出版社 : サンリオ
エイスリンは、いつしかウルフガーの孤独の影にひかれていった。父の領土を略奪し、自分を奴隷としてひざまずかせる男からの寵愛。しかし、それは単なる囚われの愛人に対するものではなくなっていた。ふたりの魂は複雑に絡み合い、運命の糸は紡がれていく。身篭ったエイスリンは、その新しい命があの狡猾な男ラグナーの子供ではなく、愛する人のウルフガーの血を引くものであってほしいと望み苦しむ。略奪と愛に、名誉を賭けて激しく戦う騎士たち、愛に揺れ動く美しい女たち-。11世紀のイギリスを舞台に繰り広げられる、壮大なる長編歴史ロマン。
「ここで何をしているの?」ヴァーダの鋭い問いかけに、ホテルの部屋に忍びこんだその男は、アメリカの石油王のひとり娘を取材しにきたジャーナリストだと名のった。ヴァーダをその本人だとは気がつかないらしい。そこで、ヴァーダは令嬢の付添いだと偽って、パリを案内してもらうことにした。イギリスの公爵との愛のない結婚を勧められていたヴァーダには、つかのまの自由な日々だった。
時は1066年。イギリスはノルマン軍の手中に落ちようとしていた。ダーケンウォルドの領主の一人娘エイスリンも、血なまぐさい戦乱に巻き込まれ、父やその部下たちは目の前で惨殺される。エイスリンも、命はたすかったものの、母とともに奴隷という屈辱の身の上にあった。誇り高く、ブロンドの髪とすみれ色の瞳を持つ、美しいエイスリンを、ノルマン軍の略奪の騎士ラグナーは無理矢理に自分のものにしようとする。やがて、新しい領主ウルフガーの入城を知らされる。エイスリンの心は傷つき、激しい憎しみと愛のうねりの中にのみこまれていくのだった。
お供も連れず、身分を隠してヨークまで旅ができるか-。友人のもちかけた賭けに応じて、ブロッケンハースト公爵はヨークに向かった。だが、思わぬ旅の道連れができた。結婚を無理強いする継母から逃げだそうとしている娘、バロラに手を貸すことに決めたのだ。追手の目を逃れて、公爵とバロラの冒険の旅が始まった。
司祭館で秘書として働くフランシスは、過酷な労働に疲れ果てついに病に倒れてしまった。司祭の甥モンターギュのとりなしも虚しく司祭館を追い出された彼女は田舎の牧場に静養に出かけたが、後を追ってきたモンターギュとの恋の行方に心は乱れていた。そんな彼女の前に現れた一人の男。近くのテザーストーンズ農場を取りしきるその男は、謎めいた眼差しで彼女を捕らえた。“テザーストーンズ”-鎖の石。忌まわしい言い伝えが残る呪われた土地で、フランシスは恋の迷路をさまよい始める。
18世紀末の北部イングランド。エリエンヌは、父が連れてくる、財産以外には何の魅力もない求婚者たちにうんざりしていた。エリエンヌの心をとらえているのは、ただひとり-父を侮辱し、弟に傷を負わせた家族の敵、クリストファーだけであった。日ごとクリストファーに惹かれていき、結婚話に耳を貸さない娘に業を煮やした父は、ついに、エリエンヌを結婚を条件とした競売にかける。競売の日、エリエンヌをせり落としたのは、呪われた館の領主、仮面と黒ずくめの服で傷だらけの全身を隠したサクストン卿だった。
サクストン卿夫人となったエリエンヌは、ついに不気味な夫に身をまかせ、狂おしいほどの歓びにひたる。そして、夫の背中にある傷跡をたどりながら、わたしはこの人の妻なのだ、と自分にいいきかせた。しかし、ある夜、闇に浮かぶ夫の瞳にクリストファーの影を見て、歓びのさなかに、かれの名を口にしてしまう。静かにベッドを去る夫に、深く自分を責めるエリエンヌ。あくる日、夫の不在中に、夜盗との格闘で深手を負ったクリストファーが館にかつぎこまれた。ベッドに横たわるかれの背中にエリエンヌが見たものは、夫と同じ大きな傷跡だった…。
20世紀初頭、ロシア帝国華やかなりし頃。若くして未亡人となったタマラは、名付け親の公爵婦人の招きに応じ、真冬のペテルスブルグへと旅立った。運命の糸に手操り寄せられたかのように-。一瞬の出会いで彼女の心に消えることのない炎を燃え立たせた男、グリツコとの再会が待っていたのだ。専横で気性の激しいロシアの大富豪のグリツコに反発を覚えながら、いつしかタマラは抑えがたく激しい愛の思いに捕らわれていた。華麗なロシア帝国を舞台に繰り広げられるヒストリカル・ロマンス。
キングズウッド公爵の目下の悩みは、いとこで後継人のリチャードが、社交界で浮名を流す女性に惑わされて婚約し、そのうえ、殺人事件までひきおこしたこと。そんなとき、公爵の前に現れたのは、旅の途中で病に倒れた牧師の娘、ベネディクタだった…。
ブラニガン百貨店の人事担当者クレアは、面接相手を前にして途方に暮れていた。彼女は犯罪者の更生プログラムを推進していたが、社長のレオの紹介でつい最近まで詐欺の罪で刑務所にいたというメイスに会ったのだ。ところが、男にはどこかセクシーで、妖しい、危険な勾いがした。