出版社 : サンリオ
なに不自由なく育ったシェイラ・ロジャーズは、ある日突然、すべてを失うことになった。新婚旅行の最中、メキシコ山中で山賊の一団に襲われて夫を殺され、彼らの隠れ家に連れ去られた。一団を統率するラファーガ〈風〉と呼ばれる男は、自分に女がありながらも、シェイラに野性的な情熱を抱く。けんめいに拒みつつも、シェイラはいつしかこの荒々しく力強い男に身も心を委ねたいと願うようになっていた。しかし、それもつかのま、捜索の手は刻々と迫っており、シェイラにもついに決断の時が来た。
南北戦争はブラッドフォード・メイトランドの心にも深い傷跡を残した。南部の大地主の息子でありながら、北部に生まれ育った彼は、自らの信念を貫いて北軍に加わった。しかし、婚約者のクリスタルはこれななじり、そのあげくに彼の弟のもとへと奔ったのだ。アンジェラが5年ぶりにブラッドフォードに再会した時、彼の心はすさみ切っていた。彼を追って飛び込んだ売春宿で、彼女は自分の素姓も明かさないままその身を委ねた。それが、かつて“エンジェル”と呼んだ少女であるなどとは、ブラッドフォードは知る由もなかった。
夫に顧みられることのない、冷えきった結婚生活は、メアリー・ラティマーをすっかり変えてしまった。美しく着飾ることも、楽しく微笑むことも忘れた、魅力のない退屈な女に…。たった一人の娘マーガレットは、幼い頃から寄宿舎に入れられたままだった。やがて、夫の突然の死。なんと彼には愛人がいたのだ。あとに残されたのは、本当の愛を知らずに育った娘と、時代遅れの服をまとった抜け殻のような未亡人。しかし、それは思いもかけない新しい人生の始まりでもあった…。
両親を亡くしたレディ・アイナは、伯父のワイモンド卿のもとに引き取られた。とびきりの美人で、社交界の花形である義理の伯母は、独身のチェイル候爵に熱をあげ、若いアイナに嫉妬する。ある日、候爵が伯母のために開くパーティに、アイナも同行することになった。
ファーンハースト卿の娘、セルマは、大伯母の莫大な遺産を相続した。そのことを聞きつけた継母は、セルマを自分の愛人と結婚させその財産をものにしようと企む。陰謀を知ったセルマは、財産の処分を禁じた指図書を弁護士に送り、馬丁ひとりを供に家を飛び出した。
私にぴったりの男性が、この地球のどこかにいるはずだわ-。広告会社のアシスタントをしているジェシーはそんな男性との出会いを求めていた。今日も家に帰ると、登録したデートサービス会社から紹介状が来ている。手紙を手に家に入ろうとしたとき、隣に引越してきたらしいとびきりハンサムな男性を見かけ、ジェシーの胸はときめいた。だが、彼の目はジェシーの持っている手紙に注がれていた…。
亡くなった母の代わりをするようになってから10年。牧師館の長女ダフネは、牧師である父、5人の弟妹たちと貧しいが幸せに満ちた生活を送っていた。そんなある日のこと、ダフネはひとまわり以上も年上の鉱山家、ジョン・カーに求婚される。妻になって身の回りの世話をしてくれるならば、その代わりに貧しい父と弟妹たちを援助する、というのだ。これはゲームだわ。ダフネは、そう考えて結婚を決意するのだが…。恋の意味さえ知らないダフネの、人生のゲームが始まった。
チャーンクリフ伯爵は、ルイ王朝の家具を求めフランスに渡った。伯爵が妻にしたいと望む娘エレインがフランス家具をほしがったからだ。だが、荒れ果てたマリニー城で見つけたのは昔の栄華をしのばせる華麗な家具だけではなかった。謎めいた老女に導かれて秘密の通路を抜けるとそこには、追手の目を逃れ、隠れ棲む貴族の令嬢リネッタがいた。
ピザ・レストランを経営するニコラは、婚約者を亡くして以来素直に男性に心を開くことができない。そんなニコラに、祖母は言う。誰でもいいからある人を理想のタイプと思い込むこと。そうすれば、その人はあなたに夢中になり、あなたも彼を好きになるだろう、と。本当にそんなことがあるのだろうか。ニコラは、早速、店に来た客に試してみる…。
燃えるような赤毛にグリーンの瞳の美しいイヴァンジェリン。彼女はほとんど世間から隔絶された状態で養母に育てられた。やがて養母が死ぬと、予想とは裏腹に甥の外交官クリストファがすべての財産を相続する。イヴァンジェリンに魅せられた彼は結婚を申し込んだ。だが、彼女はそのプロポーズを退け、わずか1000ポンドとダイヤの指輪ひとつだけを持って「女冒険家」としてロンドンに向かった-。いつか愛する人に出会うために。
時は1803年、ヨーロッパ支配を狙うナポレオンの上陸を恐れるイギリス-。アルトン侯爵は、政府中枢部に潜むスパイを発見せよとの命を受ける。公私ともに暗澹たる悩みを抱えながら森をひた歩いているとき、かれは妖精のような不思議な雰囲気を漂わせた、美しい娘に出会う。しかし娘は素性も明かさず、その短い出会いさえも夢であったかのように、忽然と姿を消してしまう。その裏には思いもよらない秘密が隠されていた。
1750年。ベニスへ向かう航海の途中、サンタ・ルチア号は嵐にのまれて岩場に激突、海の藻屑と消えた。たった2人の生存者-ハーヴェイ卿と、彼に助け出された美しい娘パオリナを残して…。父を亡くし、お金も行く当てもないパオリナに、自称冒険家のハーヴェイ卿は大胆な企てを告げる。パオリナを自分の妹に仕立て上げ、ベニスの社交界で玉の輿に乗せようというのだ。偽りの兄と妹の華やかで危険な人生の賭けが始まる。
両親を亡くして、1人で暮らすバレッサはその日食べるものにも不自由するほど困窮していた。ある日、落馬してかつぎこまれたサラ・バートン侯爵夫人から晩餐会のゲームに参加してほしいと頼まれる。それはウインドンベリー侯爵にふられたサラが仕組んだ復讐劇だった。
人気俳優ダミアンのマネジャーのリンは仕事を離れてもダミアンに夢中だった。しかしダミアンは、リンのことを事務所の備品ほどにしか考えていない。そこで、リンは子供の頃から兄のように慕っているアダムに相談すると、アダムはある名案を思いついた。それは、アダムがリンの恋人役になり、ダミアンにやきもちをやかせるというものだった。
敵に四方を包囲され、援軍を待ちわびるロスコー准将の部隊は、もはや命運もつきかけ、餓死寸前の状態に追い込まれていた。娘ミュアリアルの身を案じたロスコー准将は、士官たちに問う。「もしもの時には、娘を射殺してくれるだけの勇気のある者はいるだろうか」と。「お嬢様のためなら地獄も通り抜けましょう」そう答えた男の瞳には、不敵ともいえる豪胆な光が宿っていた。ニック・ラトクリフ-孤高の鷲を思わせるこの男の手に、ミュアリアルの命は委ねられた…。
イサ・マクナヴァーはロンドンで歌手として活躍していたが静養のため、二年ぶりにスコットランドへ帰郷した。ある日、幼い頃よく行った洞窟に入りこんだイサはそこで、三人組の男たちの密談を耳にする。どうやら、秘宝探しの相談らしい。さらに驚いたことに、かれらは、マクナヴァー一族の族長であるストラスナヴァー公爵の暗殺を企だてていた。
リリーは、児童劇団の資金調達係。助成金を受けるため、白雪姫の扮装でチェイス財団を訪ねる。応対に出た男の貴族を思わせる魅力的な顔立ちに惹きつけられてリリーは熱心に話をした。その時、ドアの向こうから別の男が現れた。リリーは相手を間違えていたことに気付いた…。