の医師、トマス・ブラウンをはじめとした、魂の近親者である古今の人々との出会い。  〈私〉という旅人は、どこか別世界からやってきた人のように、破片を拾い上げ、想起によって忘れ去られた廃墟の姿を甦らせる。人間の営みを、人間によって引き起こされる破壊と惨禍を、その存在の移ろいやすさとともに見つめようとする眼。歴史を見つめるその眼差しは、そこに巻き込まれた個々の人間の生、その苦痛に注がれている。  「作中入れ替わり立ち替わり現われる奇妙なエピソードは、それぞれ独自の奇怪さを有していて、印象としては、すべてが次第にひとつに収斂していくのではなく、何もかもがいつまでも横滑りしていく感がある。」柴田元幸氏による解説「この世にとうとう慣れることができなかった人たちのための」より引用。 2020/07/17 発売

運命論者ジャックとその主人[新装版]運命論者ジャックとその主人[新装版]

破格の世界文学  ラブレー、セルバンテス、スターンといったヨーロッパ文学の異形の系譜につらなり、シュレーゲルらドイツ・ロマン派の思考を刺激した後、現代においても『ブーローニュの森の貴婦人たち』のブレッソン、『ジャックとその主人』のクンデラといった芸術家たちを魅了しつづけてきた、ディドロ最晩年の傑作。フランス18世紀小説の白眉が、新たな訳でよみがえる。  うわべは「主人」とその従者「ジャック」のあてど知れない遍歴譚だ。旅する二人と出会う人びと、散りばめられたエロティックな小噺、首を突っ込む語り手らによる快活、怒涛の会話活劇が繰り広げられるが、とはいえその内実は、破天荒なストーリー展開、逸脱につぐ逸脱……主人はいつになったら、ジャックの恋の話を聞けるのか。「物語性」の決定的な欠如そのものが物語たりえていること、それこそがこの小説の身上だ。  運命論者ーーだとしても、人は誰しも筋書きのわからない、次の瞬間にはどちらに転ぶとも知れない曖昧な日常を生きている。ある意味ではこの酷薄きわまりない世界を、一片の悲哀を混じえることなくひたすら快活な笑いをもって描ききったこの傑作。装画はよしながふみ。 2022/05/02 発売

ほら話とほんとうの話、ほんの十ほど[新装版]ほら話とほんとうの話、ほんの十ほど[新装版]

鬼才の魅力を多彩な短篇で 『ラナーク』『哀れなるものたち』で知られるスコットランドの伝説的鬼才の短篇集が、待望の復刊! ファンタジーとリアリズム、笑いと哀しみ、アイロニーとウィットが混淆する饒舌な語りに思わず舌を巻くが、目に飛び込んでくる異彩を放つイラストも、作家自身の手になるもの。アリ・スミスをして「現代のウィリアム・ブレイク」と言わしめたグレイの多彩な魅力が存分に詰め込まれているのが本書なのだ。 学校を牢獄のように感じる〈わたし〉が、外へ出る想像上の〈ドア〉を恩師から授かる「ミスター・ミークル」。窒息するような現実から逃れようとする夢や欲望が、本書では多様なジャンルを横断しながら変奏される。コンピュータが導入された会社内でのちぐはぐぶりを皮肉った「内部メモ」。軟派で洒落者の鼻持ちならないイングランド人の男を揶揄した「あなた」。おしゃべりな歯医者に治療される不安と恐怖が迫る「トレンデレンブルク・ポジション」。なぜ靴下にガムがくっついているのか、その原因を綿密に理論化して可笑しい「時間旅行」。囲い込まれた世界に嫌気がさした男が、夢のような新しい移住先で体験する破滅の寓話「新世界」など──粒ぞろい短篇をほんの十ほど。 2024/05/02 発売

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