出版社 : サンリオ
お供も連れず、身分を隠してヨークまで旅ができるか-。友人のもちかけた賭けに応じて、ブロッケンハースト公爵はヨークに向かった。だが、思わぬ旅の道連れができた。結婚を無理強いする継母から逃げだそうとしている娘、バロラに手を貸すことに決めたのだ。追手の目を逃れて、公爵とバロラの冒険の旅が始まった。
司祭館で秘書として働くフランシスは、過酷な労働に疲れ果てついに病に倒れてしまった。司祭の甥モンターギュのとりなしも虚しく司祭館を追い出された彼女は田舎の牧場に静養に出かけたが、後を追ってきたモンターギュとの恋の行方に心は乱れていた。そんな彼女の前に現れた一人の男。近くのテザーストーンズ農場を取りしきるその男は、謎めいた眼差しで彼女を捕らえた。“テザーストーンズ”-鎖の石。忌まわしい言い伝えが残る呪われた土地で、フランシスは恋の迷路をさまよい始める。
18世紀末の北部イングランド。エリエンヌは、父が連れてくる、財産以外には何の魅力もない求婚者たちにうんざりしていた。エリエンヌの心をとらえているのは、ただひとり-父を侮辱し、弟に傷を負わせた家族の敵、クリストファーだけであった。日ごとクリストファーに惹かれていき、結婚話に耳を貸さない娘に業を煮やした父は、ついに、エリエンヌを結婚を条件とした競売にかける。競売の日、エリエンヌをせり落としたのは、呪われた館の領主、仮面と黒ずくめの服で傷だらけの全身を隠したサクストン卿だった。
サクストン卿夫人となったエリエンヌは、ついに不気味な夫に身をまかせ、狂おしいほどの歓びにひたる。そして、夫の背中にある傷跡をたどりながら、わたしはこの人の妻なのだ、と自分にいいきかせた。しかし、ある夜、闇に浮かぶ夫の瞳にクリストファーの影を見て、歓びのさなかに、かれの名を口にしてしまう。静かにベッドを去る夫に、深く自分を責めるエリエンヌ。あくる日、夫の不在中に、夜盗との格闘で深手を負ったクリストファーが館にかつぎこまれた。ベッドに横たわるかれの背中にエリエンヌが見たものは、夫と同じ大きな傷跡だった…。
20世紀初頭、ロシア帝国華やかなりし頃。若くして未亡人となったタマラは、名付け親の公爵婦人の招きに応じ、真冬のペテルスブルグへと旅立った。運命の糸に手操り寄せられたかのように-。一瞬の出会いで彼女の心に消えることのない炎を燃え立たせた男、グリツコとの再会が待っていたのだ。専横で気性の激しいロシアの大富豪のグリツコに反発を覚えながら、いつしかタマラは抑えがたく激しい愛の思いに捕らわれていた。華麗なロシア帝国を舞台に繰り広げられるヒストリカル・ロマンス。
キングズウッド公爵の目下の悩みは、いとこで後継人のリチャードが、社交界で浮名を流す女性に惑わされて婚約し、そのうえ、殺人事件までひきおこしたこと。そんなとき、公爵の前に現れたのは、旅の途中で病に倒れた牧師の娘、ベネディクタだった…。
ブラニガン百貨店の人事担当者クレアは、面接相手を前にして途方に暮れていた。彼女は犯罪者の更生プログラムを推進していたが、社長のレオの紹介でつい最近まで詐欺の罪で刑務所にいたというメイスに会ったのだ。ところが、男にはどこかセクシーで、妖しい、危険な勾いがした。
双子の兄ナイジェルとともに誕生日を迎え、フレイムは無邪気にはしゃいでいた。しかし、兄妹の冷酷な母親は、この純真無垢で世間知らずの娘に、三倍以上も年の離れた俗悪な男との結婚を企てていたのだ。追いつめられたフレイムは、ナイジェルの助けを得て、インドへの逃亡を決意する。兄の名を借り、少年に姿を変えて、フレイムはインドへと向かう船に乗り込んだ。ところが、一人部屋だとばかり思い込んでいた船室には、予期せぬ相客が…。フレイムの戸惑いを乗せて船は滑り出していく。
ストウ侯爵はバーナム卿の夫人と、秘密の情事を重ねていた。ところが、妻の浮気に気づいたバーナム卿は、情事を逆手に、妻に離婚を迫り、真相を暴露すると脅迫し始めた。スキャンダルの渦中に巻きこまれるのを恐れた侯爵は、バーナム卿の疑念を晴らして、窮地から逃れるため、侯爵自身、実際に誰かと婚約することを思いたった。
1816年、ナポレオン戦争の余波を受け、イギリスでは相次いで銀行が閉鎖。ランボーン卿一家は、全財産を失いまさに崖っぷちに立たされていた。そこへ持ち込まれたのが、卿の娘カミラをメルデンステイン王国の皇太子妃に、という願ってもない縁談話。カミラは父母を救いたい一心で、不安を胸に、見も知らぬ皇太子に嫁ぐ決心をする。しかし、王国までの護衛官として遣わされた男を見たカミラは、ひそかに驚きの声を漏らしていた…。
突然の両親の死によって、メリンダは不幸のどん底に突き落とされた。叔父の家での惨い仕打ちに耐えかねた彼女は、行く当てもなくロンドンへ向かう。親切な貴婦人が一夜の宿を申し出てくれた上、莫大なお金が手に入るチャンスがある、という。そこが娼婦の家であるとは清純無垢なメリンダが知る由もなく、彼女はチャード侯爵との偽りの結婚式を挙げる羽目になる…。メリンダは今、甘く危険な人生の罠に翻弄されようとしていた。
気鋭の女流彫刻家、スーキ・ラベットは彫刻展を開いて全米を回っている。しかし、ツアーの最終地コロラド州ベイルではハプニングの連続だった。まず、空港でスーツケースを間違えられ次には、作品の一部を壊される始末。もうこれ以上、何も起きないようにと願いながらホテルに向かった。ところが、悪いことはこれだけではなかった。ホテルのエレベータの中では、1人の魅力的な男性と一緒になるのだが…。
遥かなる砂漠への憧れ…募る思いをかなえるべく、英国貴族の娘ダイアナ・メイヨは、アフリカ大陸へと旅立った。だが、その地に足を踏み入れたとたん、キャラバン隊はアラブ人の一団に取り囲まれ、彼女の前に1人の男が立ちはだかる。アラブ人の族長、アーメッド・ベン・ハッサン-気性の激しい砂漠の男が、ダイアナの運命をその手に握ろうとしていた。1923年、ルドルフ・ヴァレンチノ主演で映画化され、全世界の女性を虜にした、愛と情熱の物語。